2016年3月25日 (金) 掲載

◎あす開業 歓迎一色

 函館の玄関口となるJR函館駅改札前では、色とりどりの花で飾る「はこだて桜タワー」の制作が進められている。24日には国際的な活躍で知られる庭園デザイナーの石原和幸さんが現場入り。新幹線で結ばれる全国各地のサクラをはじめとする草花で、春満開の華やかな空間をつくり出す。

 函館市などでつくる開業記念イベント実行委の事業。オブジェはコンコースの柱を利用し、高さ約6メートル。東北から九州まで新幹線が走る地域からサクラの枝を集め、地元函館のサクラも加わるほか、ツバキやコデマリ、カスミソウ、シダレヤナギなども彩る。

 石原さんは、駅構内を歩く人の動線や視点を意識し、どの角度から眺めても美しくなるよう、花の配置について指示を出した。周辺には花の甘い香りが漂い、作業を見守る駅利用者にも笑顔が広がった。石原さんは「北海道では1カ月ほど早いと思うが、サクラを見て春が来たなと明るい気持ちになってほしい」と話している。

 サクラは開業日に満開に近い状態になるという。オブジェは25日に完成し、4月10日まで設置する。(今井正一)



◎花の駅長 お疲れ様でした

 【木古内】北海道新幹線開業に伴い、江差線五稜郭―木古内間はJR北海道から第三セクター「道南いさりび鉄道」に引き継がれる。同線の木古内町にある泉沢駅で長年、「花の駅長」として愛されてきた山本金次郎さん(90)が25日で引退する。「65年、良い鉄道人生だったよ」と語り、感慨深い表情を見せている。

 山本さんは上ノ国町出身。出兵や漁師などを経て、23歳で旧国鉄に就職した。五稜郭駅では信号機の管理を行い、泉沢駅助役を最後に56歳で退職。1年半後の1982年12月1日からは、旧国鉄から委託されて無人駅と化した同駅の管理や切符販売を現在まで続けてきた。「自分に指名がかかったときはうれしかったね。役場や地元自治体、利用客にサービスを喜んでもらえたようで」とほほ笑む。  午前7時から高校生ら数人の客を見送り、同10時まで駅舎に駐在する日課も、4年前までは妻エキさん(享年85)と一緒だった。「おしゃべり好きで、いたずらをする子どもには厳しく叱り、次の日には優しい言葉をかけた。よく近隣の子どもから『ばあちゃん』と呼ばれて好かれてたよ。切符を売るのを手伝ってくれてね」と懐かしむ。「仲間たちからは、『山本さんは泉沢の〝エキ〟を2つ守ってるよな』って言われたんだ」。

 「花の駅長さん」。同駅の乗降場近くに色とりどりの花を育てたことから、こんな愛称で呼ばれるようになった。チューリップやアジサイなど、多彩な花が季節ごとに咲き誇る駅として口コミが広がった。「花をみていやな気分になる人はいないだろうさ。評判が良かったみたいで、いつしかあだ名がついた」とにっこり。車窓を開け、花を眺めて手を振ってくれる人に、大きく振り返した場面は数知れず。「『きれいな花。手入れをしっかりしてるんですね』って褒められると、大切にしようって思えたんだ」

 いさりび鉄道開業日からは、旧国鉄OBで泉沢在住の吉田進さん(78)が受け継ぐ。「ここに勤めてから問題は起きず、責任を果たせて本当に幸せだった」と山本さん。最終列車を見送る時を、静かに待っている。(斎藤彩伽)



◎迫力の藤城線走行 下りの列車、25日で最後

 【七飯】北海道新幹線開業に伴うダイヤ改正で、JR函館線を走る特急「スーパー北斗」「北斗」(函館-札幌)はすべて新函館北斗駅に停車する。このため、函館発の下り列車が七飯-大沼間の藤城線(通称)を走る姿は、25日が最後となる。

 函館線は明治時代に開業。当時は七飯から渡島大野、仁山を経由していたが、仁山付近は急こう配のため、1966年10月に勾配が緩やかな藤城線が開通した。七飯駅から高架橋で七飯町本町付近を通る。函館-札幌の特急列車は、下りが藤城線経由、上りが仁山経由となっている。

 JR北海道は北海道新幹線の乗り継ぎを便利にするため「スーパー北斗」などはすべて新函館北斗駅停車に変更する。これまで親しまれた「渡島大野駅」の名称は25日までで、26日から新函館北斗駅となる。(山崎純一)


◎新幹線開業日に道南博物館マップ配布

 道南ブロック博物館施設等連絡協議会は北海道新幹線開業に合わせ、渡島・桧山管内の博物館や資料館などの情報を紹介する「道南博物館マップ」を作成した。開業日の26日から、掲載された29施設と新函館北斗駅、函館駅の観光案内所で配布。レンタカーなどを使って道南圏を周遊する観光客や、博物館などにあまり足を運んでこなかった地元住民の集客に活用したい考えだ。

 同様のマップは1998年に1度作成。配布当時は学校の夏休み時期と重なったこともあり、お盆明けには多くの館で在庫切れになったという。今回は5年ほどの作成期間を経て、新幹線開業に合わせて完成した。

 マップでは博物館をはじめ、各地の資料館や郷土館などを取り上げ、館の写真とアクセスマップを掲載。館ごとに開館時間や展示資料の内容、温泉や公園などの周辺のお薦めスポットも載せている。また、地図上には「考古」「アイヌ」「自然」といったアイコンのイラストを記し、一目でおおまかな展示資料の種類を確認できるようにしている。

 市立函館博物館など29の博物館施設に各2000部、駅には500部ほどが並ぶ。マップ表面は開業PRキャラクター「どこでもユキちゃん」のイラストとH5系車両と同様の緑、ラベンダー色が特徴的。このほかスマートフォンで読み込むQRコードも掲示し、詳しい地図を検索できる。

 同協議会事務局の同館は「それぞれの館が持つ素晴らしい資料を見に行ってもらうきっかけとして、道内外の多くの人に利用してもらいたい」としている。(蝦名達也)