2016年3月31日 (木) 掲載

◎福祉コミュニティエリア整備、善智寿会代表のグループに決定

 函館市は30日、日吉町4丁目市営住宅団地跡地に計画する福祉コミュニティエリア整備のプロポーザル(提案型公募)の結果、事業者に代表法人の医療法人社団善智寿会(柏木町、飯田善樹理事長)と11社で構成するグループに決まったと発表した。エリア名は「函館日吉コミュニティエリア」、愛称を「コンテ日吉」とする。住人が自分らしく暮らし、互いに支え合う地域づくりをコンセプトに、民間ノウハウを活用した新たなまちづくりが期待される。

 同エリアの総面積は取得予定地を含め、約6・7万平方メートル。子どもからお年寄りまで障害の有無に関わらず、互いに支え合い、地域包括ケアシステムの構築を目指すための提案を募集。2月に公募を締め切り、4グループが参加を申し込んでいた。

 28日に学識経験者と市職員による第二次選定を実施。500点満点中300点以上を市への推薦対象とし、同グループの提案が最高の419・7点を獲得、工藤寿樹市長に推薦した。

 グループのうち、10社が地元事業者。敷地内の中心部に就労支援やキッチンスタジオなどを持つ多世代交流センターを配置するほか、内科や調剤薬局などの機能が入る「メディカルモール」を設け、集合住宅と遊歩道で行き来できる。介護施設は特別養護老人ホームや認知症高齢者グループホームなど6施設、計223床が整備される。

 住まいは子育て世帯をターゲットに84区画、250人分。高齢世帯を対象に14戸、24人分を開発。物販店舗やコンビニなど、生活利便施設の誘致も進める。

 同グループは、今回の事業評価で最も配点の高かった、同システム構築のためのソフト事業で最高点を獲得。年中無休24時間体制の医療・看護サービスを提供するほか、エリア内に整備するスポーツクラブと連携し、健康増進を図るメニューの実現などを打ち出している。ソフト事業の運営形態はグループ内の事業者と地域の町会、周辺教育機関、NPO法人などが連携して担う。

 また、国の「生涯活躍のまち」(日本版CCRC)構想の取り組みとして、函館観光を兼ねた移住体験ツアーを企画。参加者に数日滞在してもらうなどし、2019年度までに市外から50人の移住を目標に掲げる。

 7月に市と事業協定を結び、9月に土地売買本契約などを行う見通し。開発は10月ごろから5年以内に終了。市保健福祉部の藤田秀樹部長は「地域包括ケアシステム構築のモデル地区として整備し、地域全体に波及できるような事業を展開してほしい」と話している。(蝦名達也)


◎起業家甲子園 未来大・函中部高チーム最高賞

 全国から選抜された学生らがビジネスプランを競い合う「起業家甲子園」(総務省など主催)で、公立はこだて未来大学の学生や函館中部高校の生徒でつくる「Code for Hakodate(コード・フォー・ハコダテ)」が最高賞の総務大臣賞を受賞した。

 メンバーは、代表で中部高の杉本涼さん(1年)と、未来大の工藤卓也(修士1年)さん、兵藤允彦さん(同)、前田実優さん(修士2年)の計4人。

 起業家甲子園は今月8日にコクヨホール(東京)で11チームが参加して行われ、コード・フォー・ハコダテは本道代表として出場した。

 同チームは、時刻表や路線、運賃など公共交通機関のあらゆる情報を取得するためのプラットフォームをつくり、これを基にアプリケーションを開発できるよう提供するビジネスプランを提案。バスに登載する機械を開発、その後市内のバス会社の協力で実証実験を行い、データの公開を実現させた。

 公共交通の遅延情報を知るのに苦労したという杉本さんが、運行時刻や位置情報などを閲覧するアプリケーションを作ろうとしたのをきっかけにプランの開発を進めてきた。今回の受賞に、メンバーは「私たちの取り組みが世の中に認められたことが何よりもうれしい。函館市に普及させ、さらに全国へも広めていきたい」としている。(鈴木 潤)


◎函病、TAVI1例目成功

 市立函館病院(木村純院長)は、心臓の大動脈弁が硬くなり開きにくくなる「大動脈弁狭窄(きょうさく)症」の最新の手術法である「経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)」を道南で初めて実施し、成功した。開胸手術ではないため、体力の衰えた高齢者など、これまで外科手術による治療を受けられなかった人の尊い命を救うことが可能となった。

 この症状は心臓弁膜症の一つで、大動脈弁の開きが悪くなり血液の流れが妨げられる。症状が現れるまでは健康な状態だが、狭心症や心不全の出現後に手術をしないと、2年間の間に半分の患者が死亡すると言われている。重度の患者には心臓を止めての開胸手術が行われているが、高齢者や他の疾病を抱えるなどして、少なくとも3割以上の人が手術をできない状態だった。

 TAVIは、太ももの付け根を切開し、血管からカテーテル(細い管状の医療器具)を使って心臓に生体弁を進め、留置する。従前もバルーンを同じように進めて弁を広げる方法があったが、効果は一時的で再び手術を受けなければ予後が改善しなかった。

 同院は3年前からTAVIの実施に向け準備を進めてきた。循環器内科医や心臓血管外科医など垣根を越えた心臓治療のプロ集団「ハートチーム」の結成や、最新の医療技術に対応でき、清潔な環境を備えた「ハイブリッド手術室」を整備。昨年11月、道南初となるTAVI実施施設の認可を受けた。

 1例目の手術を受けた湯川町の櫛引春江さん(86)は、初めて1月に急性心不全で同院へ救急搬送された。外科手術による死亡リスクが高く、バルーンでの手術を行い一度退院。ただ予後を考えTAVIを受けることを決断し、今月24日に20人以上のスタッフとともに手術に臨んだ。

 術後の体調は安定しており、2週間ほどで退院できる見通し。櫛引さんは「珍しい手術だと聞いたが、先生方のおかげでとても楽になった。私と同じような人たちに元気だよと伝えたい」と笑顔を見せた。ハートチームのリーダーで、循環器内科の蒔田泰宏科長は「これまで手術を受けられず、経過を診ることしかできなかった患者さんを助けられるようになった。高齢化とともに患者の増加が見込まれ、将来的には治療の主流がTAVIに置き換わるかもしれない」と期待を込める。(蝦名達也)



◎市電・函バスのICカード、西鉄の全国相互システム活用

 函館市企業局は、市電と函館バスで導入する交通系ICカードシステム導入業務の委託先候補に「にしてつグループ交通系ICカードシステム導入業務連合体」を選定したと発表した。「全国相互10カード」に対応し、九州の交通事業者で導入している「nimoca(ニモカ)」のシステムが採用されることになった。新たにカードを取得する市民や、10カードを持つ観光客ら双方に利便性が高く、2017年3月末までのサービス開始を目指す。

 同連合体は、福岡県に本社を置く大手私鉄「西日本鉄道」のグループ会社4社で構成し、代表法人は「株式会社ニモカ」。市企業局と函館バスが合同で1月に募集を開始したプロポーザルには同連合体など2者の参加があり、今月22日の審査委員会で同連合体を候補事業者に選定した。

 プロポーザルでは、JR東日本の「suica(スイカ)」に代表される全国の大手鉄道事業者間で相互利用が可能な方式か、10カード所持者の市電・バス利用を可能とする「片利用方式」での提案を求めていた。

 「ニモカ」は西鉄をはじめ、九州各地の鉄道・軌道・バス事業者で導入されている。函館で今後発行されるカードは、例えば東京都内のJRや私鉄でも利用可能となる。渡島・桧山管内約270カ所のコンビニやドラッグストア、スーパーなどでICカードへの入金(チャージ)可能な環境も評価された。

 今後、5月下旬の正式契約締結に向けた協議と、国への補助金申請を進め、車載機器整備など17年3月末までの運用開始を目指す。17年度には定期券サービスを導入する。同局経営企画課は「利便性が高く、市民にも幅広く利用してもらえるカードとしたい」としている。(今井正一)