2016年5月13日 (金) 掲載

◎高鮮度の水産物を国内外へ 産学官で流通の実証実験開始

 函館地域産業振興財団(松本栄一理事長)は、国内外に高鮮度の水産物を輸送するための実証実験を本年度から開始する。森町で漁獲されるサバやブリなどをモデルとし、産学官連携で流通体系を構築して主に生鮮魚の輸出拡大を図るのが狙いだ。3年計画で、現在と比べて2倍の鮮度保持と、輸送コストの4割削減を目指す。

 同財団は2014年から、北大大学院水産科学研究院(安井肇院長)や森町の水産加工業ジョウヤマイチ佐藤(佐藤清美社長)などと共同で、生鮮水産物の高鮮度輸送技術の研究を進めている。

 本年度から取り組むプロジェクトは、水産物の鮮度長期保持に有効な、0~零下5度の温度帯で産地から消費地までの輸送を目指すもので、農林水産省の「革新的技術開発・緊急展開事業」に採択され、研究費として約7000万円の補助を受ける。

 水揚げされた魚体は、海水を零下2・5度程度に冷却したシャーベット状の氷「スラリーアイス」で急冷。魚を生け締めすることで長期間の鮮度保持が可能となり、うま味成分のイノシン酸の値も向上するという。

 また、開発済みのスラリーアイス製造装置を小型漁船上でも氷を自己生産できるよう改良し、漁師がこれまで負担していた、氷の調達に必要な費用の軽減を図る。

 流通コストを削減するため、出荷時はスラリーアイスから塩水を除いた「脱水氷」を使用。外部に水が漏れず、保温性に優れた専用の発砲スチロール容器で輸送する。昨年は、この方法で実際にサケを新千歳空港からタイまで輸送し、気温が40度を超える現地でも氷が残っていたという。

 同財団などは、森町の漁業関係者の協力を得て定置網漁業を手始めに、巻き網など他の漁船漁業にも展開したい考えだ。このほか、食品中の水が凍り始める温度であらかじめ冷やして凍結すると、食物組織の損傷が抑制されることから、スラリーアイスを使った新たな冷凍刺身商材の開発にも乗り出す。

 同財団研究開発部の研究主幹グループリーダー、吉岡武也さん(53)は「道は食の輸出拡大戦略を打ち出しており、トレンドに乗った事業。新しい技術で流通の範囲を広げ、北海道の新鮮な魚を遠方の地域に届け、攻めの水産業を実現したい」としている。(山田大輔)



◎地域の味ぎっしり「空弁」召し上がれ イトーヨーカドー函館店が開発

 イトーヨーカドー函館店(美原1、小山忍店長)は、函館空港限定の弁当「函館御膳」の販売を始めた。同店の空弁事業の参入は初。函館産コンブや噴火湾産ホタテなど道南の海産物が楽しめるとあり、観光客の人気を集めている。

 同店を運営するイトーヨーカ堂(東京)と函館市は昨年11月、地域活性化や市民サービスの向上を目的とした包括連携協定を締結。今回、函館の物産品のPRを図ることなどを目的に空弁開発に踏み切った。

 9つの仕切りの中に、いかしゅうまい、昆布煮、松前漬、ホタテ照り焼き、甘納豆の赤飯などを詰めた。田村衆司惣菜担当マネジャーは「パートで働く女性たちの意見を取り入れ、函館市民の普段の食卓に並ぶメニューにこだわった」とする。

 国内線搭乗待合室の売店で販売。価格は1200円(税込み)で、当面は1日10個限定としている。このほか道産のイカを使った同店の人気惣菜パン「イカメンチバーガー」(380円)も販売している。

 荒木秀俊副店長は「可能な限り函館産、道産の食材を使い、観光客の皆さまに地元の味を楽しんでいただけるような弁当を開発した」と話している。

 函館御膳は基本的に函館空港のみの販売だが、18~24日に同店で開く函館市との協定締結150日を記念した催事で、特別に出品する。(金子真人)



◎新人航海士補が奮闘 函館海保に今春配属の19歳御厩さん

 函館海上保安部に今春配属された御厩卓(みまや・すぐる)さん(19)が、同海保所属の巡視艇ゆきぐもの航海士補として奮闘している。「覚えることも多いですが、緊張感を持ち、充実した日々を送っています」と、やりがいを感じる毎日を送っている。

 3月19日付で函館海上保安部に配属。ゆきぐもの航海士補として海上で警備救難業務などを担うとともに、陸上ではデスクワークなども行う。

 中学生のとき、海難救助を中心とした海上保安官の活躍を描くドラマ「海猿」がきっかけで、海上で人命を救う航海士に興味を持った。海上保安庁の業務を調べていくうちに、犯罪捜査など活動の幅広さを知り、テレビから流れるニュースなどで活躍が放送されるたび、将来の職とする思いを強くした。

 御厩さんは江別市出身。江別高校卒業後、京都府舞鶴市にある海上保安学校に入校し、1年間航海士になるための基礎を学んだ。「さまざまな法律や船舶を運航する技術など、座学の機会が訓練より多かったのに驚いた」と笑顔を見せる。教官から、刻々と変わる現場で状況を判断し、臨機応変に動ける大切さを説かれたことが心に残る。

 同海保に配属されたのは御厩さんら2人。「毎日の勉強や訓練は大変ですが、人の命を左右する責任ある立場だという自覚のもと、上司のアドバイスを受けながら日々の業務に臨んでいる」と声を張る。同海保の小林修次長は「頼もしく見守っている」と期待を寄せる。

 函館には観光や高校時代の陸上部の合宿で訪れていたが、就職を機に来函。「日々の業務を通して人や社会の役に立ちたい」と目を輝かせている。(半澤孝平)


◎医師会専門学校、准看護学科廃止へ 19年に正看育成過程新設

 函館市医師会(本間哲会長)が運営する看護専門学校(湯川町3、校長・本間会長)は現行の准看護学科(定員80人、2年制)を廃止するなどし、2019年度から正看護師のみを育成する看護師3年課程(同40人)を新設する。道南で唯一の准看護師養成校だったが、入学希望者の減少が続いたことから同科の廃止を決めた。

 同専門学校は、都道府県資格の准看護師を養成する准看護学科のほかに、准看護師が国家資格の正看護師を目指す看護学科(同40人、2年制)がある。

 新課程移行に向け、准看護学科を来年度から、看護学科を18年度からそれぞれ募集を停止。これにより、准看護学科は現在の1年生が卒業する18年3月末で廃止となる。看護学科も来年度入学の学生が卒業する19年3月末で終了し、4月1日から3年制の看護課程としてスタートする。

 近年、准看護学科は受験者数が減少し、合格後に入学を辞退する学生もいて定員割れが続いていた。

 求職の多い正看護師を目指す志望者が増えており、同医師会は「時代の流れの中で、学校として准看護師を養成する役割は終えたと判断した」とする。田中和子副学校長は「新しい課程に移行しても優秀な看護師の育成に努めていきたい」と話す。

 同校は1953年、函館市医師会附属准看護婦養成所として元町に設立。2005年度に現在地へ移転新築し、看護学科を新設。これまで看護師、准看護師合わせて約4500人を輩出している。(鈴木 潤)