2016年4月30日 (土) 掲載

◎寒いけど観光熱く、GWスタート

 北海道新幹線開業後、初めての春の大型連休がスタートした29日、道南はあいにくの雨に見舞われた。新函館北斗、木古内の駅周辺は新幹線の到着とともに、観光客や帰省客らでにぎわいをみせ、松前町では恒例の松前さくらまつりが開幕。函館市内の各観光スポットも客足が増え始めたが、観光事業者、観光客ともに天候回復を待ち望む連休初日となった。

 函館市の観光名所の一つ、函館朝市のどんぶり横丁ではお目当ての海鮮丼を探す人など、朝から家族連れの姿が目立った。満開となった五稜郭公園のサクラを一望できる五稜郭タワーにも大勢の人が訪れ、展望台からの景色を堪能。同タワー営業担当者は「今年はサクラの開花が早く、すでに見頃を迎えているので順調なスタートを切ることができた」と話す。

 教会群をはじめ、歴史的建物が残る西部地区では、午後から徐々に増え始めたが、寒さもあって団体客が通り過ぎたあとはにぎわいとはほど遠い状況。ダウンジャケットやマフラー姿の人も目立ち、ソフトクリーム店の店員は温めた牛乳の販売に力を入れていた。

 函館山ロープウェイは強風のため、この日の運行を休止。駐車台数が多くはない山頂駐車場はレンタカーなどで混雑したが、ロープウエー運休の影響もあって、展望台を訪れる人はまばらだった。

 一方、木古内駅前の道の駅「みそぎの郷きこない」は、新幹線利用客や松前のさくらまつりに向かう途中に立ち寄った行楽客らでにぎわった。同施設観光コンシェルジュの浅見尚資さんは「開業日に匹敵するほどの人出」と話した。岩手から新幹線で訪れた坂本綾子さん(45)は「レンタカーで松前にサクラを見に行った。新幹線が開通して、とても便利になった」と話していた。(今井正一、金子真人)



◎新駅、空港ともに混雑

 大型連休初日の29日、道南の玄関口となる新函館北斗駅や函館空港は、旅行客や帰省客で混雑した。北海道新幹線は多くの下り列車が満席となり、3月の開業日以来の高い乗車率となった。

 新函館北斗駅では、定刻通り午前10時58分に東京発のはやぶさ1号が到着すると、700人近い乗客が一斉に降り立った。この日は同駅に到着した下り列車16本のうち11本が満席となり、ホームでは旗を持った添乗員が団体客を誘導する姿も目立った。

 家族4人で訪れた東京の会社員菅野正さん(49)は「新幹線が開業したら函館を訪れようと決めていた。2泊3日でサクラと海鮮料理を存分に楽しみたい」と笑顔。同駅から実家のある函館市に向かうという埼玉県在住の学生(21)は「首都圏で何度も乗り換えて飛行機に乗るよりも便利だと感じたが、所要時間を早く短縮してほしい」と話していた。

 JR北海道によると、新函館北斗駅に向かう主な列車の東京発時点の乗車率は75~85%だったという。

 一方、新幹線開業で競合する羽田線も終日ほぼ満席となり、函館空港の到着ロビーでは旅行バッグを手にした親子連れらが、迎えに来た家族と再会を喜ぶ姿が見られた。家族5人で東京から帰省した鈴木千尋さん(39)は「子どもが小さいので、4時間かかる新幹線で帰るのは無理だと思った」と話していた。

 JR北海道や航空各社はピークについて道内着が29日、Uターンは5月5日とみている。(山田大輔)



◎松前さくらまつり開幕

 【松前】道内最速でサクラが開花した松前公園の花見イベント「第69回松前さくらまつり」(町、観光協会など主催)が29日、始まった。園内にある250品種約1万本のサクラを観賞しようと大勢の観光客らが訪れ、雨にしたたる春の花々を存分に堪能していた。イベントは5月20日まで。

 初日は松前神社で開会式が行われ、関係者がイベントの成功と安全を祈願。石山英雄町長や松前観光協会の菊地祐司会長らによるテープカットで幕が開けた。

 園内では、甲冑(かっちゅう)を着た海上自衛隊松前警備所の隊員約30人が、藩屋敷から松前城まで練り歩く「武者行列」が登場。観光客たちはカメラを手にしながら、勇ましい行進に見入っていた。また、アワビやウニなど町の食を味わえる「松前物産フェア」もにぎわっていた。東京から新幹線に乗って初めて来訪したという武田千代さん(82)と渡辺恵美子さん(55)親子は「サクラの種類が多くてどれも美しかった。イベントも楽しめた」と声を弾ませた。

 現在はソメイヨシノや、同園で最も多い品種の南殿(ナデン)と、その親木として有名な光善寺の血脈桜などが満開で、見頃を迎えている。(斎藤彩伽)


◎ディープな函館巡る 函高専奥平教授がまちあるき講座

 函館高専公開講座「まちあるきガイド育成連続講座」の第1回が29日、西部地区一円で行われた。奥平理教授が、各所に残る石垣や坂道の成り立ちなどガイドブックにはない〝ディープな函館〟の眺め方を案内した。

 市との共催事業で、7月までに計4回開催する講座。奥平教授は昨年NHKで放映された人気番組「ブラタモリ」でタモリさんのガイド役を務め、番組ロケ地を参加者と歩いた。

 西部地区の坂道は海岸段丘によるものだとして、その地形の特徴を説明。坂道のため、石垣が築かれた場所が多いのも特徴で、函館西高やハリストス正教会などの教会群の前、南部藩陣屋跡など、つくられた時期や組み方の違いを解説した。旧相馬邸の威風を放つ石垣は豪商の名残とし、参加者からも驚きの声が上がった。

 市電に乗って訪れた谷地頭で、奥平教授は「ここの海抜は1メートルしかない。四方が坂で、すり鉢の底のような場所。かつては沼地で、段丘を切り通した残土で埋め立てた場所」と説明。火山の爆発によってできた可能性があるとした。

 このほか、函館型三方式消火栓の製作時期の見分け方、住吉町の海岸で眺めることのできる段丘など日常風景に残る函館の特徴を紹介。函館公園内も散策し、観覧車や洋風噴水といった「国内最古」にも触れた。

 医療法人社団理事長の深瀬寛也さん(42)は「坂がなぜ坂になったのか、段丘とは何かといったような、地形にも歴史があることが分かり勉強になりました」と話していた。

 次回「十字街コース」は5月28日に行われ、参加申し込みは同9日から受け付ける。問い合わせは同高専(☎0138・59・6345)へ。(今井正一)