2015年4月8日 (水) 掲載

◎全盲の池田さん 夢の音楽教諭に

 全盲の音楽教諭が、北海道で初めて普通高校の教壇に立つ。本年度、函館商業高校(川眞田政夫校長)に着任した池田サラジェーンさん(24)だ。生まれつきの視覚障害を抱え、現在は光を感じられる程度の視力。「大好きな音楽の魅力、素晴らしさを生徒に伝えたい」という思いを胸に、夢だった音楽教諭としての一歩を歩み出す。

 函館出身。音楽好きの両親の影響で、音楽と共に育った。池田さんは、その音色にじっと聴き入る子どもだったという。幼稚部から中学部まで函館盲学校で学ぶ一方、5歳からピアノ、小学6年生から声楽を習い、さらに音楽のとりこになった。

 夢を見つけたのは、中学生のとき。池田さんの可能性を引き出してくれた学校や声楽、ピアノの先生に接するうち、「私も音楽を通して、子どもの人間性や感性を磨きたい」と思うようになった。音楽を専門に学ぼうと決意し、筑波大付属視覚特別支援高校(東京)に単身進学。5年間声楽とピアノを学んだ。

 札幌大谷短大の音楽科に進学。授業で使う資料を事前に点訳してもらったり、データで受け取って音声ソフトを使って聞いたりした。札幌大谷大に編入した3年次には、代表を務めた合唱サークルが全国大会に出場。ソプラノの透き通った響きを届けた。「全身を使って歌うのはとても楽しい。ヘンデルやモーツァルトの曲が好き」と池田さん。4年次には迷わず教職課程を履修、道教委の採用試験に合格し、晴れて音楽教諭となった。

 池田さんは「生まれの地、函館に赴任できて良かった。生徒に寄り添い、音楽を通して心を育てられる教師を目指す」と笑顔を浮かべる。授業では、もう一人の講師と共に1年生を教える傍ら、合唱部の顧問も務めるという。8日は函館商業高の入学式。〝教師1年生〟として、新入生と音楽を奏でる日も近い。

 道内の特別支援学校には全盲の教師がいるが、普通高校では池田さんが初めて。(稲船優香)



◎臼尻に昆布加工場完成

 函館市南茅部地区の漁業・加工業者で構成する道南伝統食品協同組合(町田晴雄理事長)が臼尻町に建設していた新工場の竣工式が7日、同工場で開かれた。旧工場の老朽化が進んでいたことから土地を取得し、産学官金が連携して新たに昆布の粉末工場を建設。大型の昆布乾燥機を導入し、とろろ昆布など独自商品の生産増大を図る。

 新工場の面積は約500平方㍍。総事業費は1億5000万円で、工場建設には総務省の「地域経済循環創造事業」の補助金を活用したほか、北洋銀行から支援を受けた。

 「昆布のうまみを引き出すためには乾燥作業が重要」(同組合)とし、老朽化していた乾燥機も刷新。道立工業技術センターが新型の昆布専用乾燥機の設計技術を提供、経済産業省の「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業」の補助を受け、約2500万円で導入した。同組合は「作業量は最大で3倍になる」とする。

 同組合は、昆布の粉末を年間で約20㌧製造。主力のとろろ昆布のほか、ふりかけや菓子などの加工品を通信販売している。昨年度の売上高は4億7000万円で、新工場の稼働により、5年後は5億5000万円の売り上げを目指す。

 竣工式には関係者約60人が出席し、工場の完成を祝った。町田理事長は「高品質の商品を製造し、新しい得意先を増やしたい」と意欲をみせるとともに、「新工場の建設を地域の雇用拡大につなげたい」と話していた。(山田大輔)



◎大谷短大 年度末に就職率100%…今春卒業生 全科目で達成

 函館大谷短大(福島憲成学長)を今春卒業した学生の就職率が、コミュニティ総合学科、こども学科、専攻科の全科で100%(3月31日現在)になった。年度末に100%を達成するのは「近年では珍しい」(福島学長)といい、担当教員が学生の個性に合わせた適切な就職支援を行った成果が現れた。

 同短大によると、就職希望者77人全員が3月末までに就職が決まった。内訳はコミュニティ総合学科14人、こども学科52人、専攻科11人。例年だと4月に入ってから100%に達することが多いという。就職先を見ると、3人を除く74人が函館圏へ就職しており「地域から預かり、地域へ貢献できる人材育成を目指す」という学長の方針を具現化した。

 職種別では、コミュニティ総合学科が小売り・卸売り35・8%、こども学科が保育士71・2%、専攻科が介護福祉士81・8%と最も多かった。求人件数は例年と変わらない。

 大学は通常、就職面での相談に応じる「キャリア支援センター」を置く。学生が主体的に行動する同センターに対し、同短大は全教員が参加する「学生支援部」を設置しており、学生と教員が一緒になって進路を決めていく。

 学生支援部長の毛利悦子教授は「学生の日常生活を見た上で送り出しているので、企業側から『信頼できる』『安心して受け入れられる』と評価が高い」と話す。卒業後も、教員が相談に応じるなど親身のサポートを提供しており「離職率が低い」(同短大)。

 福島学長は「人口減少で函館が消滅するのではと不安を抱く学生もいる。不安があるなら、自分たちの手で豊かな未来をつくっていこうと提案したい。今後も学生と共に頑張っていきたい」と決意を新たにする。(山崎大和)


◎新幹線ジオラマ 来庁者お出迎え…函館駅から市役所に移設

 函館近郊の観光名所を走る様子をブロック玩具で再現したジオラマの公開が7日、函館市役所玄関ホールで始まった。3月末にJR函館駅前で開いた開業1年前カウントダウンイベントでお披露目された作品で、来庁者を楽しませている。

 新幹線沿線のグルメを集めた3月28、29の両日に開かれた同イベントには2日間で3万3000人が来場。約5万個のブロックを使用したジオラマは今月6日まで函館駅内で展示された。

 市民の名前入りブロックを使用した高架橋にはH5系カラーの新幹線が置かれ、ハリストス正教会やトラピスト修道院、咸臨丸など、沿線の見どころを再現。人形が「よこうそ北海道新幹線」と書かれたフラッグを掲げたり、新幹線車両のかぶり物で話題の「函館はやぶさ隊」のメンバーの姿もあったり、遊び心にあふれた作品だ。

 市企画部新幹線開業イベントプロジェクトチームは「多くの市民にジオラマを見てもらい、開業への期待の高まりにつながればうれしい」としている。(今井正一)