2016年3月27日 (日) 掲載

◎北海道新幹線開業 道民の夢出発

 【北斗】新函館北斗駅の開業式典は、石井啓一国交相や高橋はるみ知事、JR北海道の島田修社長ら約100人が出席して行われた。

 北斗大野中学校吹奏楽部約20人による記念演奏に続き、島田社長が「多くの方々の熱意と努力により、この日を迎えられた。感謝を胸に刻み、新幹線時代のスタートを切りたい」とあいさつ。石井国交相は「地元の真剣な取り組みが実を結び、北の大地まで新幹線がつながった。今後は札幌延伸を着実に推進したい」と述べた。

 また、高橋知事は「一番列車の発車ベルがいよいよ鳴り響く。道民の夢だった新幹線を最大限に活用し、北海道の活性化に取り組むという新たな挑戦がこれから始まる」と語った。

 その後、2階コンコースから、上り列車が発車する11番ホームに場所を移し、テープカットやくす玉割りを実施。鳴海正駅長の合図で東京行き一番列車「はやぶさ10号」が定刻通り午前6時35分に出発すると、見物客から拍手が沸き起こった。

 上りの初便はJR北海道が投入した新型車両「H5系」(10両編成)で運行。731席の座席は、販売開始後約25秒で完売となっていた。


◎夢の瞬間 思い万感

 北海道の新たな陸の玄関口となる新函館北斗駅や函館駅では26日、一番列車の出発式典や記念イベントが盛大に催され、歴史的な一日を喜び合った。長年待ち望んだ〝夢の瞬間〟を目に焼き付けた乗客や道民には、笑顔と感動が広がった。

 新函館北斗駅は、早朝から乗降客で混雑。「はやぶさ12号」で新青森に向かう十勝管内芽室町の遠国健琉(たける)君(7)は「新幹線の色が大好き。乗るのが楽しみ」と声を弾ませた。

 新青森発の下り一番列車で到着した東京都町田市の会社員桜田崇史さん(47)は「新時代の幕開けを感じさせる雰囲気。本州から最初に青函トンネルを通れて良かった」と感慨深げ。東京発の「はやぶさ1号」を利用した愛知県の会社員和田光徳さん(54)は「4時間はあっという間だったが、青函トンネル内も260キロで走ってほしい」と話した。

 一方、市民は歓迎ムード一色に染まった。北斗市向野の森直子さん(36)は「観光客が増え、北斗市が活気づいてくれれば」。息子の一翔君(8)と娘の乃々佳ちゃん(5)、一翔君の友人の吉田睦輝君(8)は「新幹線で東京スカイツリーを見に行きたい」と笑顔を浮かべた。

 函館市の会社役員大西剛さん(56)は入場券を購入し、ホームで新幹線を見詰めた。「みんなが喜んで旗を振っていた。穏やかな開業だ」とほほ笑んだ。

 喜びの声は函館駅前でも。青森県弘前市の公務員太田道宏さん(42)は、新青森から盛岡発の「はやて93号」に妻と乗車。はこだてライナーを乗り継ぎ、駅前を訪れた。「あっという間に着きました。今日はホームでも歓迎があってうれしかった。明日は鹿部町に行ってみます」と話していた。

 函館北昭和小学校6年の筒井恵祐君(12)は、はこだてライナー、新幹線上り一番列車、道南いさりび鉄道を乗り継いで、午前のうちに函館駅発着の〝道南旅行〟を成功させた。「新幹線はやっぱり速い。列車が大好きで、これからの撮影も楽しみ」と目を輝かせていた。「青春18きっぷ」のオプション券で道南いさりび鉄道木古内―五稜郭を利用した八雲町の会社員野本武志さん(45)は「乗り継ぎ時間の制約があるものの、ゆったりした旅なら楽しめる」と話した。(稲船優香、山田大輔、今井正一、蝦名達也、小杉貴洋)


◎いさりび鉄道 発進

 北海道新幹線開業に伴い、江差線五稜郭―木古内間37・8キロはJR北海道から第三セクター「道南いさりび鉄道」(函館、小上一郎社長)に経営が引き継がれた。沿線住民の生活の足を守るとともに、北海道と本州を結ぶ物流の大動脈でもある重要な路線。道南の鉄路新時代の幕が開けた。

 26日、JR函館駅ホームで出発式があり、約90人が出席。JR北の島田修社長が「安全で、地域に愛されるように、JRとしても最大限の努力をしたい」とあいさつ。小上社長が「安全を第一に、魅力あふれる鉄道づくりを目指し一生懸命頑張る」と決意を込めた。石井啓一国交相、高橋はるみ知事が来賓祝辞を述べ、高橋知事は「函館山や津軽海峡の景色を見ながら、ゆっくり旅を楽しんでもらうことが可能」と観光需要にも期待を寄せた。

 石井国交相、高橋知事、島田社長、小上社長がテープカット、くす玉も開放して開業を祝った。  午前11時53分に函館―新函館北斗のアクセス列車「はこだてライナー」の出発を見送り、正午にいさりび鉄道の上磯行き「ながまれ号」の初々しい車両を送り出した。

 江差線は2014年5月に木古内―江差間が廃止されており、今回の経営移管で江差線の運行は終了した。(山崎大和)



◎道南お祝いムード一色 高校生活躍 イベント盛況

 函館市の開業記念イベント「つながるニッポンまつり」が、JR函館駅前特設会場で行われた。会場にはさまざまなグルメが並び、ステージでは全国各地のPRイベントが行われ、終日、にぎわいをみせた。会場では市内高校生もさまざまな活躍をみせ、函館の元気を届けた。

 市立函館、函館中部、函館西の3高校の書道部員は会場ステージで書道パフォーマンスを披露。H5系カラーに塗られた大きな書道用紙に「Welcome Back To Ocean Blue」「生まれ変わる想い出を連れて」などGLAYの「Supernova Express 2016」に合わせて歌詞の一節を力強く書き上げた。ひたむきな部員たちの姿に、観客は手拍子で盛り上げていた。

 地元の名店が参加した「はこだて食堂」では、大妻高校食物健康科の調理クラブが参加。知内産のニラや木古内産のはこだて和牛など道南食材にこだわったビビンバなどを販売。澤村きららさん(17)は「辛味がある中にすり下ろしたリンゴの甘みがおいしい。道産食材をアピールしたい」と接客に力を注いだ。

 駅周辺では遺愛女子高校英語科の有志が出迎え役を務めた。記念撮影に使用できる新幹線型の顔はめパネルなどを手に観光客を歓迎した。菊池永理乃さん(17)と宿村茉那さん(17)は「新幹線が来ることでもっと函館がにぎやかになってほしい。今日は積極的に話しかけていきたい」と話していた。(今井正一)