2016年3月28日 (月) 掲載

◎新駅から「遠い函館」試練の2次交通

 【北斗】北海道新幹線開業から2日目を迎えた27日も、新函館北斗駅は大勢の旅行客で混雑した。同駅と函館市内を結ぶ2次交通をめぐり、開業日に函館市内に宿泊し、この日に本州へ帰るという旅行客からは「スムーズだった」「移動時間がこんなにかかるとは」などさまざまな声が上がった。

 旅行客の中で最も需要が多かったのは、新函館北斗―函館間(17・9キロ)を最短15分で結ぶアクセス列車「はこだてライナー」。開業日の26日は臨時便を含め同区間を39本の列車が運行、27日も定員(3両)439人の車内には多くの乗客の姿があった。

 家族と函館市内のホテルに1泊し、この日「はやぶさ24号」で仙台に戻るという早川一樹さん(36)は「時間は気にならなかったが、はこだてライナーは往復で座れず子どもが辛そうだった」と話す。

 三重県から妻と旅行で訪れた永井伸介さん(58)は「新函館北斗駅と函館市内がこんなに離れているとは思わなかった。札幌延伸になれば、函館が取り残されるのではと、よそ者ながら心配です」と複雑な表情で話していた。

 一方、同駅発の路線バスの利用者は低調。バスターミナルでは、函館駅までバスの所要時間が1時間と知り、乗車をあきらめる観光客の姿が何人も見受けられた。新幹線開業に合わせ、函館空港に向かう路線を新設した函館タクシーによると、1本あたりの平均利用者は5~10人にとどまったという。

 宿泊地の湯の川温泉からバスで同駅に戻り、新幹線で友人と東京に帰る秦真理子さん(28)は「ホテルで新函館北斗駅行きのバスがあることを知った。時間はかかったけど、荷物が多かったので乗り換えがないのは良かったです」と話していた。(山田大輔)


◎木古内の道の駅 7万人目は新幹線利用者

 【木古内】北海道新幹線木古内駅近くにある町観光交流センター、道の駅「みそぎの郷きこない」(浅利文博センター長)の来場者が27日、7万人を達成した。16日に5万人を記録したばかりで、11日間で2万人が来館。新幹線開業という世紀の事業から一日明け、町は開業効果を実感している。

 同施設は渡島西部・桧山南部9町の広域観光の拠点として今年1月にオープン。各町の特産品や、世界の料理人1000人に選ばれた奥田政行シェフが監修を務める、イタリアンレストラン「どうなんデス」があり、人気を集めている。

 この日の午後1時半ごろ、大森伊佐緒町長や同施設運営法人の北島孝雄理事長、浅利センター長らが歓迎する中、7万人目が来館。館内アナウンスが節目の来場者達成を告げると、拍手が起こった。

 幸福を手にしたのは、愛知県在住で、開業日に東京発の一番列車「はやぶさ1号」に乗車したという会社員の伊藤宏紀さん(27)。大森町長らから町特産品の詰め合わせセットを受け取り、「ただただ驚き、一生の思い出になった。新幹線の乗り心地も良く、道南観光も楽しめた。いさりび鉄道も体験します」と笑顔で話した。(斎藤彩伽)


◎新幹線見学の券求め長い列

 【北斗】新函館北斗駅では26、27の両日、入場券を購入しホームで新幹線を見学しようと大勢が訪れた。JR北海道によると、26日は約1万1000枚が売れたといい、27日も臨時販売所の前では長い列ができた。

 両日に売り出された入場券は、紙が厚く、昔ながらの硬券の切符。新幹線開業を記念して企画されたもので、新函館北斗駅の入場券には、北海道新幹線車両「H5系」と、新函館北斗―函館間を結ぶアクセス列車「はこだてライナー」をデザインしている。

 27日、入場券で改札を通り、家族と新幹線の写真を撮影した七飯町の鈴木祐一郎さん(35)は「子どもが新幹線を見たいというので来ましたが、旅行に行きたい気分になりました」と笑顔で話していた。

 同様の入場券は木古内駅でも発売され、約4200枚が売れたという。硬券の入場券の販売は27日までで。28日以降は通常の切符に戻る。(山田大輔)



◎新幹線開業で函館に熱視線

 待望の北海道新幹線が開業し、函館から本州への移動時間が大幅に短縮された。函館市は交流人口の拡大を掲げ、東北、北関東との連携を重要視する。新幹線開業に沸き立つ函館を軸に、新たな観光ルートの模索や相互交流の促進に向けた動きが始まっている。

 JR函館駅前特設会場で行われた開業記念イベント「つながるニッポン祭り」では、国内各地から観光PRブースの出展があった。秋田県北部の大館市は、市職員らがPR活動を展開した。忠犬ハチ公のキャラクター「はちくん」のTシャツ姿で会場に立った福原淳嗣市長は「大館の子どもたちは修学旅行で必ず函館を訪れている。函館・大館・角館(県仙北市)の3つの『だて』で広域ルートを構築したい」と話した。

 田沢湖・角館観光連盟(仙北市)の佐藤和志会長も新幹線の函館延伸効果を期待し「函館を訪れた帰り道に秋田を回ってもらえるようになれば」と話す。台湾や韓国の観光客にも人気を集めるJR秋田内陸線、観光列車「リゾートしらかみ」、盛岡経由の秋田新幹線乗車など旅のスタイルに合わせた多彩な選択を提案。函館との連携でインバウンド客の増加も図りたい考えだ。

 一方、北海道新幹線の宇都宮駅停車を求める活動で市や市議会、経済界同士が連携を構築してきた栃木県宇都宮市。「はやぶさ」停車は実現しなかったが、今回のダイヤ改正で仙台駅での乗り換え利便性が向上した。同市の佐藤栄一市長は双方向の交流活発化を期待し、「5月には栃木県内の町村会、来年は市長会が函館を訪れる。これまでの関係を双方が生かして、官民交流を進めていきたい」と話していた。(今井正一)