2015年3月29日 (日) 掲載

◎棋士対ソフト、五稜郭で熱戦…道内初の将棋電王戦

 プロ棋士とコンピューターソフトが対決する「将棋電王戦ファイナル」の第3局が28日、特別史跡・五稜郭跡(函館市五稜郭町)で行われた。道内では初開催で、稲葉陽七段(26)とコンピューターソフト「やねうら王」が対局。白熱した戦いの末にソフトが勝利を収め、棋士初の勝ち越しはお預けとなった。

 動画サイト「ニコニコ動画」を運営するドワンゴ(東京)と日本将棋連盟が主催し、2012年に開始。13年からはプロ棋士5人と5種類のコンピューターソフトの団体戦形式で行われている。

 棋士の2連勝で迎えた第3局は、五稜郭内の兵糧庫に会場を設け、午前10時に稲葉七段の先手で対局開始(持ち時間5時間)。緊張した表情で駒を動かす稲葉七段に対し、ソフトの指し手を盤上に再現するロボットアームが、静かな動作音を響かせた。

 対局はニコニコ動画で生中継されたほか、大盤解説会が開かれた金森ホール(末広町)には100人以上の将棋ファンが詰めかけ、人間対コンピューターの真剣勝負にじっくりと見入った。市内美原の長澤一世君(6)は母親と訪れ、稲葉七段を応援。「コンピューターの方が強そうだけど、お互いに激しい攻め合いで面白かった」と話した。

 稲葉七段が勝てば電王戦史上初の棋士勝ち越しとあって期待が高まる中、対局はソフト優勢で進み、稲葉七段が粘る展開が続いた。しかし、午後8時過ぎに稲葉七段が投了し、116手でやねうら王が勝利。対戦成績は棋士の2勝1敗となった。

 今回の対戦に先立ち、棋士には事前にソフトが貸し出されていた。対局終了後、やねうら王の開発者、磯崎元洋さんは「事前貸し出しの対策をしていなかった。勝ったという実感は全くない」と話した。稲葉七段は「楽に勝ちたいという心のすきができてしまった。心の弱さが出た。完全に力負け」と振り返った。(千葉卓陽)



◎大沼でボート散策楽しもう、営業スタート

 【七飯】大沼国定公園でスワンボートとモーターボートの今シーズンの営業が始まった。28日は春の到来を感じさせる日差しの下、大勢の観光客が湖上散策を楽しんでいる。

 ボートを提供する大沼合同遊船(小泉真社長)よると、例年より10日ほど早い営業開始だという。26日には湖上の一部に残っていた氷が、27日朝にはほぼなくなったため、急きょ同日に貸し出しを始めた。

 ボートは同公園の人気アクティビティの一つ。28日は朝から温かな日差しが降り注ぐ好天に恵まれ、午前中から親子連れを中心に大勢の観光客がボートを利用。秀峰・駒ケ岳が白い顔を覗かせる中、ボートが大沼湖上に波紋をつくりながら優華に進む姿が見られた。

 函館市から家族4人で訪れた高中優月さん(9)は「モーターボートのスピードがすごく速くて、景色もきれいで楽しかった。また乗りたい」と話していた。

 また、来月10日には大沼観光の目玉の一つでもある遊覧船の下架作業を行う予定で、同社は翌11日からの営業を見込んでいる。小泉社長は「営業開始が早まったため、ふだん見ることのできない残雪の大沼湖畔を楽しむことができます。ぜひご利用ください」と呼び掛けている。運行状況や料金などに関する問い合わせは同社(℡0138・67・2229)へ。(野口賢清)



◎転覆作業船 1人救助

 函館港沖で熊本県の作業船「第18明祐」(19㌧、4人乗り組み)が転覆した事故で28日早朝、第三管区海上保安本部の特殊救難隊が甲板員永田勝行さん(64)=長崎県長崎市=を船内から救助した。函館市釜谷町の海岸では、甲板員柳町武士さん(39)=青森県八戸市=が発見されたが、その場で死亡が確認された。依然1人の行方が分かっていない。

 函館海上保安部によると、午前5時40分ごろに船内の空気だまりがある居室にいた永田さんを発見。永田さんを確保し、ヘリコプターでの吊り上げ救助を行った。永田さんは救助途中で意識を失ったが、病院に搬送後、意識を取り戻した。船内ではほかの乗組員の姿は確認できなかったという。

 午前5時20分ごろには、現場から東に約17・5㌔離れた釜谷町の海岸で、柳町さんが漂流しているのを函館市消防本部の職員が見つけたが、間もなく死亡が確認された。

 また、27日に海上で発見され死亡していた男性は、船長水野眞樹さん(43)=愛媛県新居浜市=と確認された。3人とも救命胴衣を着用していなかったことが分かっている。

 行方不明の1人について、特殊救難隊と巡視船ほろべつ潜水士による潜水捜索は午後0時22分で終了した。航空機と巡視船での捜索は継続している。  作業船は現場付近の海底に沈み、座礁している。作業船が曳航していた台船は流出防止のために海岸でロープで固定した。

 作業船は27日に万代埠頭付近から出港し、船の部品(約141㌧)を積んだ台船を曳航しながら宮城県石巻港を経由して、神奈川県横浜港を目指していた。

 同海保は29日も巡視船や航空機などでの捜索を継続する予定。


◎新幹線沿線グルメ一堂に、函館駅前で開業前イベント

 北海道新幹線開業1年前カウントダウンイベントが28日、JR函館駅前広場で始まった。東北、北関東の沿線グルメが集結した「お腹いっぱい新幹線食堂」には、牛タンやギョーザ、ラーメンなど9店が出店。ステージイベント、駅舎内の体験コーナーなど、終日、多くの市民や観光客でにぎわった。  市や函館商工会議所などでつくる実行委の主催。開会式で工藤寿樹市長は「来年は函館が北陸新幹線開業でにぎわった金沢のようになる。今年、来年と盛り上げ、函館の元気を全国に発信しよう」とあいさつ。同駅の鳴海正駅長が「万全を期して準備を進めたい」とイベント開会を告げる笛を大きく鳴らした。

 ステージでは、新幹線の停車を求める要望活動を続ける栃木県宇都宮市のPRイベントが行われ、同市の佐藤栄一市長、熊本和夫市議会議長が参加。佐藤市長は「北関東の客をどんどん送り込み、宇都宮を函館の皆さんにも楽しんでもらいたい」とPRした。  駅1階改札口前にはブロックで制作した新幹線ジオラマが登場。新幹線H5系2編成が市民の名前入りブロックを使った高架橋を走り、周囲には、函館山やハリストス正教会、金森倉庫群、北斗市のトラピスト修道院、木古内町の咸臨丸など、見どころを再現。自分の名前を探したり、記念撮影をしたりする人でにぎわった。

 また、新幹線をテーマに取材を続ける北斗上磯中学校新聞部の部員3人が来場者へのインタビューに取り組み、1年生の坂口颯太君(13)は「市民として開業に向けて取り組めることなどを聞いている。新幹線が来れば観光客が来て、北斗も函館も栄えると思う」と話した。夫婦で来場した市内深堀町の鈴木繁幸さん(70)は「東北に旅行するときは東京から北上する方が行きやすい場合もあるが、新幹線が来れば便利になるので楽しみ」と話していた。  イベントは29日も午前10時から午後4時まで行われる。(今井正一)