2015年8月1日 (土) 掲載

◎七飯で「北の高校生会議」

 【七飯】全道の高校生が日本の社会問題について議論する「北の高校生会議」が7月31日、七飯町の大沼国際セミナーハウスで始まった。高校生15人が集結。初日は人口減少を取り上げ、白熱したディスカッションを繰り広げた。

 今年1月に上川管内美瑛町で初めて開催。2回目の今回は道南に舞台を移し、函館ラ・サール、旭川東、立命館慶祥、旭川大の4校の生徒が集った。

 議論を前に、有識者や産業界でつくる「函館市まち・ひと・しごと創生推進会議」に参加している大学生の一人、道教育大函館校地域協働専攻地域政策グループ2年の小野寺聖(りょう)さん(19)が講演。人口減少について「さまざまな原因が重なる高度複合的な問題。短期的な解決は難しい」と強調した。

 また、「フットワークの軽さや注目されやすい点を生かし、若者ならではのまちづくりの機運が高まっている。これから一番影響を受けるのは私たちの世代なので、一人一人がもっと考えないといけない」と積極的な発言を促した。

 これを受け、ディスカッションのテーマを「人口減少対策は必要か?」と設定。「地方の伝統や文化を守るために対策を要する」「リスク分散のため、都市部への一極集中は良くない」などの声が上がる一方で、「人口の多い場所は利便性が高く住みたいのが当然。わざわざ地方に配分する必要はないのでは」という意見もあった。

 運営委員長の函館ラ・サール2年の村岡龍岳君(16)は「全員の考えを尊重できるよう準備してきたので、3日間ひたすら議論するのみ。問題意識を高めるきっかけになれば」と話していた。

 参加者は2日まで、原発や選挙権などについて議論を交わす。 (稲船優香)



◎乙部の児童、手づくりラジオで朝体操

 【乙部】子どもたちの夏休みに合わせ、各地で早朝のラジオ体操が盛んだ。乙部町の明和小学校(木村長校長、児童13人)の子どもたちは手づくりのラジオを学校近くの空き地に持ち込み、朝の体力づくりに活用している。

 ラジオは今年5月に開かれた町公民館まつりで、NHK函館放送局が主催したラジオづくり講座で児童がつくったもの。参加した子どもたちは人気キャラクターのシールや花々の絵などを飾り付けて、モノづくりの魅力の一端に触れた。

 明和小のラジオ体操は7月25~31日に行われた。「手づくりラジオを大事にしている」(学校関係者)と、雨の日も自宅でラジオをつけて体操をしていた児童もいたという。

 また、自転車のかごにラジオを乗せてサイクリングを楽しむ子もいる。手づくりのため、チューニングに苦戦するときも多々あるが、「それもモノづくりの醍醐味」と町民。子どもたちは“宝箱”から流れてくる音楽やニュースなどを、夢中で聴き入っている。 (田中陽介)



◎TPP 譲歩許さぬ、道南農家ら不安

 大詰めを迎えたTPP(環太平洋連携協定)交渉で、日本が農業分野で譲歩する見通しが強まったことについて、道南の農家からも将来の経営不安を懸念する声が広がっている。主食用コメや牛肉の輸入増加により、再生産できなくなる恐れがあるからだ。現場は農産物5項目を関税撤廃の例外とするとした国会決議を守り、粘り強く交渉を行うよう政府に訴えている。

 TPP交渉は7月29日〜1日(日本時間)に米ハワイで閣僚会合が開かれ、今回で大筋合意を目指すとされる。日本は各国と個別に関税の扱いをめぐって協議を続けている。道南でも関心が高いコメは米国から7万㌧超の無税輸入枠を設けるほか、牛肉は現行38・5%の関税を15年かけて段階的に10%程度まで引き下げる方向と報じられている。

 北斗市米穀振興会会長の小山内吉美さん(63)=同市開発=は「日本が主張した米国から5万㌧でも多いのに、7万㌧超とはあぜんとするばかり。実現すれば稲作農家には大打撃で、コメ作りの先行きが見えない」と話す。

 「譲歩するなら国会決議違反だ」。こう語気を強めるのは同市清水川の森隆志さん(50)。最高の「特A」評価を受けた道南ブランド米「ふっくりんこ」を中心にコメ15㌶を作付ける。「輸入米が大量に流入すれば、ブランド米でも影響は避けられないだろう。価格面で競争できないのは明らかで、品質や安心感で勝負するしかない」という。

 厚沢部町稲見でコメ12㌶を栽培する佐々木宏さん(62)も、一次産業が主体の桧山管内への影響を懸念する。「国が掲げる地方創生に逆行する動きで、輸入増で農業地帯は疲弊する」と指摘する。

 輸入牛肉は、酪農家の収入を支えるホルスタイン種の雄牛と競合するため、打撃が大きい。七飯町軍川で搾乳牛75頭、育成牛75頭を飼う小森久司さん(64)は「生産者乳価の値上げがあったものの、輸入飼料や生産資材価格が高止まりしており、個体販売が堅調なので経営を継続できている。雄子牛の価格下落への不安が募るばかり」と表情を曇らせる。

 来年夏の参院選への影響について、渡島管内のある農家は「TPP交渉結果によっては、農村票が自民党から離れていくかもしれない。ただ、選挙はあくまで候補を見て判断するので、影響は限定的だろう」とみる。(山崎大和)


◎福祉コミュニティエリア事業、8グループが参入の意向

 函館市が日吉町4の市営住宅跡地に整備を計画している「福祉コミュニティエリア」(約8万平方㍍)に関し、市内外の福祉事業者らで組織する8グループが、エリア整備事業に参入する意向を示していることが明らかになった。

 7月30日に開かれた市議会民生常任委員会(池亀睦子委員長)で、市保健福祉部が報告した。

 同エリアは特別養護老人ホームや認知症高齢者グループホームなど6施設、最大223床の整備を計画。一戸建てなど住宅も建設することで、障害の有無に関わらず地域福祉を実践するエリアとする。

 市は3月に、コンセプトに基づく事業運営が可能な、複数事業者のグループによるエリア整備を進めるとした整備基本構想を策定。4〜6月に開発事業者選定に関わる事前エントリーを受け付け、市担当者との意見交換を行ったところ、市内外の福祉事業者やデベロッパーなど8グループが事業参入の意向を示した。

 これまでの意見交換の中で、ほとんどのグループが地元事業者の必要性を訴えているといい、「柱はデベロッパーになるだろうが、構成する法人は函館の事業者が想定される」(同部)とした。

 このほか、同エリア内は医療、介護、住まいに加え、スーパーマーケットなど商業施設の建設も検討されていることから、運営するグループは各分野にかかわる5つ以上の法人で構成されることが報告された。

 市は11月に学識経験者らでつくる開発事業者の選定委員会を設置して12月から事業者の公募を開始、来年3月に選定する予定。事前エントリー受付に参加していない事業者でも公募参加は可能としている。(蝦名達也)