2016年4月21日 (木) 掲載

◎函本に初の女性白バイ隊員 北斗出身の月館さん

 悲惨な事故を一つでも無くしたい―。道警函館方面本部函館機動警察隊白バイ小隊に、北斗市七重浜出身の月館由佳(よしか)巡査長(27)が1日付で着任した。女性の白バイ隊員が道警本部(札幌)以外に配属されるのは初めて。訓練で治安維持に励む真摯(しんし)な姿が評価された。本格的な交通取り締まり業務も本年度からで「古里での任務は光栄。一層の交通安全のために尽力したい」と意気込んでいる。

 月館さんは、旧函館北高校(現市立函館高校)最後の卒業生で、2007年に道警入り。中学生のときに箱根駅伝の白バイの先導姿に目を奪われ「かっこいいと憧れて警察官を志した」という。

 札幌で交番勤務や広報活動のカラーガード隊、交通機動隊を経て、12年4月から白バイ隊員に。男性との体力差を補うための走り込みや筋トレのほか、休日も自主訓練を重ねた。午前3時半ごろからの朝練習など「家に帰るのは寝るためだけだった」と振り返る。

 1300ccの白バイは総重量300キロ。猛訓練での転倒による手足のすり傷やあざなどは〝勲章〟で、「自分の命を守れないと誰かの命を救うこともできない」と歯を食いしばってきた。「一度覚悟を決めたら最後まであきらめるな」という両親の言葉も心の支えになり、13年から3年連続で「全国白バイ安全運転競技大会」に道警代表で出場した。

 昨年は女性白バイ隊員として初めて北海道マラソンの先導も務めた。危険を伴う任務を心配する両親を気遣い「テレビで自分の姿を見てもらえて、少しは安心してもらえたかな」と優しい表情を浮かべる。

 着任早々、函館市内の啓発活動で新入学児童の交通安全を見守った。函館機動警察隊の箱崎和好副隊長は「治安維持はもちろん、警察官を目指す子どもや学生らの憧れの的にもなってもらいたい」と期待している。(田中陽介)  



◎北斗で紫アスパラ収穫進む

 【北斗】道南でも栽培が珍しい紫アスパラガスの収穫が、北斗市細入のハウス内で進んでいる。太くて色鮮やかなアスパラが、ニョキニョキと地面から顔を出している。

 NPO法人ソーシャル・エイジェンシー協議会(函館、榊清市代表理事)が、ハウス2棟と露地で2500株を育てる。3月下旬に収穫を始め、現在は1日に5キロ、5月に入ると10キロを収穫でき、10月末まで続く。今年は太いサイズが多いという。

 自家製堆肥(特殊肥料)を使った土づくりに力を入れ、農薬や化学肥料を使わずに栽培。栄養剤と害虫予防のため、EM菌(微生物)も散布。有機JAS認証を受けている。

 紫アスパラは、抗酸化作用があるアントシアニンが通常のグリーン種に比べ10倍多く含むとされる。あくがほとんどなく、甘みが強いため生のまま食べられる。熱を通す場合は、短時間で処理すると、色や栄養分を保てる。

 榊さん(76)は「北海道新幹線開業に合わせ、紫アスパラを使った弁当やスムージーの商品開発を進めたい」と意気込む。あぐりへい屋(東前62)や地元スーパーで販売している。問い合わせは榊さん(TEL090・3773・3003)へ。(山崎大和)



◎新規制基準は不合理、大間差し止め訴訟で函館市

 【東京】函館市が国と電源開発を相手取り、大間原発(青森県大間町)の建設差し止めなどを求めた訴訟の第8回口頭弁論が20日、東京地裁(林俊之裁判長)で開かれた。原告の函館市側は、原子力規制委員会が定めた新規制基準に対して「国際基準に合致していない」などとして、不合理だと主張した。

 市側は準備書面を通じて、規制委が2013年に策定した新規制基準に関し、福島第一原発事故の原因について徹底的な調査が必要なはずだとした上で、「事故原因の調査が不十分なままで、あいまいで不明確」などと指摘。原子力規制委員会設置法において、「確立された国際的基準を踏まえて安全の確保を図るため必要な施策を策定する」と定めていながら、新規制基準では避難計画が規制対象から外されていると主張した。

 この日の口頭弁論で、原告代理人の井戸謙一弁護士は今年3月に大津地裁(滋賀県)が下した高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止め仮処分決定について説明。「画期的な決定で、シビアアクシデント(過酷事故)や避難計画など、福島第一原発事故の教訓を随所に踏まえている」と評価した。

 一方で、福岡高裁宮崎支部が今月、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の運転差し止めを求めた仮処分抗告を棄却したことについて、同弁護士は「新規制基準の内容に適合していると結論付けたが、新規制基準で十分だとは何ら立証されていない。社会通念を基準として判断するしかないと述べているが、社会通念がどこにあるのかが問題だ」などと批判。「大津地裁の決定を参考にし、宮崎支部の決定を他山の石としてほしい」と求めた。

 次回は7月14日午後3時から同地裁で開かれる。(千葉卓陽)


◎安全性の問題点指摘 大間差し止め訴訟

 【東京】20日に開かれた大間原発差し止め訴訟の第8回口頭弁論で、原告の函館市側は原子力規制委員会が策定した原発の新規制基準をはじめ、耐震設計やフルMOX(ウランとプルトニウムを混合したMOX燃料を全炉心に装荷する)など、安全性に対する問題点を数多く主張した。

 新規制基準の不適合性を主張する上で、市側が問題視したのは規制委の構成だ。委員5人中3人が原子力推進機関や原発関連事業の出身者だと指摘し、「独立性が確保されているとは言えない」とした。策定作業開始から約8カ月で施行に結びつけた点について「検討期間が絶対的に不足している」と主張したほか、田中俊一委員長の発言に関し「『安全だとは申し上げない』と繰り返し述べている。新規制基準に適合しても安全とは言えないことを意味している」とした。

 大間原発で耐震設計の目安となる地震の揺れ「基準地震動」に対しては抜本的な見直しが必要とし、「どこまでの不確かさを想定すべきなのかが曖昧なままで、実質的に事業者の裁量次第で決まってしまう実態は、福島原発事故前と大きく変わっていない」と批判。MOX燃料についても「万が一の場合に過酷事故につながりやすい、いくつもの特徴が存在する」とした上で、新規制基準でMOX燃料に特定した基準が存在していないと指摘した。

 原告代理人の中野宏典弁護士は、高浜原発3、4号機に対する大津地裁決定などを踏まえ「行政の裁量が事故の影響で非常に狭くなっていることを主張していきたい」とした上で、「こちらの主張が整理し切れていない面もあり、より精緻化していく」と述べた。

 また、今回から裁判長をはじめ、裁判員3人がすべて交代した。これについて原告代理人の只野靖弁護士は裁判後の報告集会で「だいたい3年で交代するので、争点は多岐にわたるが、あと3年しかない。(口頭弁論後の進行協議で)裁判長はゴールを見据えて取り組みたいと言っていた」と明かし、積極的な審理に期待した。(千葉卓陽)