2015年5月14日 (木) 掲載

◎海藻「ダルス」使ったそば 久蔵が開発

 函館市南茅部地区の二本柳旅館内にある「手打ちそば久蔵(きゅうぞう)」(豊崎町64、二本柳芳樹社長)が、海藻「ダルス」を使ったそばを開発した。海の幸と山の幸が合体した珍しいそばで、豊富な栄養成分が特徴。6月から1日限定10食を提供する予定だ。

 日本蕎麦(そば)協会公認の蕎麦鑑定士2級を持つ片山隆さん(65)=七飯町大沼町=が、新聞記事でダルスが三大栄養素の鉄、ヨウ素、ビタミンAをバランスよく持っていることを知ったのがきっかけ。そばには五大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル)が豊富に含まれており「そばとダルスが互いに補い合うことによって栄養価値が増す」(片山さん)と考え、常連客として知り合いだった二本柳社長(54)に提案した。

 二本柳社長がダルスの粉末化を試みたが、実現しなかった。そこで、塩抜きしたダルスを細かく粉砕して生地に練り込むことでそばを完成させた。原藻は同地区の野村水産(野村譲社長)から仕入れる。

 ほのかに磯の香りがして、コンブでもワカメでもない独特の風味が感じられる。麺に弾力があり、食べ応えがある。もりそばとして出すが、商品名や価格は未定。6〜8月に提供したい考えで、二本柳社長は「地産地消のそばなので、ぜひ食べてほしい。未利用資源の有効活用にもつながる」と期待する。

 ダルスはコンブの養殖ロープに繁茂し、コンブ漁が盛んな同地区では厄介者扱いされてきた。カナダやアイルランドではサラダやスープなどに使われるが、日本では収穫対象になっていない。国内でも「海藻を使ったそばは珍しいのでは」(片山さん)としている。 (山崎大和)



◎台湾からの報奨旅行2200人 大手生保会社 自社企画で花火打ち上げ

 台湾の大手生命保険会社「國泰人壽」のインセンティブツアー(報奨旅行)として、約2200人の社員が函館をはじめ、道内各地を訪れている。12〜16日に計5グループが函館入りし、市内観光や函館山からの夜景などを満喫している。函館で受け入れた過去最大規模の報奨旅行で、市観光部は「経済成長著しい東アジアや東南アジア各国で今後の需要が高まっていく分野」と誘致強化を図る考えだ。

 市コンベンション推進課によると、同社は台湾全土に約4万人の社員を抱える大企業で、業績優秀者への報奨として、今年は北海道旅行を企画。第1陣は11日に新千歳空港に到着した。それぞれ4泊5日の滞在中、登別、函館、大沼、ニセコ、札幌など〝北海道ゴールデンルート〟を回るツアーが組まれた。

 市は誘致に向けて、旅行会社に観光スポット紹介を働き掛け、函館訪問記念の演出として同社が企画した花火の打ち上げ場所として「緑の島」を提供するなど準備に協力した。

 13日に到着した第2陣は約500人で、観光バスは17台になった。夜景見学前には「イカール星人」や五稜郭のキャラクター「かくルン」が出迎え、市職員らが工藤寿樹市長のメッセージ入りの記念品を配布した。同課は「台湾とは直行便もある。函館ファンになってもらえれば、リピーターとして家族や友人と一緒に訪れてもらえるはず」と期待する。

 報奨旅行は一般に交通費や宿泊費を企業が負担するため、旅先での消費額は一般旅行者より多いとされ、昨年も小規模ながら、インドネシアからのツアー客が来函している。同課の里村昌則課長は「今後、中国本土や東南アジアも有望な市場。フェリーや新幹線を使った青函圏をめぐるコースなどさまざまな提案をして誘致を図りたい」と話していた。

 花火打ち上げ場所の緑の島は、16日までの毎日午後6時〜7時半、立ち入りができない。 (今井正一)



◎一般公開5周年記念 24日「旧相馬邸」初の無料開放

 函館市指定の伝統的建造物「旧相馬邸」(元町33)が、6月1日で公開5周年を迎える。5月24日には初の無料開放を行い、江戸—明治期の探検家で「北海道」の名前を考案した松浦武四郎(1818〜88年)が描いた「コロポックル(蕗(ふき)の下にいる人)の図」を初公開する。

 同邸は明治時代に北海道屈指の豪商として知られた相馬哲平の私邸で、1908(明治41)年に建造。木造平屋、一部2階建てで、エステート企画(東出伸司社長)が空き家になっていた建物を改修し、2010年6月から一般公開を始めた。当時としては珍しい洋間も備えた建物を紹介しながら、「北海道の夜明け」をテーマに、松前の絵師・小玉貞良が描いた「江差屏風(びょうぶ)」といった貴重な資料を展示し、年間1万4000人前後が訪れている。

 24日には5周年を記念し、松浦が1874(明治7)年に描いたとされる「コロポックルの図」を初公開。昨年暮れに東出さんが掛け軸を入手し、アイヌ民族の伝承に登場するコロポックルの姿を独特のタッチで描いている。

 また、旧上磯町(現・北斗市)随一の旧家として知られる種田家の分家に伝わり、相馬、種田両家で実際に使用された輪島塗の食器類も展示。家紋が入った茶碗などを収蔵し、当時の豪商の暮らしぶりを今に伝える。当日はこのほか、江差屏風(複製)の前で記念写真を撮影できる催しも用意している。

 築100年以上の建物を残そうと外壁や蔵の修理を進め、屋根瓦も来館者や行政の補助を得ながら、昨年度から2年間かけて掛け替えを行っている。東出さん(75)は「5年間も公開できると思っていなかったので夢のよう。ファンや行政の応援のおかげ」と振り返りながら「旧相馬邸だけのオリジナル性を出そうと資料を集めてきた。5周年の感謝の気持ちを示したい」と話し、来場を呼び掛けている。  通常の入館料は大人800円、中学生以下300円で、午前9時半から午後6時まで。24日は午前9時半から午後5時まで無料開放する。問い合わせは同邸(TEL0138・26・1560)へ。  (千葉卓陽)


◎自治体の「観光力」算出 消費額基準 函館2位

 日本政策投資銀行北海道支店は、道内179市町村を対象に2013年度の入り込み客数と観光客の消費額を基にした「観光力」を数値化した。日帰り客、日本人宿泊客、外国人宿泊客の消費額に係数を設定。札幌市(1万2983点)に続き、函館市は2位で4016点、3位は小樽市の2195点と続いた。函館は宿泊客でポイントを伸ばしたが、小樽市や旭川市(6位)など、日帰り客の多い自治体も上位となった。観光地としての強みのある自治体がポイントを伸ばす傾向がうかがえる。

 係数は日本人宿泊客1人当たりの消費額を1とした場合、日帰り客を0・22、外国人宿泊客を1・32と設定。宿泊は延べ数で計算し、各数値を合算した。宿泊施設の集中する都市部や宿泊客数の多い観光地が上位を占めた。

 札幌を除く上位都市のうち、宿泊客の比重が高いのは函館市、登別市、釧路市、日帰り客では小樽市、旭川市、千歳市となった。函館よりも小樽の方が観光客の総数は多いが、観光客動向の違いが数値に反映された。登別市、倶知安町、上川町などは外国人客の多さで総合得点を伸ばした。

 また、観光力を人口で割り、各市町村の産業における観光産業の比重がどの程度あるかを「観光まち度」として数値化。占冠村、留寿都村、上川町、喜茂別町、赤井川村と続いた。同支店は「観光まち度は観光産業がどれだけ住民に身近なものかを表す指標で、ウインターリゾート地など強みがある自治体が上位になった」とする。

 このほか、03年度との数値比較も公表した。同支店は「自治体間の序列ではなく、10年間の数値の上がり下がりを比較しながら、これからの観光をどのようにしていくか議論をしてもらうきっかけにしてもらいたい」としている。

 調査結果は政投銀のホームページ(http://www.dbj.jp/)内の「地域・海外レポート」で公表している。  (今井正一)