2015年5月23日 (土) 掲載

◎函大1年の授業に初導入 元町散策 西部地区学ぶ

 函館大(野又淳司学長)は本年度、1年生が市内西部地区を散策するユニークな授業を初めて導入した。学生の半数が市外出身のため、函館観光の中心地である同地区について理解を深めるのが狙い。22日には学生20人が「函館まちあるきガイド」の案内で元町周辺を歩いた。

 新入生62人のうち半分が市外出身。函大は西部地区をフィールドとした調査研究に力を入れているが、同地区を訪れたことがない学生も少なくないという。

 学生たちは函館山にバスで登り、山頂や売店を見学。その後、函大ベイエリア・サテライト(末広町)に移動し、同拠点を基点に元町周辺1・5㌔を1時間かけて散策した。

 土田尚史さん(39)がガイドを務め、基坂や旧イギリス領事館、元町公園、旧函館区公会堂、八幡坂、函館ハリストス正教会など教会群、東本願寺函館別院を巡った。土田さんは「西部地区はかつて百貨店や銀行などがあり、まちの中心地だった。和洋折衷の建築物が多いのも特徴」と紹介。明治時代に入ってからは、耐火対策としてレンガやコンクリート造の建物が建てられた歴史も披露した。

 神奈川県出身の福岡美輝(みつき)さん(18)は「函館は伝統的な建物がたくさん受け継がれており、素晴らしいまち。鎌倉と似ている」と話した。  函大地域連携センターは「函館を研究する上で、まずは学生たちに観光地を知ってほしい」と期待を込める。(山崎大和)



◎大きくなって戻ってきてね ひやま復興対策協 ニシン稚魚10万匹放流

 【上ノ国】ひやま地域ニシン復興対策協議会(会長・工藤昇町長)は22日、上ノ国漁港にニシンの稚魚10万匹を放流した。地元漁師と園児らが参加し、資源復活を願った。

 稚魚は今年1月に江差・上ノ国沖合で獲れた親ニシンから採卵、せたなの栽培公社で育てた。100万粒から12万4500匹を放流用に確保したという。

 工藤町長は「何とか桧山のために、来年は100万単位で放流できるように道に働き掛けていく。夢と希望を持って事業を進めたい」とあいさつ。来賓の立花謙二桧山振興局長も「道も全面的にバックアップしていきたい」と述べた。

 稚魚は体長6㌢で1匹平均1・6㌘。上ノ国保育所の年長児20人が「魚を食べるときは残さないで食べます。海をきれいにするので大きく育って帰ってきてね」とニシンを〝激励〟した。保育所実習で付き添った上ノ国高校3年の浅沼有人君(17)は「将来は漁師を目指しているので、このニシンが元気に育ってくれることを願いたい」と話していた。

 今年の放流は上ノ国のほか江差や乙部など計8カ所で、25日には奥尻で行われる予定。協議会事務局によると、これまでの放流実績は2009年度の桧山振興局独自事業を含めて延べ106万匹に上る。(田中陽介)



◎新幹線工事ほぼ完成 函館の生コン特需終了

 北海道新幹線新函館北斗—新青森開業に向けた建設工事がほぼ終了したことに伴い、函館の生コンクリートの特需も終わりを迎えた。新幹線工事は札幌延伸のための村山トンネル(北斗市)を残すだけとなり、供給の最前線は長万部までの北渡島に移る。今後、函館では需要の大幅な減少は避けられない状況で、工場集約化による適正な生産規模構築など業界を挙げての対応を模索している。

 函館、南北海道、北渡島の3協同組合で構成する道南地区生コンクリート協同組合連合会によると、道南全体の出荷量のピークは1995年度の140万5660立方㍍。公共工事の減少を背景に年々減少し、2014年度には39万5836立方㍍にまで減った。

 この厳しい状況の中、下支えしたのが05年に着工した新幹線工事。管内でトンネルや橋梁といった構造物の建設があり、出荷量は持ち直した。14社でつくる函館生コンクリート協同組合(北斗市、成田眞一理事長)はこの10年で関連工事に約60万立方㍍を出荷。南北海道も約40万立方㍍を供給し、特需に沸いた格好となった。

 ただ、工事がほぼ終了したことで需要は大幅に減少。正念場を迎えることになる。函館の協組は14年度の出荷量18万3766立方㍍に対し、15年度の想定量を16万8000立方㍍と厳しく見積もった。「函館アリーナや高層マンションへの供給といった好材料もあったが、今後は減少が続く。公共工事増加に期待するしかない」とする。

 各社の経営が苦しくなる前に生産を効率化させようと、近年は工場の集約化による共同操業に切り替えている。今月上旬にも函館市内の工場を1つ閉鎖し、ピーク時に40以上あった道南の工場を24にまで集約。適性な供給量の維持に努めている。

 先行きに強い危機感を持つ成田理事長は「人口減少に合わせた生産規模にしていくことが急務。業界を挙げて工場集約化に取り組むことで生き残っていきたい」と語る。(松宮一郎)


◎前理事長詐欺事件 中島町のNPO法人 江差福祉会が再建支援

 【江差、函館】江差町の社会福祉法人「江差福祉会」(樋口英俊理事長)は22日、前理事長の詐欺事件があった函館市中島町のNPO法人「日本障害者・高齢者生活支援機構」(田中慎一理事長)の再建支援に着手することを明らかにした。同会が全国展開する災害備蓄食品づくりの一部を同NPOに委託して中島町のビル内で製造するほか、組織運営面でも指導する。樋口理事長は「利用者に対する魅力づくりと地域貢献できる組織の強化などに努めたい」としている。

 関係者によると、事件発覚直後の3月に同NPOが複数の関係機関に打診し、同会が全面支援を決めた。7月から中島町のNPOビル内で災害備蓄食品事業を委託する予定で、6月には同会から女性職員1人を派遣し、本格的な準備に入る。

 事業内容は、特殊加工の米粉に水を混ぜると1分ほどで餅のような味わいになる新商品「備えもち」のパッケージ詰め作業で、利用者10〜15人ほどの雇用を見込む。同会が機械を貸与し、原料を届ける。販売などは同会のノウハウを活用し、同NPOの一日の売り上げ目標を現在の10〜20倍の10万〜20万円とする。

 また、樋口理事長は江差町で展開する惣菜や手づくりパンなどの販売コーナーを中島町のビル1階部分に設け、障害者の雇用充実と地域住民の交流も図りたい考え。

 同会の授産施設の作業工賃は道内トップレベルで、就労継続支援B型事業所「あすなろパン」(利用者40人)では、昨年の一人当たりの月額平均が15万円になる。樋口理事長は「中島町でも高い工賃の提供を目指す。見晴らしのよいビルで働き、きちんとした給料、所得補償を受けて自立することで、定住や地域活性化にもつながる」と話している。

 田中理事長(51)は「江差福祉会の支援を起爆剤として、より求められる福祉サービスの提供に努めていきたい」としている。(田中陽介、平尾美陽子)