2016年1月15日 (金) 掲載

◎五稜郭支援学校、初の文科大臣表彰

 文部科学省がキャリア教育の充実発展に尽力した団体をたたえる本年度の文部科学大臣表彰に、函館五稜郭支援学校(赤松拓校長)が初めて選ばれた。学校と地域の両輪で生徒の「生きる力」を伸ばす教育が評価され、同校は「学校だけでなく、地域や就労先、卒業生など、みんなの力でつかんだ表彰」と喜んでいる。

 同校は2011年度、前身の五稜郭養護学校に軽度の知的障害を持つ生徒を受け入れる高等部を併設してスタート。専門教科「流通・サービス」を中心に、清掃技術などを身に付ける。1年次は窓拭きやモップがけなど清掃の基礎を学ぶ傍ら、町会の花壇整備で地域とのつながりを実感する。

 2~3年次は、週3回の企業内実習を交えた「五稜郭型デュアルシステム」により、五稜郭タワーや高齢者施設、町会館などで清掃に汗を流す。高等部主事の札内亮司教諭は「企業内実習は他校でも行っているが、週3回は全国的にみても多い。日常に根付いている」と説明する。

 生徒の自立を見据え、「分からない時に助けを求めるコミュニケーション能力が必要」と西牧孝徳教頭。実習中には、市民や観光客に話し掛けられることも多く、交流を通して社会性を育んでいる。

 成果は卒業後の進路に表れている。1、2期生計26人のうち、一般企業に就職した生徒は22人(84・6%)。道教委が掲げる目標35%を2年連続で大きく上回っている。赤松校長は「実習も就労も、受け入れ先の人情に助けられている。函館だからこそ残せる数字」とする。

 道内の表彰団体は倶知安高校と同校の2校のみ。また、同校は時事通信社教育奨励賞「努力賞」も受賞。赤松校長は「キャリア教育は『職業教育』ではなく、生きるための力を培うもの。障害を持つ生徒が函館で生きていけるような教育を今後も実践していく」と意気込んでいる。(稲船優香)



◎震度5弱 江差で水道管破裂 JR運休

 14日午後0時25分ごろ、日高管内の浦河沖を震源とする地震があり、函館市泊町と同市新浜町で震度5弱を観測した。気象庁によると地震の深さは約50キロで、地震の規模を示すマグニチュード(M)は6・7と推定される。この影響でJRは一時運転を見合わせたほか、震度3だった江差町では水道管が破裂したが同6時に復旧。同8時現在、けが人などの情報はない。

 地震発生に合わせて江差町水堀町では、電気店前の水道管に亀裂が入り、役場関係者が復旧作業に追われた。この影響で40世帯分が断水し、町は29世帯に給水をした。

 JR函館支社によると、函館―札幌間の特急4本が運休、午前10時36分函館発札幌行き特急北斗5号などで最大約3時間の遅れが出た。受験のためJRで来函した伊達市の高校3年生鈴木萌望(●めぐみ)さん(18)は「車内ではあまり揺れを感じなかったが、携帯のアラームが一斉に鳴って驚いた。15日が試験なので到着できて良かった」とほっとした様子。地震発生時、五稜郭タワーでは高さ約90メートルの展望台に観光客ら15人がいたが混乱はなかった。函館アリーナのメーンアリーナでも当時、市内の学童保育所の子どもたちによる「こま・けん玉教室」が開かれ、700人以上がいたが、大きな混乱はなかった。

 函館市は地域防災計画に基づき、地震発生直後に出張中の工藤寿樹市長に代わり、中林重雄副市長を本部長代理とする災害対策本部を設置。各部局に指示し、情報収集を進め、国や道などの関係機関と連絡を取った。特に揺れが大きかった東部4支所管内でも目立った被害は確認されず、消防本部にも地震に伴う通報がなかったことなどから、午後3時に同本部を廃止した。

 渡島総合振興局も地震発生直後、振興局長を本部長とする災害対策連絡本部を設置して対応。所轄する道道や2級河川をパトロールし、各市町から被害状況の確認をした。管内でけが人や建物などの被害はなく、同5時15分、本部を解散した。渡島・桧山管内の震度3以上の地域は次の通り。

 ▽震度5弱=函館市泊町、新浜町▽震度4=同市尾札部町、川汲町、鹿部町宮浜、森町砂原、知内町重内▽震度3=長万部町平里、同市美原、同市大森町、同市日ノ浜町、七飯町桜町、同町本町、森町御幸町、森町上台町、北斗市中央、同市本町、福島町福島、木古内町木古内、江差町姥神、同町中歌町、上ノ国町大留、厚沢部町木間内、同町新町、乙部町緑町、今金町今金



◎函館市の人口2862人減、昨年

 函館市の住民基本台帳に基づく2015年12月末の人口は26万8617人(外国人登録を含む)で、14年末と比較し、2862人の減少となった。14年の減少数3006人と比較し、減少幅はやや縮小したものの、2000人超が自然減少によるもので、人口減の傾向に歯止めが掛かっていない。地域の雇用や経済対策、子育て支援策の構築など総合的な減少抑制対策が求められている。

 昨年12月末現在の男性は12万2413人、女性は14万6204人。同3月に27万人を割り込み、26万人台後半で推移した。年齢構成別には、年少人口(0~14歳)は2万7569人で前年比616人の減少。生産年齢人口(15~64歳)は15万4933人で同4151人減少。老年人口(65歳以上)は8万6115人で1905人増加した。高齢化率は1・1ポイント増の32・1%だった。

 また、出生数は1632人で前年より微増となったが、死亡数は約100人増えて3721人。2089人の自然減となった。転入者は9470人、転出者は1万323人で、853人の社会減となったが減り幅は縮小した。

 市は昨年、市活性化総合戦略と人口ビジョンを策定。人口減少は織り込み済みだが、減少幅の抑制、交流人口の拡大によるにぎわいの維持に努めることなど各種施策や目標を定めた。

 市企画部新計画担当は「人口減少が進む中で街のにぎわいを失わないことが大切。新幹線開業が大きな契機となり、(交流人口拡大の)効果を未来につなぐ施策を展開していきたい」とする。さらに「進学などで市外に転居した若者たちが将来、函館に戻ってきたいと考えたときに、受け入れることができるまちづくりを進めていく」としている。(今井正一)


◎避難所情報をアプリで提供 函館市と三井住友海上など協定

 函館市は14日、三井住友海上火災保険(東京)、ファーストメディア(同)と避難所情報の提供に関する協定を締結した。両社が手掛ける無料アプリ「スマ保 災害時ナビ」に市内の避難所情報を随時提供。大規模災害発生時の市民や観光客の避難に役立ててもらう。

 「災害時ナビ」は三井住友海上が運営するスマホやタブレット端末で活用できる無料アプリで、ファースト社が運用を手掛ける。GPS(全地球測位システム)で現在地を把握。避難所を地図で探したり、カメラをかざすと最寄りの避難所の方角を表示したり、ルート案内も可能で、「夜間の災害で停電が起きた状態でも避難所の方向が分かる」とする。

 締結式には、三井住友海上の加藤豪士北海道支店長と中野渡和久函館支社長、ファースト社の山崎佳一社長が出席。市総務部の高橋良弘部長と協定書を交わした。既に全国12万件を超える避難所情報をデータ化しているが、市は市内300件以上の避難所に変更があった場合、随時、情報を提供する。

 言語は日本語のほか、英語、韓国語、中国語(繁体字、簡体字)に対応しているため、市内を訪れる外国人観光客に避難所情報を伝達する手段としての役割も期待される。今後、実際に災害が発生した際に開設中の避難所情報を表示する機能などを検討しているという。加藤支店長らは「旅行先で避難所の場所を知ることができる。今後も同様の協定を他の自治体とも交わしていきたい」と話している。(今井正一)