2015年4月28日 (火) 掲載

◎かもめ島の瓶子岩近く 海上鳥居完成

 【江差】かもめ島の厳島神社の創建400周年を記念して地元漁師らが瓶子(へいし)岩近くに設置した鳥居の完成式典が27日、現地で行われた。350人が参加し、神事ともちまきなどで祝った。

 かもめ島の厳島神社は、北前船の廻船問屋が日本海の航海安全や漁業振興を願って建立したとされる。今年が建立400年にあたり、関係者が今年2月に実行委(竹内秋雄会長)を立ち上げた。朱色と黒の鳥居は高さ約5㍍、横幅が最大約6㍍で、劣化が少ないプラスチック製。関係者によると、海上の鳥居は道内初だという。

 鳥居建立にかかる総事業費は約500万円で、このうち200万円を奉賛会の積立金で、残り300万円は地元漁師を中心に寄付金で賄った。

 式典で竹内会長は「先人から継承されてきた歴史あるこの地に建立できたことは慶賀に堪えない。船上の安全と豊漁を祈願しながら町民のみなさまと見守っていきたい」と式辞。江差追分の披露やもちまきもあり、和やかな雰囲気に包まれた。

 ドライブで訪れた函館市の会社員、村越冬野さん(23)と菅野公望香(くみか)さん(23)は「神聖な雰囲気を感じる。かもめ島の景色にぴったりだと思う」と話していた。(田中陽介)



◎市民ら500人 雄姿を見守る 函館どつく本年度最初の進水式

 函館どつく(函館市弁天町)で27日、本年度最初の新造船「ベルゲ・ダイセツ」(2万1550㌧)の進水式が行われた。市内の幼稚園児ら大勢の見学客が訪れ、豪快に海に滑り出す船の雄姿を見守った。

 新造船はマーシャル諸島共和国の海運会社が発注した全長180㍍、幅30㍍の木材兼ばら積貨物船。燃費性能を向上させたエコシップで、同社の親会社にあたる名村造船所(大阪)と共同で、3月2日から同船の建造を進めてきた。完成・引き渡しは6月下旬を予定している。

 この日は市民ら約500人が見学に訪れた。帯広から家族と函館を訪れていた山本敏博さん(43)は、「函館にいる息子に案内されて初めて来た。ものすごい迫力で感動しました」と興奮した様子で話していた。(山田大輔)



◎函館発展へ期待と課題 統一地方選終了 有権者の声

 函館市長選、函館市議選が26日に終了し、統一地方選後半戦が幕を閉じた。大間原発(青森県大間町)の建設差し止め訴訟の是非が争点となった市長選は、司法の場に訴えた現職が新人を破り再選。大間訴訟が市民の支持を受けた格好となった。市議選では新人4人が念願の初当選を果たし、議会に新風を吹き込むものと期待される。貴重な1票を託した有権者に市政への期待と注文を聞いた。

 市長選は約6万6000票もの大差で決着。上野町の会社役員高橋泰助さん(63)は「順当だと思う。これまで国や事業者に無期限凍結を求めてきたのに対応してもらえなかった経緯を理解していないのでは。国とのコミュニケーションが取れないという話も聞いておらず、主張としては弱かった」と振り返る。2期目に向けて「原発の代替エネルギーとして木質バイオマス導入に補助するなど、自然エネルギーの推進に力を入れてほしい」と提起する。

 船見町の自営業藤田正男さん(49)は「大間訴訟は英断。観光都市として大間で事故が起きた場合、人が入って来られなくなるなどの大きな影響が及ぶので、このまま訴訟を継続してもらいたい」と話す。

 大間問題に加え、北海道新幹線開業を生かしたまちづくり、中心市街地の活性化、人口減少への対応など市政の課題は山積。本通の無職佐々木秀子さん(76)は「引き続き大間原発の稼働中止に全力を注ぐとともに、子育て支援など若い世代が過ごしやすいまちづくりの推進を期待。北海道新幹線は生かすも殺すも市政次第。札幌延伸後も通過点にならないよう、常に先を見据えて取り組んでほしい」、富岡町の無職川田宏さん(72)は「長年函館に住んでいるが衰退は明らか。本気で函館を変えようと行動してくれそうな人に投票した。特に中心街の活性化は急務。市長が先頭に立ち、市議一人一人がそれぞれの得意分野で力を発揮して」、山の手の無職関口洋平さん(65)は「人口が減り、函館は元気がなくなっている。北海道新幹線開業を契機に、市内全域に活気が取り戻るよう市長には頑張ってもらいたい」と訴える。

 一方、的場町の病院職員斎藤典代さん(50)は「(市長選で)2万を超す批判票が入った結果は『それだけ思いの違う市民の声がある』ということ。真摯(しんし)に受け止め、函館の将来を考えてほしい」と指摘。「企業誘致も進め、若者が活躍できる環境をどんどんつくってもらいたい。新幹線開業も間近なので、4年間で魅力ある観光のまちづくりに期待したい」。

 市長には医療・福祉の充実、経済活性化、子育て支援などに対する手腕も求められる。田家町の主婦須藤淑さん(77)は「後期高齢者として福祉政策に期待。(デイサービスなど)施設を利用する人やそこで働く人たちに、少しでも恩恵がある社会になってほしい」と要望。山の手の嘱託職員青野信雄さん(73)は「人口減少は深刻な問題で、若者の流出を食い止めるためにも大手企業を誘致するなど、経済政策を最優先に進めてもらいたい」と期待を込める。

 大川町の主婦新谷サツ子さん(78)は「2期目となる市長には、これまで以上に大間原発の問題や福祉、子育て支援策に力を入れてもらいたい」、深堀町の会社役員上貞幸丕さん(69)は「選挙で掲げた公約を実現できるか見極めるとともに、より良いまちづくりのためには、市民と政治家が協働で課題に取り組んでいく必要がある」と注文する。(統一地方選取材班)



◎「まちづくり」2期目意欲 工藤市長 一夜明け会見

 函館市の工藤寿樹市長は大差の再選から一夜明けた27日、11日ぶりに市役所に登庁した。この日は、当選証書授与式に臨んだほか、市内でのあいさつ回りをこなし、午後の定例会見では2期目のまちづくりへの意欲を語った。

 工藤市長は普段より若干遅めの午前9時10分ごろに市役所に到着。市長室前では中林重雄、片岡格両副市長らが出迎え、秘書課職員から花束を受け取り、「また4年間よろしくお願いします」と笑顔をみせた。

 会見で、有効投票数の約8割を固めた得票について「9万票の大台に乗せることができ、大変ありがたく思っている。多くの市民の応援はこれからの励みになった」とし、特に大間原発問題への対応が評価されたと分析。「訴訟でも市民の総意と言ってきたが、偽りではなかった証。80%の支持率は自分としては十分だ」と述べた。

 一方、投票率の伸び悩みについては「残念だ」とし「原因はいろいろあるだろうが、日本の選挙制度が有権者にとって身近に感じられるものになっていないのではないか」とした。

 このほか、選挙で訴えた公約のうち、子育て支援策や情報系企業の誘致促進策を中心に制度設計が間に合う施策は、6月の定例市議会に提出する補正予算案に計上する方針を示した。(今井正一)