2016年4月3日 (日) 掲載

◎新幹線効果、沸く道南 開業1週間

 3月26日の北海道新幹線開業から1週間、2度目の週末となった2日、新函館北斗駅や函館市の観光地では再び大勢の観光客の姿が見られた。市内の観光、商業施設の関係者は開業効果に一定程度の手応えをつかみながら、次のピークとされる大型連休の需要増にさらなる期待を寄せている。(山田大輔、金子真人)

 この日、同駅着の新幹線はいずれも満席とはならなかったが、列車が到着するたびにコンコースは大きな荷物を持った旅行客で混雑した。新幹線が見学できる自由通路では、写真を撮る多くの地元市民の姿があった。

 同駅併設の北斗市観光交流センター内で弁当カフェ「41ガーデン」を経営する吉田屋(八戸市)の吉田広城社長は「売上は想定の3倍となった開業日以降も落ちこむことなく、新幹線効果を強く実感している。気を緩めず、利用者の声を聞きながらリピーターを獲得したい」と話す。 

 JR函館駅近くの函館朝市(若松町)も多くの観光客でにぎわった。えきに市場内にある名物の活イカ釣りコーナーに大勢の家族連れらが詰め掛け、午前6時半の開始から午後1時半の終了まで常に30分待ちの状況が続いた。担当者は「開業後は普段より1・5~2倍ほどお客さんが増えた。東北などからの新幹線客も多い」と話す。

 一方で、新幹線の駅から離れた観光施設の関係者は想定より少ない入り込みに複雑な心境をのぞかせる。

五稜郭タワー(五稜郭町)の開業後6日間の展望台搭乗者数は、前年同期比12・9%増の1万3205人だが、新幹線開業前の伸び率に比べほぼ横ばいだった。大場泰郎営業部長は「もう少し増えると踏んでいた。函館駅や新函館北斗駅周辺のイベントに人が多く集まった影響では」とみており「桜が咲く4月下旬からが本番。東北や北関東からの入り込みに期待する」と話す。

 函館山ロープウェイ(元町)の26~31日の利用者数は、同9%増の4万3643人。ただ、開業後3日間を見ると同23%の増加となった。営業企画室の水口貴博室長は「ゴールデンウイークが一つのヤマ場。メーンの道内客に加え、道外の新幹線利用客の増加が見込める」とみている。



◎「オーシャン」魂受け継ぐ 中学硬式野球 函館北リトルシニア

 中学硬式野球の函館北リトルシニア(竹田謙治監督、団員15人)は今春から、日本最古の野球クラブ「函館太洋(オーシャン)倶楽部」(辻見典之監督)と連係し、公式試合以外でチーム名にセカンドネームとなる「オーシャンジュニア」を付けて活動する。選手の強化はもちろん、競技人口の拡大にもつなげる狙いで、竹田監督は「お互いの良さを出し合いながら道南野球を盛り上げられれば」と期待を込める。(小杉貴洋)

 現存するクラブとして最も長い歴史を持つ函館太洋倶楽部は、1907(明治40)年に創設。今年で110周年を迎え、これまでに全国大会でも好成績を収めてきた。一方の函館北リトルシニアも96年に結成、全国選抜野球大会など全国を3度経験するチームとして知られる。

 道南ではここ数年、少子化の影響と別競技が増えたことで野球離れが深刻になり、選手集めに苦慮するチームが多くある。さらに冬期を含む練習場の確保も大変で、道南から甲子園への出場機会が長らくないことなどもあり、現状に心を痛めた竹田監督ら関係者が、以前から練習などをともにする仲だった辻見監督らに「選手層の底上げを図るためにも協力してほしい」と頼み、同じ思いを共有していたことから快諾し、連係をさらに深めることとなった。辻見監督は「社会人と中学生という年代の違いはあるが、野球が好きなのは一緒。活性化のためにもこれしかないと思った」と振り返る。

 今後は、函館北リトルシニアが東山町に所有する室内練習場を共有するほか、双方が練習のために借りた場所での合同練習などを企画する予定。竹田監督は「歴史あるチームから学ぶことは多い。社会人ならではのスピード感ある野球を子どもたちに教えてほしい」と望む。辻見監督も「将来的にはうちのチームに入ってくれる選手が一人でも増えてくれれば」とほほ笑む。

 函館北リトルシニアは、練習などの際に着用する「オーシャンジュニア」と胸に書かれたセカンドユニホームを作成。2日に木古内町で行われた練習試合で初披露した。同チームの櫻井玲碧主将(附属小6年)は「オーシャンジュニアの名前に誇りを持ってたくさんのことを吸収したい」と話し、今季の全国大会出場に向けて闘志を燃やしている。



◎「地域貢献」夫の遺志 故大河内さんの妻 香典全額寄付

 1月に急性心不全のため80歳で死去した市内小児科医で、道南市民オンブズマンの代表を務めた大河内憲司さんの妻・綾子さん(78)がこのほど、大河内さんに寄せられた香典140万円を市内幼稚園や社会福祉法人などへ全額寄付した。生前から「よりよい社会のために」と市民運動などを行ってきた大河内さんの意志を尊重し、お世話になった地域への恩返しを決めた。

 大河内小児科医院(日吉町3)で、40年以上にわたり地域の子どもたちの健康を守ってきた。小児科医以外にも、1995年に市交通局の官官接待疑惑が浮上した際に道南市民オンブズマンを結成。先駆的に市民運動を実践し、その後も市議会の政務調査費(現政務活動費)の使途を問うなど、数々の業績を残した。

 寄付の宛て先は、大河内さんが長年園医を務めた函館あおい幼稚園、白百合幼稚園、福ちゃん保育園と同院に近い日吉が丘児童館で、図書カード5万円分や同院の待合室に並べていた絵本などを寄贈。このほか社会福祉法人の函館一条と道南福祉ねっとにそれぞれ50万円、全国市民オンブズマン連絡会議(本部・名古屋市)に20万円の、総額140万円相当を送った。

 綾子さんは大河内さんの人柄を振り返りながら「社会への恩返しとして、このように香典を使ってほしかったと思う。先生(=大河内さん)の心が伝わってくれれば」と語る。

 このほど、あおい幼稚園で行われた寄贈式では、大河内さんの遺影を見せると、園児たちは「お腹をみてもらった」などと思い出した様子だったという。和泉陽子園長は「綾子さんと一緒に幼稚園のことをとても気にかけてくれいていた。寂しさもあるが大切に使わせてもらいます」と感謝を述べた。(蝦名達也)


◎世界自閉症啓発デー、各地でイベント

 国連が定めた世界自閉症啓発デーの2日に合わせて、函館、北斗の両市内では音楽祭や作品展示などさまざまな啓発イベントが行われた。

 当事者支援団体などでつくる実行委員会(大場公孝委員長)が2013年から開催していて、今回は3月下旬から4月8日まで11会場で関連イベントを計画した。

 五稜郭タワーでは「Blue(ブルー)の音楽祭」が開かれ、函館在住のミュージシャン、Keller(ケラー)さんや、障害者施設の利用者でつくる「音舞」「ゴスペルクワイアMSC」「ひのき屋」の4組が出演。一昨年帰郷し、約40年ぶりに函館のステージに出演したケラーさんは道南地区啓発デーイベントの公式テーマソング「Blue Rainbow(ブルー・レインボー)」を当事者や支援者とともに歌った。

 夜は同タワーをシンボルカラーの青色に約3時間、ライトアップ。午後6時の点灯式では約100人が集まり、北海道自閉症協会道南分会の道下康子会長が自閉症の長女玲奈さん(19)とともに「自閉症の子どもたちが生き生きと暮らせる地域になってほしい。子育てを頑張っている家族を温かく見守って」と呼び掛けた。

 市芸術ホールでは自閉症啓発デー・アート展が4日まで開催。当事者や家族、支援者らが制作した絵画や立体作品、写真など約110点を展示した。たくさんのエコキャップを貼り付け一つの絵として完成させた「キャップアート」や、裁断した布をつなぎあわせた立体作品、北海道新幹線車両を描いた張り絵などが並んでいる。入場無料。(鈴木 潤)