2016年1月20日 (水) 掲載

◎不審者から子ども守れ 市が暴力対策の出前講座実施

 昨年4月に市内で親子3人が車ではねられる殺人未遂事件が発生したのを受け、函館市は不審者などから子どもの身を守る方法を知ってもらおうと、保育園や幼稚園職員を対象とした暴力対策の出前講座を実施している。市子ども未来部子どもサービス課が護身術の実技指導や、将来的に暴力行為を起こさない子どもの育て方などを教え、幼児との関わりが深い保育士らのスキルアップに寄与している。

 同課は以前から各施設の研修会などに出向き、子育てに関する説明会などを開いている。昨年12月から施設側の依頼に応じ、護身術や不審者対策の専用器具の使い方などを教える実技指導を行う。講師は暴力防止に関する取り組みの経験がある、柴田成同課長が務める。

 市が出前講座に踏み切る契機となった昨年4月の事件では、富岡町の市道で、市内無職の男(起訴済み)の運転する軽乗用車が歩道の父親、長女、長男の親子3人をはねた後、親子を助けようとした市民に暴行を加えた。現場前の保育園に勤務する女性保育士は、長女を抱きかかえてかばい、園内に運んだ後、施錠するなどして保護した。

 講座を依頼する施設は増えており、15日には富岡町1の太陽の子幼稚園(芝西佳子園長)で実施。職員26人が参加し、室内外で不審者に遭遇した場合の対応の仕方や、柴田課長の実演による護身術などを学んだ。特徴的なのは実技を教えるだけでなく、人格形成に重要な幼児期からの適切な子育ての仕方を伝える点で、柴田課長は「子どもは愛され、ほめられて育つ。楽しみながら受講してもらい、護身術や子育てのポイントをしっかりと覚えてもらいたい」と説明する。

 芝西園長は「常々危機管理の意識は持っているが、新鮮な気持ちで受講できた。女性の多い職場だが、子育ての重要な役割である暴力対策の訓練を大事にしていきたい」と話していた。

 同課は本年度中も数件講座を予定しており、随時依頼を受け付けている。(蝦名達也)



◎青函圏周遊博総合ガイドブック発行

 函館、青森、弘前、八戸の青函4市でつくる青函圏観光都市会議は4月8日に開幕する周遊促進事業「青函圏周遊博」の総合ガイドブック春夏号を発行した。イベントアンバサダーを務める俳優の石原良純さんが青函圏の魅力を発信。4市を周遊するモデル観光コースを掲載した。

 北海道新幹線の開業で移動時間が短縮となる4市の観光振興につなげる周遊博は「ぐっとくる旅 青森・弘前・八戸・函館」をテーマに4月8日から来年2月28日まで開催する。

 ガイドブックは自然景観や祭り、グルメなどのテーマで4市の魅力をそれぞれ紹介。3つのモデルコースのうち、4泊5日の旅は、八戸市からスタートし、種差海岸(八戸)、三内丸山遺跡(青森)、ハイカラ洋館めぐり(弘前)、函館朝市(函館)などを網羅。観桜スポット、夏まつりをテーマとしたコース、周辺地域の見どころも掲載した。

 A4版フルカラー、18ページで10万部発行。17日まで東京ドームで開かれた「ふるさと祭り東京」で一部、配布した。今後、JR東日本・北海道のエリア内で配布する。開幕後は、特産品などが当たるスタンプラリーの開催やお得なクーポンの発行、首都圏発行の旅行誌上でのモニターツアー開催などを予定。5月にはガイドブックの秋冬号の発行も予定する。市観光推進課は「4市周遊の魅力をたっぷり掲載している。4市を巡る旅行の動機付けにしてもらいたい」としている。(今井正一)



◎低気圧で道南大荒れ 暴風雪、交通機関乱れ

 急速に発達した低気圧の影響で、道南地方は18日夜から19日朝にかけて暴風雪に見舞われ、函館市旧恵山町地域の海岸で高波が発生し、波にのまれるなど男女合わせて少なくとも6人がけがをした。松前町では強風で建物の屋根がはがれるなどの被害があったほか、除雪中に男性が屋根から転落する事故が起きた。いずれも命に別状はなかった。悪天候の影響で交通機関のダイヤが乱れた。20日も吹雪や大しけの見込みで函館地方気象台は警戒を呼び掛けている。

 函館地方気象台によると、19日未明に強風が吹き、最大瞬間風速は松前町で26・2メートル、木古内町で18・1メートル、江差で15・7メートルを記録。

 松前町内では旧大島中学校のトタン屋根の一部がはがれたほか、札前生活改善センターの窓ガラスが割れるなどの被害があった。屋根から転落した男性は73歳で、はしごに上り作業中、約3メートルの高さから落ちた。

 函館空港では除雪作業のため羽田、札幌方面の発着便を中心に計15本に最大約2時間の遅れが生じた。午後3時すぎには、ほぼ正常に戻った。津軽海峡フェリーは函館~大間間の全4便が欠航し、計40人に影響。函館~青森間は最大45分の遅れが出た。ハートランドフェリーは奥尻~江差間1往復便が運休し、約150人に、青函フェリーは函館~青森間の1往復便が運休し、輸送トラック約25台にそれぞれ影響が出た。

 JRも一部の列車に運休や遅れが生じた。江差線上磯駅~茂辺地駅間では午前8時半ごろ、函館発新青森行き特急スーパー白鳥16号が倒木と接触。車両点検し安全を確認、10分後に運転を再開した。このほか函館線、江差線で各2本が運休。特急白鳥93号など7本に最大4時間半の遅れが出て、計約800人に影響した。また越波で、国道278号函館市銚子町~同木直町間の約8キロが午前9時40分から通行止めとなったが、午後8時に解除された。

 道教委などによると、七飯町で小学校3校、中学校1校が、福島町の小中学校全3校が臨時休校の措置を取った。函館市では小学校1校と中学校2校が始業時間を1~3時間繰り下げ、小学校1校が下校時間を1時間繰り上げた。


◎大間原発差し止め訴訟 市、審理の継続求める

 【東京】函館市が国と電源開発を相手取り、大間原発(青森県大間町)の建設差し止めなどを求めた訴訟の第7回口頭弁論が19日、東京地裁(増田稔裁判長)で開かれた。国側が「現時点で大間原発の設置許可処分がされるかどうか分からない」として訴えの却下を求めているのに対し、市側は「原子力規制委員会の審査が一気に進む可能性がある」とし、審理を進めるよう求めた。

 市は、電源開発が2014年12月に行った原子炉設置許可変更申請を受けて訴えの内容を一部変更し、設置許可処分の無効確認を求めている。これに国は「規制委の審査が進んでいない状況からすれば、現時点で設置許可処分がされる蓋然(がいぜん)性(実現するか否かの確実性の度合い)は認められない」と主張している。

 市の弁護団は準備書面で「規制委は多数の原発の変更許可申請を、優先順位をつけて審査している」とし、その上で「大間原発の審査も優先度が上がれば一気に進む可能性がある」と指摘。

 加えて、九州電力川内原発1号機が許可処分から運転開始まで約11カ月、同2号機が約1年1カ月だったことを踏まえ「今後変更許可を得た原発は川内1、2号機よりもスムーズに手続きが進むであろうから、大幅に短期間で運転開始に至る可能性がある」とした。

 また、裁判が法律上の争訟(そうしょう)(当事者間の具体的な権利義務や法律関係の存否に関する紛争)に当たらないとする国に対し、市は沖縄県の辺野古基地移設問題を例に挙げて批判。井戸謙一弁護士は法廷で「埋め立て承認の取り消しは国しかできない。固有の資格に基づいて執行停止を申し立てており、辺野古での対応を維持するのであれば二枚舌だ」と述べた。

 一方、電源開発は原子炉設置変更許可申請に関する書面を提出し、安全確保の考え方を主張した。国は原発関連法規と新規制基準についての書面を提出した。次回は4月20日午後3時から同地裁で開かれる。(千葉卓陽)