2016年3月12日 (土) 掲載

◎「足形・手形付土版」など国の重文に指定へ

 2011年の東日本大震災で被災した人、被災地から避難してきた人、支援に当たった人たち…。それぞれの立場で、この5年間の思いを語った。

 函館市豊原町の豊原4遺跡出土の「足形・手形付土版」をはじめとする考古資料70点が、国の重要文化財に指定される見通しとなった。全国的にも出土事例が少なく、縄文時代早期末の精神文化や葬祭儀礼の風習を研究する上で、大変貴重な資料として評価された。市内の重要文化財のうち、考古資料では2003年指定の「北海道志海苔中世遺構出土銭」に次いで2例目となる。

 国の文化審議会(宮田亮平会長)が11日、文化財分科会の審議、議決を経て、市の考古資料を重要文化財に指定するよう馳浩文部科学相に答申した。正式な指定は7~8月ごろとなる見込み。

 市教委によると、同遺跡は縄文前期後半から中期末(約5200~4000年前)ごろの集落跡。2000~01年の発掘調査で見つかった早期末(約6500年前)の土坑墓2基から土版5点が出土された。

 長さ21・6センチ、幅14・1センチのものを含む土版は、国内類似土製品の中でも最大。片面または両面に幼児や子どもの足・手形が付けられている。墓に副葬された目的については諸説あるが、市教委は「足形などがきれいに付いていることから、亡くなった子どもの形見として保管されたと推測される」とする。

 縄文早期末の土版は道央の3地域で数点出土している程度で、函館に集中的に分布。東北地方などでは縄文後期の形が異なるものしか見つかっておらず、早期末特有の考古資料として極めて価値が高い。

 土版と合わせて出土した石器類は、副葬品と考えられるつまみ付きナイフが46点、磨製石斧3点などで、一括資料として指定される。これらは14年に市指定有形文化財に指定されている。

 答申の知らせを受け、山本真也教育長は「足形・手形付土製品は命や親子の絆を強く感じさせる、時空を超えた現代社会に対する大切なメッセージだと考える。文化財を生かしたまちづくりを推進するため、さらに取り組んでいきたい」とのコメントを発表した。

 資料は東京国立博物館でのお披露目が終わった後に市に返還される。5月下旬以降、土版5点をはじめ、石器類の一部を市縄文文化交流センター(臼尻町)で常設展示する見通しで、同センターの佐藤安浩館長は「北海道新幹線開業によって本州の方々もセンターに立ち寄りやすくなる。ぜひ本物の資料を見て、当時の精神性などを感じてもらいたい」と話している。(蝦名達也)



◎震災5年、祈りの一日

 あの日を忘れない―。2011年3月11日に発生した東日本大震災は、11日で丸5年を迎えた。津波の被害に遭った函館市内でも、震災を風化させまいとさまざまな取り組みが行われ、市民らが犠牲者の冥福を祈って静かに手を合わせ、自然災害への備えをあらためて確認した。



◎災害時はヘリが「有効」

 市立函館病院(木村純院長)で11日、「第4回市立函館病院災害勉強会」が開かれた。医療従事者ら100人以上が参加、昨年2月に道南ドクターヘリが導入されたことから、今回「災害とヘリ搬送」をテーマに、いざという時に備えて医療体制の在り方などを確認した。

 東日本大震災の経験を踏まえ、医療機関同士の連携体制の見直しや地域全体で整備すべきことなど、関係者の情報共有を目的に、毎年この日に開催している。

 手稲渓仁会病院(札幌市)救命救急センター長の奈良理さんは、東日本大震災の際のドクターヘリ運用の課題として①所属の域を超えて出動する根拠がなかった②被災地に参集する際のルールがなかった―などを紹介。また、局地的な災害の際も防災や道警ヘリなど複数機が出動した時の対応について「道内での大災害発生時に備え、道内4基地病院のヘリ同士の動きについて協議したり、他機関との調整も必要となる」と強調した。

 市立函病救命救急センター長の武山佳洋さんは、昨年6月に木古内町で発生した多数傷病者事故に触れ、「現場のマネジメントや病院の対応能力はだんだん向上している。ヘリは災害時の交通インフラ途絶時には特に有効で、ヘリ搬送を地域の災害医療体制に違和感なく組み入れていきたい」と述べた。(蝦名達也)


◎雨でも快適に函館観光を

 市や函館商工会議所などでつくる北海道新幹線新函館開業対策推進機構は、開業日の26日から傘の無料レンタルサービスを始める。新幹線開業で増加する観光客へのおもてなし向上を図るのが狙いだ。

 同会議所の「はこだてスマイル&ウェルカムキャンペーン」の一環。JR函館・五稜郭両駅や函館空港など市内の交通拠点6施設10カ所に専用の傘立てを設置する。合計で約800本配置する傘には、「函」の字を顔に見立てた市のロゴマークのシールを貼付。サービスを説明するパネルは英語や中国語など4カ国語で表記し、外国人観光客にも対応する。

 サービスは来年3月末までの予定。登録不要。市民・観光客問わず利用可能で、返却は貸出場所と異なっても構わない。同機構は「急な雨の日でも快適に函館観光を楽しんでもらえれば」としている。(山田大輔)