2015年9月18日 (金) 掲載

◎函館ゆかりの報道写真家・故岡村さん写真展

 ベトナム戦争の報道写真で米国を代表する写真雑誌「LIFE」の表紙を飾るなど、紛争地の取材で活躍した函館ゆかりの報道写真家、岡村昭彦さん(1929~85年)の写真展(実行委主催)が18~25日、函館市地域交流まちづくりセンター(末広町4)で開かれる。岡村さん没後30年に当たる今年は、戦後70周年、ベトナム戦争終結から40週年の節目。紛争地の取材を通して平和を訴えた岡村さんの撮影写真のほか、遺品も公開する。(鈴木 潤)

 岡村さんは東京都生まれ。東京医学専門学校中退後、52年にトラピスト修道院(北斗市)で客室係として働いた。54年に結婚し、妻の実家だった栄文堂書店(函館市末広町)で出版流通に携わった。62年、PANA通信社に入社し、翌年の63年には南ベトナム軍に従軍し、戦争の前線を取材した。

 「LIFE」の71年3月12日号では、南ベトナム軍によるラオス侵攻作戦失敗の取材に成功し、10ページにわたる特集が組まれた。紛争地の取材のほか、日本のホスピス運動にもかかわり、「ホスピス 末期がん患者への宣告」(家の光協会)を出版した。

 写真展では、ベトナム戦争などの写真約40点のほか、愛用品も展示。取材時に使っていたカメラやヘルメット、直筆の原稿用紙などを並べる。

 岡村さんの長女で、栄文堂書店の店主、佐藤純子さん(61)は「当時ベトナムで起きたことを写真を通して伝えたい。生きること、死ぬことを考えるきっかけになれば」と話している。

 入場無料。18日午後6時半から、オープニングトークを開き、写真史家で武蔵野美術大学非常勤講師の戸田昌子さんが、岡村さんの写真を解説。19日は午後1時から、「こどもギャラリートーク」として戸田さんが子ども向けに講話するほか、手回しオルガン奏者の紀あささんの演奏会もある。

 開場時間は午前9時から午後9時(初日は午後1時開場、最終日は午後3時閉場)。問い合わせは同書店(☎0138・22・3419)へ。



◎未来大が知的バス停のデマンド交通実証実験

 【七飯】公立はこだて未来大学は17日、利用者の要求に応じて運行するデマンドバスの交通実証実験を町内で開始した。人が近づくとセンサーが感知して自動的に電源が入り、ボタンを押すと利用者の存在を運営側にメールで知らせる「知的バス停」(同大開発)を使い、新たな公共交通システムを検証する狙いだ。

 デマンドバスの実験は2013年9月に実施済みだが、知的バス停を用いるのは初めて。国道5号線沿いの大中山バス停と町健康センター(アップル温泉)内にそれぞれ設置。函館バスの協力を得て、両バス停間(約1キロ)を中型バス2台が無料で運行する。

 知的バス停の中央部にある電子ペーパーには、行き先のほか現在時刻と到着予定時刻を表示。利用のないときは電源が入らず、電気の消費量を大幅に軽減できる。バスに乗りたい人はボタンを押すだけで、手軽に素早くバスを呼べる。  開発に携わる同大の長崎健准教授(情報アーキテクチャ学科)は「今後も利用者にとっての『使いやすさ』を検証しながら開発を進めていく」と話した。

 実験は22日まで。午前10時から午後10時ごろまでを予定している。  (斎藤彩伽)



◎駒ケ岳噴火想定し避難訓練、森町

 【森】町は17日、町内全域で駒ケ岳の噴火災害を想定した「森町駒ケ岳火山噴火防災避難訓練」を実施した。町職員や町消防本部、森署などの各関係機関、町民ら約500人が参加し、避難所の開設や避難者の受け入れ態勢の構築、防災行政無線放送による情報伝達訓練などを通じて、火山災害発生時に迅速かつ的確な行動ができるよう備えた。

 町内全域での実施は2005年の合併後初の試み。この日は未明に駒ケ岳の火山活動が活発化、午前9時ころに小噴火し噴火警戒レベル3が発表されたと想定。町役場に災害対策本部を設置して、降灰採取や避難所開設を指示。情報伝達訓練では防災行政無線を使用し、町内全域に噴火情報や避難指示など、住民への周知を図った。

 さらに同10時過ぎには噴火警戒レベル5(避難)が発表されたとし、砂原地区全域や赤井川、駒ケ岳、姫川の一部など第一次避難区域指定されている地域の住民に避難指示を発令。対象地域に住む住民に対して指定した避難所へ向かうよう指示した。

 避難所は森町公民館とグリーンピア大沼の2カ所に設け、午前8時半にはすでに自主避難する町民の姿も見られた。第一次避難区域に指定されている尾白内町の男性(80)は「午前8時ころの防災無線を聞いて、自主的に早めに避難した。こうした訓練を経験しておくことで、いざという時に素早く行動できるようにしたい」と話していた。

 避難所では、森町赤十字奉仕団がアルファ米を使った炊き出し訓練も合わせて実施された。町防災交通課によると、この日避難所に訪れた人は公民館が138人、グリーンピア大沼が102人だった。

 このほか、登山者を対象とした避難対策訓練では、午前8時半の噴火警戒レベル2(火口周辺規制)発表により立ち入り規制を実施。町職員や森署員が登山車両や入山届けを確認し、避難誘導に当たった。旧森町時代に森町消防署長を務めた東森町の本多堅勇さん(83)は「訓練は繰り返し行うことが重要。参加したわれわれの声や、噴火災害を経験している他自治体の例を参考に、防災に強いまちづくりを目指してほしい」と期待する。

 梶谷恵造町長は「災害防災について普段から心掛けていなければ、いざというとき被害に遭ってしまう。改めて今日の結果を反省し、みなさんの安全を確保できるようにしたい」と話していた。町は参加者にアンケートを実施しており、「今後の検討課題としてみなさんの声を参考にしたい」(防災交通課)としている。(野口賢清)


◎道南政界、評価と怒り…安保法案参院特別委可決

 集団的自衛権の限定的行使を可能にする安全保障関連法案が17日午後、参院特別委で可決された。野党側が委員長不信任動議を提出するなど与野党の激しい攻防の末に可決し、道南の与党関係者は「議論を尽くした末の結果」と採決を評価した一方、野党側は強行採決に「国民の声を全く無視した暴挙」と批判を強め、安倍政権に徹底的に対峙(たいじ)する構えだ。

 与党サイドは冷静な反応。自民党の冨原亮道議(渡島総合振興局区選出)は「政府は議論を十分尽くしたのだから、採決に臨んだのだと思う。推移を見守りたい」とコメント。公明党函館総支部の茂木修支部長は、「政府は衆参両院で長い時間をかけ、丁寧に説明したと認識している」と評価。その上で「法案が通っても、必要があるごとに国民に説明していくことが大事だ」と指摘した。

 一方、野党側の怒りは収まらない。民主党の逢坂誠二衆院議員は「日本の平和主義も民主主義も立憲主義もぶち壊す、とんでもないことをしてくれた」と強く憤る。「特別委の採決が本当に採決されたといえるのか。国家の大転換につながる法案を、一国会の審議だけで強硬に進めるのは常軌を逸している」と話した。

 また、共産党函館地区委員会の三国武治委員長は「そもそも憲法違反の法案だったが、委員長の職権で総括質疑を行わずに採決するなど、言論の自由まで封殺する暴挙。徹底的に戦う決意だ」と猛反発した。 (千葉卓陽、山田大輔、今井正一、蝦名達也)