2015年9月15日 (火) 掲載

◎大妻高所有の現存最古日本製ピアノ 29日最後のコンサート

 明治期に製造され、現存する中では日本最古とみられる「西川ピアノ」を使って函館大妻高校(池田延己校長)が毎年開いてきたコンサートが、29日で最終回を迎える。外山茂樹前校長(享年60)の他界以来6年間行われてきたが、7回忌を機に一旦区切りをつける。29日午後4時から同校オープンカフェ(柳町14)で開く「大妻メモリアルピアノ“ファイナル”コンサート」の鑑賞希望者を募集している。

 ピアノは2007年、旧校舎の解体の際に発見された。弦は腐食し、弦をたたくハンマーは欠け落ちていて廃棄処分も検討されたが、外山前校長の意向で09年、東京の調律所に修復を依頼した。

 外山前校長は自ら校歌を演奏することを願っていたものの、鍵盤に触れることなく同年9月に急逝。ピアノは11月に同校に戻り、12月には追悼行事として初回のコンサートを開催。多くの同窓生が涙ながらに外山前校長をしのんだ。

 製造番号がなく、内部の素材などから1886〜90年ごろに製造された試作品の一つ。1925年に同校初代校長の外山ハツさんと、教員だった神田マスコさんがピアノと共に写った写真が確認されており、池田校長(70)は「ピアノは本校の『歴史的証人』。今後は外山前校長の13回忌など、節目に披露したい」と話す。

 演奏するのは、チェリストとして幅広く活躍する文屋治実さんと、函館在住のピアニストの高実希子さん。「トロイメライ」(シューマン)や「白鳥」(サン・サーンス)など、8曲を奏でる。

 希望者は往復はがきの裏に、郵便番号、住所、氏名、電話番号、「大妻メモリアルコンサート希望」と明記し、〒040・0002、函館市柳町14の23、函館大妻高校「大妻メモリアルピアノコンサート係」まで。定員40人。締め切りは18日(消印有効)。(稲船優香)



◎自転車、カヌーで環駒満喫 3町舞台イベント

 【七飯、森、鹿部】全国で行われているアウトドアスポーツイベント「GREAT EARTH(グレイトアース)函館大沼ライド&カヌー2015」(実行委主催)が13、14の両日、駒ケ岳を囲む七飯、森、鹿部の3町を舞台に開かれた。参加者は道南の自然を満喫しながら、爽やかな汗を流した。

 イベントは「地球を遊びつくせ!」を合言葉に、ロングライドをはじめ、さまざまなアウトドアスポーツを楽しもうと全国で開催。環駒ケ岳エリアでの実施は今年で3回目を迎えた。

 13日に行われた大沼ライド(自転車)のコースは、大沼公園特設会場を発着点に、七飯町役場、城岱牧場、しかべ間歇泉(かんけつせん)公園、つど〜る・プラザ・さわらを巡るロングコース(100キロ)と、七飯町役場、城岱牧場を除いたショートコース(65キロ)を用意。ロングに197人、ショートに84人がエントリーした。

 スタートセレモニーでは七飯町の中宮安一町長が「レース中は細心の注意を払ってください。途中棄権も勇気です。今日1日頑張って」と激励。スタートの合図と同時に、参加者がコースへと飛び出した。

 コース各所には、地域の特産品や観光名所などが楽しめる「エイド」と呼ばれる休憩ポイントを用意。アップルエイド(七飯町役場)では町産リンゴジュースが、たらこエイド(しかべ間歇泉公園)ではエビをふんだんに使用したみそ汁「鹿部汁」が振る舞われるなど、各地域の地元食材を使った自慢の一品が、参加者たちの疲れた体を癒していた。

 また、14日には大沼の湖上でカヌー体験も行われ、参加者は日に日に秋の色が濃くなる大沼の自然を満喫した。(野口賢清)



◎IC乗車券、事業者公募へ 16年度末導入目指す

 函館市電と函館バスへの導入を検討しているICカード乗車券について、函館市は14日、市企業局と同社が本年度中にカード事業者を公募し、2016年度末の導入を目指す方針を明らかにした。公募はプロポーザル方式で実施し、函館仕様の機器納入やカードの設計などを担う。市は観光客の利便性を考慮し、JR各社など全国系カードが利用できる仕様を想定している。

 同日の市議会第3回定例会で斉藤佐知子氏(民主・市民ネット)、井田範行氏(市民クラブ)が検討状況について質問した。

 IC乗車券は、JR東日本の「Suica(スイカ)」など全国10社の相互利用カード(10カード)と、各地域の事業者の独自カード(地域カード)がある。地域カードには札幌の「SAPICA(サピカ)」のように市営地下鉄で10カードの利用が可能だが、サピカはスイカの地域で利用ができないなど、〝片利用方式〟の地域カードもある。

 国土交通省の4月現在のまとめでは、ICカードが2次交通に導入されていない人口20万人以上の都市は23市あり、函館はさらに主要鉄道でも10カードが利用できない10市に含まれている。同省の検討会のまとめでは、空白域解消に向けて①10カードへの参加②地域カードに10カードの片利用方式の導入−を推進する方向性を示している。

 ①、②ともに10カードを持つ観光客らは市電や函館バスでも利用できるが、②を採用した場合、函館のカードは東京都内の各鉄道などで利用できない一方で、地域独自の割引制度などサービスを付加しやすいメリットがある。

 いずれも導入には多額の費用が見込まれ、種田貴司企画部長は「国の補助金確保や市の財政支援が必要と考えている」と述べた。また、田畑浩文企業局交通部長は函館バスとの費用負担について、車両や営業所に設置する機器はそれぞれが負担し、共通仕様となるソフトウエアの開発費などは、乗降客数や事業収入比率などで負担割合を検討するとした。(今井正一)


◎野外劇舞台設置「難しい」 市教委 石垣修復後も崩落の危険性

 国の特別史跡・五稜郭跡で石垣修復作業を進めている函館市教育委員会は14日、市民創作函館野外劇に使用する舞台装置の設営について「石垣崩落の危険性があり、安全性の確保が難しい。これまでの場所での舞台設置は極めて難しい」とし、修復完了後の来年度以降も認めない考えを示した。

 市議会第3回定例会の一般質問で、斉藤佐知子氏(民主・市民ネット)への答弁。

 函館野外劇は市民が上演する函館の歴史絵巻で、2013年までは五稜郭の堀を生かした特設舞台や観客席を設営。昨年3月、例年舞台を設営する付近の石垣の一部が崩落し、同年は郭内の別の場所で上演。今年は五稜郭タワーアトリウムなどでの無料公演として継続した。石垣は今年6月中旬から修復作業が進められている。

 文化財や石垣の専門家らによる保存整備委員会は石垣崩落の要因について、堀水の凍結や融解の繰り返しで水面下の石垣部分がふくらみ、さらに上部からの過重によって崩落したと推測。野外劇の舞台装置などの影響について、川村義浩生涯学習部長は「堀の石垣には崩壊場所以外にも積み石が抜けている場所がある。舞台設置との間に因果関係があったかを明確にするのは難しい」と述べた。

 さらに、修復後もさらなる石垣崩落の危険性があるとして、来年以降も舞台設置を認めない考えを示した。斉藤氏は「市民の宝である五稜郭と、野外劇もしっかり守ってほしい」と述べた。(今井正一)