2016年2月10日 (水) 掲載

◎新幹線、訓練中に停電 青函トンネル内で緊急停止

 【青森】3月26日の北海道新幹線開業を前に、JR北海道などが9日未明に青函トンネル(53・85キロ)で実施した避難訓練で、北海道新幹線H5系車両(10両編成)が竜飛定点(青森県外ヶ浜町)発車直後の午前2時50分ごろ停電し、緊急停車するトラブルが起きた。同社によると、送電の切り替え手順にミスがあったという。

 青函トンネル内で新幹線車両を使った救助訓練は初めてで、JR北海道やJR東日本の社員ほか、消防、警察、報道関係者ら約300人が乗車していた。

 停電は約5分間で復旧し、約20分現場に停車した後に運行を再開。奥津軽いまべつ駅に停車して安全点検を行い、新青森駅に予定より約40分遅れて到着した。けが人はなく、当日の在来線や貨物列車の運行にも影響はなかったという。

 訓練は新函館北斗駅を午前1時に発車した新幹線車両が青函トンネルを走行中、8号車で火災検知装置が作動したと想定。列車を竜飛定点に停車させ、JR北海道の社員が警察や消防と連携してけが人や車いす利用者を含む乗客役46人を、青森方向から来た新幹線救援列車に誘導した。

 救援列車は新青森駅に引き返すため、下り線を通常とは逆方向に動き出したが、間もなく停電が発生し、非常灯以外の車内の照明が消えて緊急停車した。JR北海道によると、北海道新幹線は4カ所の変電所から送電されており、列車を逆方向に進行させる際には変電所の切り替えを手動で行う必要があるが、新幹線運行管理センター(札幌)の担当者が操作を誤ったという。

 訓練に参加していたJR北海道の島田修社長は新青森駅で報道陣の取材に応じ、「不慣れな点があったためご迷惑、ご心配をお掛けして大変申し訳ない。教訓として生かし、無事安全に開業を迎えたい」と陳謝した。(金子真人)



「ガタン」突然の急停車 異常事態に車内緊迫

 【青森】JR北海道などが9日未明、青函トンネルで初めて北海道新幹線H5系車両を使って臨んだ避難訓練で、新青森駅に向かう救援列車が停電により約20分間立ち往生するトラブルが発生した。車内は緊迫感に包まれ、関係者が対応に追われた。開業まで残り45日に迫る中、緊急時の安全対策に課題を残す結果となった。

 「ガタン」。竜飛定点での訓練を終え、救援列車が新青森駅に引き返し始めた直後、突然の急ブレーキ。車掌の「列車が急に止まります。ご注意ください」とのアナウンスの後、緊急停車した。非常灯のみがともる車内では、乗り込んでいた報道関係者約60人が慌ただしく撮影を始め、「大丈夫か」「これも訓練なのか」と声を上げた。

 空調も同時に止まり、「室内温度の上昇が見込まれるため、上着は適宜脱いでください」とのアナウンスが流れた。停電は5分間。一旦復旧し、再び安全確認のため電源が落とされたほか、奥津軽いまべつ駅などで停車し、約40分遅れで新青森駅に到着した。

 JR北海道の島田修社長は同駅での閉会式後、報道陣の取材に陳謝し「不慣れだった」との言葉を何度も繰り返した。「全区間での逆方向運転は実施していたが、(今回のように)途中から引き返す訓練はできていなかった」とし、記者から「もう一度同じ内容の訓練をやる考えはあるか」と問われると「必要性があるかを検討しないと分からない」と話すにとどめた。

 昨年4月の特急スーパー白鳥の発煙トラブルで、約5時間半掛かったトンネルでの避難誘導を受け、マニュアルや設備、訓練の在り方を見直した後のトラブルだった。「対応の不備を整理し、安全に開業を迎えたい」と島田社長。青函トンネルでは今月、あと2回の訓練を予定しており、残された時間の中でどれだけ信頼を取り戻せるか、JR北の真価が問われている。(稲船優香)

 ◆問題一つ一つ解消を

 交通機関の安全運行管理に詳しい旧運輸省OB、今野修平さん(82)=東京都八王子市在住=の話

 新しい交通システムの開発・導入当初は、どうしてもトラブルが起こりやすい。運行の安定化には問題を一つ一つこなしていくしかないので、5分の停電という今回のトラブルはそれほど騒ぐ事態ではないとみている。ただ、今回を教訓に、JR北海道はあらゆる訓練を積み重ねる必要がある。



◎高卒就職内定率が好調

 今春卒業する道南の高校生の就職内定率が好調だ。函館公共職業安定所によると、昨年12月末時点で就職が決まった生徒の割合は、前年同期比3・3ポイント上昇の88・6%で過去最高を記録。3月の北海道新幹線開業をにらみ、観光関連の業種を中心に求人数が増加しているのが要因で、函館市内の高校で就職指導を行う担当者も「希望の職に就ける生徒が多く、例年よりマッチングがうまくいっている」と手応えをつかんでいる。

 地元企業への内定率は同5・2ポイント増の82・0%。同月として初めて80%を突破した。全体の業種別では、製造業が同8・7%増の213人で最多。卸売・小売業が139人で続き、宿泊・飲食サービス業は同63%増の119人と大幅に増加した。函館国際ホテルの佐藤則幸総務部長は「高卒者は昨年より5人以上多い15人程度を採用した。新幹線開業による需要増に対応したい」と話す。

 求人数は同17・7%増の1084人。リーマンショックの影響を受けた2009年と比較すると2・4倍に増加した。求人倍率は同0・14ポイント増の1・11倍だった。

 函館市内の高校の教諭は「新幹線の開業に向け、観光関係の仕事に就きたいという生徒が例年に比べ多い。今年は宿泊やサービスなど接客業の求人数が伸びており、例年より希望と合致する印象」と手応えを語る。

 別の高校の進路担当教諭は「地元の求人が増え、選択の幅が広がった。生徒には『今年はチャンス』と言い続けることができた」とし、「高校生が即戦力になれるよう、内定者に社会人としてのマナーを指導するなど、就職前に学校ができることに全力を注ぐ」としている。

 9日に同職安が市内のホテルで開いた今年3月卒業者対象の就職面接会(25社参加)は、同職安の予想を下回る13人しか参加しなかった。同職安の渡邉英行雇用開発部長は「参加者が少ないのは内定状況が良い結果と受け止めている。まだ決まっていない学生に対しては個別で対応し、一人でも多くの就職につなげていきたい」と話す。(山田大輔、稲船優香、金子真人)


◎本番間近、けいこに熱 14日に市民歌舞伎「初春巴港賑」

 函館の新春を彩る市民歌舞伎「第38回初春巴港賑(はつはるともえのにぎわい)」(実行委、市文化・スポーツ振興財団主催)が14日午後1時から、函館市民会館大ホールで開かれる。今回は歌舞伎俳優、大谷桂三さんの監修の下、「勧進帳~安宅親関の場」などを上演。本番に向けて出演者は熱のこもったけいこに励んでいる。

 今回の演目は「勧進帳―」のほか、「口上」「白浪五人男~稲瀬川勢揃いの場」。函館舞踊協会によるステージ「寿春巴初舞(ことほぐはるともえのまいぞめ)~春夏秋冬~」もある。

 「勧進帳―」は歌舞伎の中でも人気の高い演目で、源頼朝の怒りを買った源義経一行が、北陸を通って奥州へ逃げる際、加賀の国安宅の関での物語。武蔵坊弁慶を本間哲さん(函館市医師会長)、九郎判官源義経を菊地喜久さん(菊地喜久税理士事務所長)、富樫左衛門を実行委員長の今均さん(医療法人大夷会理事長)が演じる。

 大谷さんは1月31日に函館入り。けいこは毎回2~3時間に及び、出演者は大谷さんの細かい指導を受けながら演技力を高めている。

 特に発声に力を入れ、出演者はマイクを使わずにホール最後尾まで届く声量を心掛ける。大谷さんは「だんだん熱が入り、一体感が生まれてきている。お客さんを満足させる公演を」と出演者に期待を寄せる。

 今さんは「順調に進んでいる。全員が舞台でしっかり演技できるよう体調管理に気をつけていきたい」と本番に向け気を引き締めた。

 入場券2000円(税込み、全席自由)。同館や市内プレイガイドなどで発売中。問い合わせは同財団(☎0138・57・3111)へ。(鈴木 潤)