2015年3月7日 (土) 掲載

◎マコンブの収穫始まる

 マコンブの養殖が盛んな函館市で6日、「春採り昆布」と呼ばれる早春に水揚げするマコンブの収穫が始まった。通常なら成長させて乾燥品とするものを早く収穫し、ボイル塩蔵。身が柔らかくシャキシャキした食感が特徴で、サラダ用などに製品化が進み、消費者への認知も広まってきた。

 戸井漁協小安支所の協力を得て、函館タナベ食品(桔梗5)が5日間かけて計55㌧を水揚げ予定。漁業者は28人。森町砂原の加工場で塩蔵加工し、コープさっぽろなどに出荷する。居酒屋チェーン「つぼ八」が4月から「若昆布ポン酢」としてメニュー化するなど、新しい市場が広がってきている。

 市内では、もう1社が養殖マコンブを春先に収穫してボイル塩蔵品を製造。初日の水揚げを見守った道立工業技術センター(桔梗町)の木下康宣研究主査は「韓国産ボイル塩蔵品も出回っており、ブランド強化による差別化の方法を研究していきたい」と話した。(山崎大和)



◎地域の情報伝え 「ボラット」創刊10周年

 地域のボランティア活動を伝える、北海道国際交流センター(HIF)発行のフリーペーパー「ボラット」が創刊10周年を迎えた。これまで発行した44冊を並べた「ボラット10周年記念展」を、金森赤レンガ倉庫のBAYはこだて(豊川町11)で20日まで開催している。

 「身近にあるボランティアを気軽にフラッとやってみよう」との意味が込められた〝ボラット〟は2004年3月、ボランティア情報の発信や団体と市民のネットワークづくりなどを目的に創刊した。当初はボランティア活動をする団体の紹介などを中心にしていたが、「イベントと学び」の要素も加えようと、2007年にサイズをA4版8㌻からA5版32㌻に変更、内容も一新した。食やアート、環境問題も取り上げ、情報誌としての幅を広げた。

 現在、約20人の市民編集スタッフらが工夫を重ねて手作りしている。年4回(3、6、9、12月の20日)各5000部を発行し、市内の図書館や郵便局など公共施設を中心に配布している。

 BAYはこだてギャラリーには、歴代の44冊を展示。4代目編集長の笹井完一さんは「『ボランティア』と一口でいっても思いは人それぞれ。ぜひボラットを通して、団体や活動について多くの人に知ってもらえればうれしい」と話す。

 また、15日午前11時半からは、金森ホール(末広町14)でシンポジウムや交流会などのイベントも開く。(斎藤彩伽)



◎「風力発電」を施工業者が提訴…江差の三セク

 【江差】江差町の第三セクターで同町が51%の株式を保有する風力発電「江差ウインドパワー」(森藤次雄社長)と連帯保証人の斐太(ひだ)工務店(本社・名古屋市)を相手取り、施設の施工業者でエネルギー設備業の国内大手・JFEエンジニアリング(本社・東京)が、2013年5月に貸金請求の民事訴訟を東京地裁に起こしていたことが6日、分かった。請求金額は数億円規模とみられる。町は提訴直後に状況を把握していたが、これまで公表していなかった。

 6日の議員協議会で照井誉之介町長が報告した。町内元山地区の風力発電所建設時、JFEが江差ウインドパワーに資金提供した契約保証金及び性能保証金の返済を求める訴訟と説明。これに対し、江差ウインドパワー側は「返済する義務のない債務で、風力発電施設の性能の補償債務との相殺を申し入れている」という。

 照井町長は「江差町は訴訟の当事者ではないが、町が出資する第三セクターであり、本件の詳細については然るべき時期に説明したい。本日は訴訟になっていることのみを報告させていただく」と述べ、係争中を理由に概要は説明できないとした。議員からは「なぜいまこの報告があるのか」と疑問の声が上がった。

 江差ウインドパワーは2001年に設立、出力750㌔㍗の風車28基(総出力2万1000㌔㍗)を町内の元山地区に設置。減価償却対策として、事業開始直後に高く設定した電力単価を、年を経るごとに段階的に引き下げるステップダウン式で北電側と契約した。

 ところが、稼働当初に風車のトラブルが相次いだため、収支計画が狂い、売電単価が下がった11年度に経営状態が悪化。町への固定資産税が滞るなど、一時経営が行き詰まっていた。その後、東日本大震災を受けて12年に施行された再生エネルギー全量買い取り制度で、売電単価が安定し、危機的状況を脱していた。株式は現在、町が51%、同工務店が約4割を保有している。昨年度の売電実績は4億5900万円。

 JFEと江差ウインドパワーは、函館新聞の取材に「コメントできない」としている。(田中陽介)


◎緊急時 外国人に通訳紹介…函館市がヘルプデスク設置

 函館市は新年度、市内在住の外国人や海外からの観光客が医療措置を必要とする場合に備えて「緊急対応ヘルプデスク」を設置する方針だ。アジア圏からの観光客増加を見据えた事業で、外国人が体の不調を訴えた場合などに電話してもらい、24時間体制で通訳を紹介する。4月中にも開始する考えだ。

 事業は道国際交流センター(HIF)に委託。同センターに置かれている外国人生活相談窓口を拡充して行い、新年度予算案で113万円を計上した。

 数人のオペレーターが輪番で携帯電話を持ち、24時間365日対応。オペレーターは宿泊施設や交通機関などから外国人の国籍や言語を聞き、市が作成したリストの中から通訳者を選んで連絡し、現場に向かってもらう。

 現段階で英語や中国語、韓国語のほか、ロシア、タイ、インドネシア、フランスなど11カ国語での対応を見込んでいる。通訳料は患者が通訳者に直接支払う仕組みで、1時間6000円、夜間同7500円で統一する。

 函館に宿泊する外国人韓国客は年々増加し、2013年は約30万人。マレーシアとのチャーター便就航や3月末からの天津(中国)との定期便就航などの要素を踏まえ、一定のニーズがあると判断。宿泊施設や交通機関、医療機関などから年間数十件の利用を想定している。

 市企画部によると、13年に市消防本部が救急搬送した外国人数は30人。台湾人が9人で最も多く、中国人7人、シンガポール人とオーストラリア人が各3人だった。14年も総数56人と増えている。同部は「交通事故や火事などの場合は周りの人が連絡してくれるが、体の痛みは伝わらない場合が多い。外国人観光客が安全安心に旅行できるように環境を整えたい」(国際・地域交流課)としている。(千葉卓陽)