2016年5月8日 (日) 掲載

◎旧相馬邸、屋根瓦の掛け替え完了 来館者らが寄付し工事サポート

 函館市指定の伝統的建造物「旧相馬邸」(元町33、東出伸司館長)で2年前から行われていた屋根瓦の掛け替え工事が完了した。行政の補助を得るとともに、来館者などに広く寄付を募った結果、350人以上の協力で修復がかない、今月2日に寄付者への謝意を伝える立て看板を敷地内に設置した。東出館長(76)は「たくさんの人から共感を得られた」と喜んでいる。

 同邸は明治時代に道内屈指の豪商として知られた相馬哲平の私邸。東出さんが社長を務めるエステート企画が空き家になっていた建物を改修し、2010年6月から一般公開を行っている。

 瓦屋根の掛け替えは、公開に向けて洋間を修繕した際、壁の色が変化していることに気づいて調べたところ、瓦がずれて隙間が空き、軒下の腐食につながっていたことが判明。専門家の指摘を得ながら2014年から修繕を始めた。

 工事には約4000万円が必要で、行政からの補助だけでは足りないため、14年11月ごろから1枚3000円で来館者や協力者に瓦を購入してもらい、その瓦を寄贈してもらう形で協力を求めた。

 昨年10月に工事が完了。約1年間の活動の結果、一般の瓦398枚と鬼瓦10枚を市民や観光客、保存会、団体からの寄付で掛け替えた。寄付は市内や全国各地、遠くは英国からもあり、瓦の裏には購入者の名前や出身地などを記入してもらうとともに、1枚1枚にナンバーを付け、屋根のどの位置に掛けたかを看板で紹介している。

 「予想外の成功だった。これからの文化財を守っていく一つの指針になるのでは」と東出館長。今年からは同邸の動きを紹介する「旧相馬邸だより」を発行し、寄付者らに配布している。同館長は「どこに瓦を掛けたかを見に来る方もいる。寄付いただいた方に連帯感や愛着をもってもらい、みんなで建物を守りたい」と話している。(千葉卓陽)



◎あふれる愛情 涙誘う 夫婦の手紙コン発表会

 【松前】「『夫婦の手紙』第9回全国コンクール」(実行委主催)の公開発表会が3日、松前公園内の夫婦桜前広場で行われた。観客約100人が集まり、幾多の苦難を乗り越えた夫と妻からの手紙に涙を流して聞き入っていた。

 コンクールは、園内の天神坂にある南殿(なでん)とソメイヨシノが根を共有しながら成長していることから命名された「夫婦桜」にちなみ毎年開催。国内外から600通の手紙が届き、4月中旬に町民約100人が審査した。

 この日は、最高賞の最優秀賞と次点の優秀賞、佳作8点計10作品を公開。松前高校の菅野沙弥香さん(1年)、兼子奎君(3年)、澤田紗歩さん(3年)、白川里咲さん(3年)が登壇し、愛情あふれる作品を丁寧に朗読した。満開の夫婦桜が咲き誇る会場で、観客から惜しみない拍手が送られた。

 最優秀賞に輝いた群馬県在住で契約職員の小幡由美子さん(58)の作品は、出産目前に顔面神経麻痺(まひ)を患った時にも懸命に支えてくれた夫へ宛てた感謝の手紙。当日は出席できなかったが「私たち夫婦にとって大きな喜びになった。特別な意味を持つ松前町をいつか訪れてみたい」とメッセージを寄せた。

 また、優秀賞を受賞した横浜市在住で無職の茅根静代さん(72)の作品は、結婚生活48年で天国に旅立った夫に思い出を語りかける手紙。会場に来ていた茅根さんは「皆さんのお手紙を聞き、胸がいっぱいになりました。亡き夫がそばに来てくれている気がします」と話し、実行委から賞状を受け取った。(斎藤彩伽)



◎中国定期路線相次ぎ運休 北京・杭州線、搭乗率維持に苦戦

 函館空港との国際定期航空路線を持つ中国の航空2社の路線が相次いで運航休止となる。中国国際航空の北京線は今月2日を最後に運航を停止。中国東方航空の杭州線は21日以降の夏ダイヤ期間(10月29日まで)の休止を決めた。ともに旺盛な訪日需要を背景に昨年就航した路線だが、安定した搭乗率の維持に苦戦したとみられる。

 中国国際航空の北京線は昨年7月に就航。164人乗りの機材が毎週月、金曜日の週2往復していた。市港湾空港部によると、月別の路線の利用率は50%前後で推移し、最高でも今年2月の65・5%で、40%を割り込んだこともあった。同社は運航停止について「市場の影響と機材繰り」とする一方で、今年3月27日以降の夏ダイヤでは、新千歳-北京線を週4便から週5便に増やしている。

 また、中国東方航空の杭州線は156人乗り機材で毎週火、土曜日の週2往復している。同社札幌支店は「運休は本社の決定によるもの」とする。就航後の利用率は同12月が66・7%、1、2月は75%前後で好調だったが3月は43・8%に落ち込んだ。同社は夏ダイヤ期間の休止としており、冬ダイヤ以降の再開には含みを持たせる。

 日本政府観光局(JNTO)のまとめでは、訪日中国人客の約6割が団体旅行。昨年は7、8月の夏場に57万~59万人台とピークとなり、今年2、3月も49万人台と前年同月を上回る状況で推移した。函館線の運航休止の背景には、冬ダイヤから予定される新千歳空港の発着枠拡大の影響や、安定した団体宿泊の確保が困難になっている状況を指摘する声がある。

 2社の休止で函館と中国との路線は天津航空の天津線(週2便)のみとなる。同部港湾空港振興課は「休止のタイミングが重なり、非常に残念。1日も早い再開を期待したい」とする。7月には市の官民トップによる観光客誘致訪問団が訪中し、中国の航空各社も訪問する予定。

 市観光部国際観光課は「函館に直接乗り入れする客は減るが、定期便がない時から来函中国人客は増えており、全体の入り込みに影響するような減少までは考えていない。引き続き、中国でのプロモーションにも力を入れたい」としている。(今井正一)


◎結婚・子育て 幸せいっぱい 渡島総合振興局がエピソード集

 渡島総合振興局は、若者の未婚・晩婚化を食い止めるため、既婚者の体験談100通を集めた小冊子「結婚・子育てしあわせエピソード」を作った。結婚や子育ての心温まる話を紹介しており、少子化問題の解決に役立てたい考えだ。

 同振興局の若手女性職員グループが発案、昨年度の独自事業として3月に発行した。「結婚」と「子育て」の2部門あり、結婚に41通、子育てに59通が集まった。投稿者は10~50代の延べ69人。昨年10~11月に募集したところ、道外や海外からの応募もあったという。

 結婚では「日々の生活の中で、絶対的な自分の味方がいると感じられる」「互いの長所・短所を補いつつ、楽しく生活」など夫婦関係の素晴らしさをつづっている。子育てでは「今までできなかったことができるようになったとき、幸せを感じる」「自分より、もっと大切なものができた」など、家族で喜びを共有した瞬間を表現している。

 A5判16ページ、オールカラーで3000部作成。婚活事業を行っている自治体や団体、渡島管内の大学、短大などに配布する。同振興局地域政策課は「独身者が結婚や子育てに前向きなイメージを持つきっかけになれば。同じ世代のエピソードだと共感しやすいので、ぜひ読んでほしい」としている。同振興局ホームページでも閲覧できる。

 問い合わせは同課(☎0138・47・9429)へ。(山崎大和)