2015年4月29日 (水) 掲載

◎函館出身・元騎手の石山さん、馬術でパラリンピック目指す

 人馬一体で、新たな夢に挑戦—。日本中央競馬(JRA)の元騎手で、落馬事故により高次脳機能障害を負い、2009年に引退した函館市出身の石山繁さん(38)は現在、障害者馬術に取り組み、20年の東京パラリンピック出場を目指している。石山さんは「支えてくれるすべての人たちのために夢を実現させたい」と意気込んでいる。

 石山さんは幼少期から乗馬に憧れ、1995年にJRA競馬学校騎手課程を卒業後の同年3月にデビュー。2000年にはサイコーキララに騎乗し重賞初勝利、続く桜花賞では同馬で4着となるなど活躍した。

 しかし、07年2月の障害レース中に落馬事故に遭い、脳挫傷で意識不明の重体に陥った。幸い意識を取り戻したが、家族の顔を認識できない状態だったという。その後、脳に負った傷の影響で言語や記憶力などに障害が残る「高次脳機能障害」と診断され、09年に惜しまれつつ引退した。

 視力が低下し、記憶をとどめておくことができないなど数々の困難を抱えているが、12年に障害者馬術に出会い、新たな目標ができた。現在は胆振管内白老町の「ホースフレンドリーファーム」に住み込み、牧場の仕事を手伝いながら練習を重ねている。函館にも月に1週間程度帰省し、その際には同じ障害を抱える人たちが集まる共同作業所「コロポックル道南支部」に通い、作業に従事する。

 競馬では馬の闘争心をかき立てるが、馬術では決められたコースを的確に進ませることに徹するため、騎手の役割はまったく違う。それでも昨年10月に島根県であった「第22回全国障害者馬術大会」では総合優勝し、その後台湾で開かれた国際大会でも3位入賞、障害者馬術の騎手として着実に歩みを進めている。

 父の良夫さん、母の孝子さんは「私たちは素人なので分からない部分も多いし、短期の記憶がとどめられないので苦労する部分もある。それでも、馬に触れると息子は本来の姿に戻っているような気がする」とほほ笑む。

 両親は競馬学校に入ることに反対したが、それを説得したのが今は亡き姉の麻由美さん(享年19)だった。病床からも仲の良かった石山さんを気遣っていたという。姉との思い出は石山さんにとって、どんなに記憶が薄れようと、なくならない大切な1ページだ。

 姉、両親、ファームや函館で支えてくれるすべての人たちへの感謝の気持ちが石山さんの原動力。「(パラリンピック出場を)ただの夢にしたくない。騎手という誇りもある。ゆっくりでも5年後につなげたい」と前を向く。(小杉貴洋)



◎観光客へ情報円滑に、携帯用ガイドブック作成

 函館国際観光コンベンション協会はこのほど、市民や観光事業者向けの携帯用ガイドブック「函館観光手帳」を作成した。函館の観光情報をコンパクトにまとめたのが特徴で、旅行客へのスムーズな情報提供を助けるのが狙い。

 来年3月の北海道新幹線開業を見据え、観光客に対するおもてなしの向上を図ろうと企画した。観光手帳はA5サイズで、全36㌻。函館の歴史や観光施設、交通機関の問い合わせ先などを紹介している。増加する外国人客に対応するため、土産店や飲食、宿泊施設で使用が想定される英文や単語も収録。指差しで、外国人との意思疎通に役立ててもらう。

 同協会は「既に発行されている観光情報誌などの補助資料としても役立つので、ぜひ活用して」と呼び掛けている。観光手帳のデータは、同協会のホームページからダウンロードが可能。必要に応じてデータの更新も行う。問い合わせは同協会(TEL0138・27・3535)へ。(山田大輔)



◎富岡の車暴走事件、親子救出の3人に感謝状

 函館市内の市道で親子3人が車ではねられた事件で、救護活動に貢献したとして函館中央署(堀内巖署長)は28日、同市亀田中野町の会社役員橋本英幸さん(49)、同市亀田町の会社役員菊地徹さん(44)、北斗市市渡の保育士原田貴子さん(50)の3人に感謝状を贈呈した。

 同署によると、事件は4月10日昼ごろ、函館市富岡町3の市道で、同市内の無職中村孝容疑者(43)が軽乗用車で歩道に乗り上げ、同市内の父親(23)とその長女(3)、長男(1)をはね、軽傷を負わせた。容疑者は3人をはねた後、暴行を加えようとしていた。

 橋本さんは、親子が殴られているのを目撃し、もみ合いになりながら同容疑者を親子から引きはがし、警察に通報した。現場前の保育園に勤務する原田さんは長女を抱きかかえてかばい、園内に運んだ後、同容疑者に肩を殴られた。菊地さんは父親を肩で担いで園内に入れ、原田さんを殴っていた同容疑者に「やめろ」と言って止め、その場から立ち去らせた。

 橋本さんは「人として当たり前のことをした。それぞれのバランスがあって助けることができた」と振り返る。原田さんは「無我夢中で、怖いかどうか考える余裕はなかった。今後は保育園でも不審者対策に取り組んでいきたい」と述べた。菊地さんは「はじめは事故だと思ったが、殴りかかってきたのでただごとではなかった。みなさんと連携できた」と話した。

 堀内署長は「たまたま通りかかった市民が、とっさに困っている人を助けようとした結果。3人とも素晴らしい」と感謝を述べた。(能代俊貴)



◎17年の北海道DC不採決

 北海道新幹線開業後の観光客の誘客を狙い、道が2017年の道内実施に向けて誘致を進めていた大型観光キャンペーン「ディスティネーションキャンペーン(DC)」が、3月のJR6社共同宣伝会議で不採択となっていたことが28日、分かった。道観光局は「開業後の波及効果拡大が期待されていたので非常に残念」としている。

 DCはJRグループと自治体が協力して行う大規模な誘客、送客キャンペーン。期間は3カ月で、全国の主要な駅などにポスターが貼り出されるほか、旅行商品も販売され、集中的に対象エリアが宣伝される。

 北海道新幹線にかかわるDCでは、青森県が誘致した県内・道南地域対象の「青森県・函館DC」が16年7〜9月に開催されることが14年3月に決まっている。道はこれとは別に、開業翌年の17年に北海道DCの開催を目指す方針を固め、JR北海道とともに誘致を進めていた。

 道内でのDCはこれまで12年、06年など4回行われている。関係者によると、DCは過去の開催回数や前回からの年数、地域バランスなどが考慮されるといい、「北海道は12年に選ばれ、前回からの期間が短かったのも影響したのでは」との指摘もある。

 同局は「DCに変わるキャンペーンができないか、JRとも協議しながら対応したい」としている。