2015年9月4日 (金) 掲載

◎土砂災害 負傷者救い出せ 市防災訓練で連携強化

 9月1日の「防災の日」に合わせて、函館市防災会議主催の本年度防災総合訓練が3日、函館港港町埠頭(ふとう)で開かれた。関係機関や各地域の自主防災組織などから758人が参加、地震や津波、土砂災害に伴う負傷者の救助などを通じて、関係機関の連携体制強化を図った。

 警察や消防、自衛隊、海上保安部など24機関のほか、町会や自主防災組織63団体が参加。十勝沖でマグニチュード8・0の地震が発生し、函館で震度5強が観測され、太平洋沿岸西部に大津波警報が発表された—という想定で実施した。

 本年度は25項目の訓練を行い、各訓練には複数の機関が同時に参加して災害発生時の避難誘導や海上漂流者の搬送、ライフラインの復旧訓練を実施した。

 また、昨年8月に広島県で75人が犠牲になった土砂災害を受けて、今回初めて土砂災害救出訓練を取り入れた。消防隊員が土砂に巻き込まれた民家や車両の中から負傷者を救助し、さらに土砂やがれきの下敷きになっている負傷者をドクターヘリで搬送するなど、市立函館病院の災害医療派遣チームなどと連携しながら救出活動を展開した。

 同会議議長の工藤寿樹市長は、昨年9月の御嶽山噴火や同年11月の長野県北部地震など、近年の自然災害で甚大な被害が出たことに触れ、「いつ起こるか分からない災害に対して市民の生命財産を守るため、迅速かつ円滑な対応ができるように毎年訓練を実施してきた。今後も防災関係機関の皆さんと連携を図りながら、市としても防災対策を推進していきたい」と述べた。(能代俊貴)



◎「干しの王様しいたけ」ワンダー500に認定 道南唯一

 【七飯】町鶴野の福田農園(福田将仁社長)が生産・販売する「干しの王様しいたけスライス」が、経済産業省の「The Wonder500(ザ・ワンダー・ファイブハンドレッド)」に認定された。道南唯一の選定で、日本が誇る優れた地方産品の一つとして高い評価を得た。同社は販路拡大を視野に入れて海外展開に乗り出す構えだ。

 ワンダー500は本年度スタートした制度で、海外に広く伝えていく国内の魅力ある〝名物〟を発掘・選定。商品カテゴリーは観光体験、キッチン雑貨、生活雑貨、文房具、インテリア、ファッション、食、飲料の8つで、干しの王様しいたけスライスは食(全体115件)で選ばれた。道内から認定されたのは全カテゴリーで10件のみ。

 プロの目利きによる推薦と全国公募の2つの方法があり、干しの王様しいたけスライスはプロから「味も食べ応えも備えた世界に通用する食材。国内外を問わず、高い評価が得られる」との推薦コメントをもらった。

 同社は道立工業技術センター(函館市桔梗町)や北大などと共同で、3つの温度帯を使う「3Step工程」という独自の乾燥法を開発。これによりシイタケ特有の苦味や渋味を低減でき、従来の乾燥品に比べて和食以外にも相性がいい味のバランスになることが分かった。

 乾燥シイタケの利点について、同センターの小西靖之研究主査は「商品の付加価値が高まり、バリエーションも増える。海外への持ち運びも手軽にできる」と強調。同じ食カテゴリーでは、原木で育てた「大分県産花どんこ椎茸(しいたけ)」も選ばれており、菌床栽培の王様しいたけが大分と肩を並べるほどの栽培技術を持つことが証明された。

 福田社長(43)は「世界にアピールする500点に入り、食品だけでない幅広い分野の中から選ばれたのはうれしい。大きいシイタケは外国人に需要があると思うので、海外にも販路を広げたい」と意欲を見せる。道が道産品アンテナショップ「北海道どさんこプラザ」のシンガポール出店を検討しており、同社は海外進出への足掛かりとしたい考えだ。  (山崎大和)



◎ウイニング前の建物解体 所有者、景観に配慮

 函館市末広町のウイニングホテルを経営するEH(大阪府堺市)は、同ホテル近くに所有する建設工事が20年近く中断されたままの建物を解体し、時間貸し駐車場にする計画を明らかにした。

 約2800平方㍍の敷地に約60台を収容できる青空駐車場を整備。1日から解体準備に取りかかっており、11月までの駐車場完成を目指す。

 解体される建物は、「スパホテルオールドベイはこだて」が、地上8階地下1階建てのホテル建設を目指し、1996年4月に着工した。しかし、金融機関からの融資が打ち切られ、半年後に工事が中断。3階建て部分で建設がストップしていた。

 その後、同社は2001年に破産。着工に当たっては、函館市が約9000万円を補助しており、道南市民オンブズマンが補助金を認めたのは違法などとして当時の井上博司市長を訴えるなどの騒ぎにもなった。

 EHは01年に同所の土地を取得。建設途中の建物を活用した新たな施設建設も検討したが、天井が低いなどの構造的な問題もあって計画が進まず、今回の解体となった。同社は「来春の北海道新幹線開業をきっかけに、景観的にも好ましくなかった建物の解体に踏み切った」としている。  (金子真人)


◎大間審査 長期化を示唆 原子力規制委の田中委員長

 電源開発(東京)が青森県大間町で建設中の大間原発の新規制基準適合性審査の状況について、原子力規制委員会の田中俊一委員長は3日、「地震や津波の外的起因事象についての評価もまだまだ途中。予断を持って申し上げる段階ではない」と述べ、審査の長期化を示唆した。

 衆院原子力問題調査特別委員会で、道8区選出の逢坂誠二氏(民主党)への答弁。

 同社は昨年12月に適合性審査の申請を行い、規制委はこれまでに5回の審査会合を開いている。

 同社は当初、審査終了を今年11月、2020年12月には安全対策工事を完了し、21年度の運転開始を目指す方針を示していたが、1年以上の計画先送りが予測される。4日にも同町などに説明し、函館市にも状況を通達する見通し。

 また、特別委で政府はMOX燃料とウラン燃料の単価や、国内外でのMOX燃料の製造コストの違いに関して「各電力会社の競争上の問題で把握する立場にはない」と答弁。これに逢坂氏は「核燃料サイクルやプルサーマル計画という国家的プロジェクトでありながら、どのくらいの金がかかるかも政府が把握していないのはあまりにずさんで無責任だ」と指摘した。 (今井正一)