平成20年6月


6月30日(月)

●初夏を彩る白い花のハンゲショウ(半夏生)が咲き始めた。ドクダミ科に属するというのに、意外と「秘めた情熱・思い」という花言葉を持ち、生け花にもよく使われる。もともと「半夏生」は七十二候(雑節)の一つで、夏至から数えて11日目▼例年は7月2日が多いが、今年は1日に当たるとか。半夏(ハンゲ)という薬草が生えるころで、農家にとっては大事な節目の日。この日は天から毒気が降ってくるともいわれ、井戸にフタをして毒気を防いだり、この日に採った野菜は食べてはいけなかったらしい▼また、この日にタコを食べると、その年の稲が「タコの吸盤のように大地に根付く」とされ、子孫繁栄や無病息災を願うようになり、民間の研究グループが7年前から、この日を「cエの日」と決めた(足が8本だから8月8日も「タコの日」とか)▼刺し身、酢の物、炊き込みご飯…チラシには「半夏生に旬のタコを食べよう」の文字。タウリンなどの成分の豊富なタコは夏バテ防止にも効く。タコ好きな日本人は世界の漁獲量の半分を食しており、国産の倍以上を輸入に頼っている▼全国の半分が道産のミズダコというから北海道は“タコ王国”。そのタコも漁船の燃料高騰で値上がりしそうだ。燃料費削減のため控えていた津軽海峡のマグロ漁も1日から出漁する。ガソリンも180円になる。ハンゲショウの生け花でも眺めて、冷静に生活防衛を考えたい。(M)


6月29日(日)

●明治の元勲も早稲田の創立者もがっくりだろう。近代日本のいしずえとなった業績が、いまの子どもたちにはさっぱり伝わっていないのだから。いや、なに小学6年を対象に実施された社会科の調査の結果です▼文部科学省が、学習指導要領に登場する42人の歴史上の人物と業績を組み合わせる問題を全国の6年生6600人余に答えさせたところ、最も正答率が低かったのは大久保利通23・5%、大隈重信はワースト3だった▼大久保は西郷隆盛、木戸孝允と並ぶ「維新の三傑」の一人。明治新政府の中央集権体制を確立し、官僚機構を整えたことでも知られる。明治の激動期を描いた小説やドラマには、必ず登場するのに認知度は低い▼三傑の一人の木戸は大久保と大隈に挟まり、正答率ワースト2。東京・上野公園に犬を連れた銅像があることで有名な西郷さんは、2人より上だがそれでも正答率50%の33位、日露戦争でバルチック艦隊に勝利した東郷平八郎提督より下位だ▼子どもたちはどうやら近現代史に登場する人物が弱いらしい。教える先生も古代史から始めて近現代になると、授業時間が詰まってさらっと触れるだけで済ましがちだ。登場人物が多いことも影響しているのだろう▼さて、正答率トップは卑弥呼の99%。2、3位はザビエル、ペリーの外国人で、4位に野口英世が食い込む。ちなみに今年が千年紀の「源氏物語」の作者紫式部は80・4%で15位だ。(S)


6月28日(土)

●「拉致被害者を忘れない」と語りかけるブッシュ米大統領の言葉が取ってつけたように響いた。北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除の決定を受けて会見したテレビ映像の印象だ▼拉致被害者家族にとって、今回の米の決定は最悪のシナリオだろう。横田めぐみさんの母早紀江さん、家族会代表の飯塚繁雄さんが「残念です」と怒りを押し殺すように答えていたのが耳に残る▼指定解除は北朝鮮から譲歩を引き出す有力なカードを失うことに等しい。これまで何度も約束を破ってきた北朝鮮が、日朝実務者協議で示したとされる拉致被害者の再調査に誠実に応えるとは思えないと家族は疑う▼被害者家族は、米の北朝鮮への圧力を大きなより所にしてきた。だから、早紀江さんをはじめ、家族会幹部が何度も訪米し、ブッシュ大統領にも直接会って訴えてきた。頼りの米が、柔軟路線に舵を切った。家族の落胆は深い▼ブッシュ大統領は来年、任期を終える。テロとの戦いを大義名分に始めたイラク戦争は、米軍の死傷者が増え泥沼化。北朝鮮とともに核開発疑惑が指摘されているイランとの関係は険悪だ。経済の足元はサブプライム問題などで揺らいでいる▼大統領の実績を歴史に残すために北朝鮮との関係改善に踏み出した、との見方も間違いではないだろう。交渉の主役は米朝と中国。拉致は、日本国民に対する北朝鮮の犯罪なのに肝心の日本政府はどうも影が薄い。(S)


6月27日(金)

●ウナギは万葉の昔から滋養に富む食べ物として知られていたらしい。大伴家持の歌に〈石麻呂に吾れもの申す 夏Z≠奄竅jせによしといふものぞ 鰻とり食(め)せ〉とある。夏バテ防止にウナギを食べようとの勧めだ▼土用の丑(うし)の日とウナギを結びつけたのは、江戸時代の異才の発明家平賀源内とされている。閑古鳥の鳴くウナギ屋のために、丑の日にウナギを食べようと宣伝文句を作ったという説が伝わっている▼ことの真偽のほどは不明だが、ウナギが夏の人気メニューであることは、平安時代から江戸期を通じて変わらなかったようだ。なるほど栄養豊富なウナギは、体に力をつけ健康にもいいといまも信じられている▼そのウナギの産地偽装が大規模に行われていたことが明るみに出た。中国産を国産と偽って流通させ、大手企業グループの会社を含め10社を超す業者が農水省の処分を受けた。相次いだ食肉偽装に続き「ウナギよお前もか」の構図だ▼ウナギに罪はない。国産も中国産も元は稚魚のシラスから育てられる。エサや育て方にも大きな差異はないだろう。それでも中国製ギョウザによる中毒事件が示すように中国産食材への信頼は国産より低い▼安価で安心できる食材ならば、国産にこだわる必要はないと思うけれど、消費者をたばかる偽装はいただけない。来月の丑の日を前に、食欲を誘う蒲焼きの匂いにケチを付ける愚かな行為だ。(S)


6月26日(木)

●風呂好きにとって函館はうれしい土地柄だ。市内や近郊に温泉が多数あり、安い公衆浴場料金でゆったりと湯につかれる。自宅に風呂があっても家族で風呂屋を楽しむ家庭が少なくない▼そんな楽しみにも原油高騰の影響が忍び寄る。風呂屋が燃料の重油高に悲鳴を上げ、今夏にも値上げしそうな雲行きだ。知事が道公衆浴場入浴料金審議会に料金改定を諮問し、来月には答申を受けて上げ幅が決まる見通しだ▼現行の390円の公衆浴場料金は2年前の4月に施行された。道のデータでは、公衆浴場数は経営難や後継者難で減り続けている。経営環境はこの1年の原油高でさらに悪化して、立ち行かなくなった風呂屋が増えているという▼なるほど原油高騰は異常なレベルだ。指標となるニューヨーク市場では1バレル140j近くまで上がった。風呂屋が使う重油は昨年6月がリッター68円台。それが1年で50%上がり、いまは100円を超す▼燃料重油の高騰は、イカ釣り漁船の一斉休漁を招いたばかりだ。切迫した事態は、身近な風呂屋も窮地に立たせる。他の物価も上がっている。家計を守るためには、風呂屋に行く回数を減らそうと思案する家庭もあるだろう▼きょうは、語呂合わせで「露天風呂の日」だそうだ。函館には、露天風呂を備えている風呂屋が多い。暮れなずむ空を見上げて、この心地よさに冷水を浴びせる原油高騰を腹立たしく思った。(S)


6月25日(水)

●地震のあとは海の惨事。フィリピンで台風で大型フェリーが転覆、800人以上が行方不明に。千葉県犬吠埼沖ではカツオ漁船が転覆、4人が死亡、13人が行方不明に。135トンもの大きな船体を覆す波はいかほどの高波だったのか▼陸から350キロも離れた太平洋上、大自然の威力をみせつけられた。波の高さ約3メートル。しけ模様のため船体を安定させるパラアンカー(パラシュート状のいかり)を海中に広げて停泊していたが、横波を受けて一気に転覆。専門家は「三角波」とみている▼三角波は手のつけようのないほどの脅威的な波。いろいろな方向からの波が重なり合って大きな三角形の波になる。犬吠埼沖は利根川の水流と日本海流がぶつかり合って発生する海難の名所。突然現れ予想がつかなく、下から突き上げられるような波という▼また、沿岸で怖いのは海水浴場の「離岸流」だ。離岸流は秒速2メートルの速さで水泳選手でも脱出するのに四苦八苦。沖向きの流れに逆らって陸側に泳ごうとして力尽きてしまう。離岸流に巻き込まれたら全力で横に泳ぎ助けを求めることだ▼函館の小学校では早くもプール学習。“危険な波”から脱出できるよう離岸流のメカニズムの指導も必要。それにしても、漁場の気象予報や通信技術などが進んで危険を回避できるようになった昨今、突然の三角波を予測できる体制ができないものか。不明者の無事発見を祈るばかりだ。(M)


6月24日(火)

●「ヒマラヤの氷河も解けている」。75歳でエベレストに登頂した三浦雄一郎さんが、5年前の登頂時と比較して実感したという。地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの削減が急がれる▼温暖化対策の必要性は、誰もが否定しない。だが京都議定書にアメリカが参加しなかったように、環境問題において世界は一枚岩ではない。二酸化炭素の排出削減は企業の生産活動とかかわるし、森林を伐採し、開発を進めなければならない国もある▼「環境」。「エコ」。この言葉を聞かない日はないし、確かに大事だ。しかし、これが「錦の御旗」となれば、火力発電所や製鉄所などでさえ、やり玉に挙げられかねない▼現在、自粛を求められているのは、コンビニエンスストアの深夜営業。全国の自治体で検討する動きが広がっている▼もちろんコンビニ業界は猛反発している。仮に閉店して照明を切ったとしても、冷蔵庫や冷凍庫の電気を消すことはできない。このため、深夜営業を休止しても削減できる温室効果ガスは国全体の0・009%分しかない、との業界試算も出した▼さらに強調しているのが、防犯機能。2007年度は全国で1万3000人以上の女性が、不審者がらみでコンビニに駆け込んだという。環境問題は単純ではない。さらなる分析と研究、協議を経ての的確な判断が必要だ。地球温暖化問題を主要テーマとする北海道洞爺湖サミットまで2週間。(P)


6月23日(月)

●NPO法人ウィメンズネット函館が受けたドメスティックバイオレンス(DV)の相談件数が昨年度、過去最多の1667件に上った。一時保護施設・シェルターに駆け込んだ女性、子供の数も多い▼配偶者間の暴力を「犯罪」と規定したDV防止法が施行されて何年も経過したが、依然として歯止めは掛かっていないようだ。幼い子どもを連れたシェルター入居者が多いのも気掛かりだ▼2005年4月に施行された改正児童虐待防止法は、DVを子どもに見せること自体が虐待行為に当たるとした。DVを目撃した子どもは恐怖におののく。子どもたちの心の傷は深い▼だからこそ、その心のケアに真剣に取り組もうと、ウィメンズネット函館が「子どもサポート・ふわっと」を立ち上げた意義は大きい。シェルター入居中の子どもの相談や遊び相手になり、勉強の面倒も見るという。シェルター退去後の子どもたちが心を癒やせるような場所づくりも目指している▼DVの現場にいた子どもは暴力の場面を繰り返し思い出し、不安感にさいなまれたり、心を固く閉ざすなどの後遺症≠抱えるとされる。何ともやるせない現実だ▼夫と妻の関係にとどまらず、子どもも被害者ととらえたDV対策が、さらに求められるだろう。「ふわっと」は、子どもたちが「ふわっとした気分で過ごせる時間を」との思いで名付けたという。活動に期待したい。(H)


6月22日(日)

●NPO法人ウィメンズネット函館が受けたドメスティックバイオレンス(DV)の相談件数が昨年度、過去最多の1667件に上った。一時保護施設・シェルターに駆け込んだ女性、子供の数も多い▼配偶者間の暴力を「犯罪」と規定したDV防止法が施行されて何年も経過したが、依然として歯止めは掛かっていないようだ。幼い子どもを連れたシェルター入居者が多いのも気掛かりだ▼2005年4月に施行された改正児童虐待防止法は、DVを子どもに見せること自体が虐待行為に当たるとした。DVを目撃した子どもは恐怖におののく。子どもたちの心の傷は深い▼だからこそ、その心のケアに真剣に取り組もうと、ウィメンズネット函館が「子どもサポート・ふわっと」を立ち上げた意義は大きい。シェルター入居中の子どもの相談や遊び相手になり、勉強の面倒も見るという。シェルター退去後の子どもたちが心を癒やせるような場所づくりも目指している▼DVの現場にいた子どもは暴力の場面を繰り返し思い出し、不安感にさいなまれたり、心を固く閉ざすなどの後遺症≠抱えるとされる。何ともやるせない現実だ▼夫と妻の関係にとどまらず、子どもも被害者ととらえたDV対策が、さらに求められるだろう。「ふわっと」は、子どもたちが「ふわっとした気分で過ごせる時間を」との思いで名付けたという。活動に期待したい。(H)


6月21日(土)

●「国策捜査」の言葉が一般にも知られたきっかけは、外務省主任分析官の佐藤優氏が書いたベストセラー「国家の罠」(新潮社)だった。佐藤氏は、取調べの検事の口からこの言葉を聞かされたと記している▼鈴木宗男衆院議員が受託収賄などで逮捕された02年、鈴木氏と親しかった佐藤氏も背任容疑などで逮捕された。佐藤氏は未決のまま512日間勾(こう)留された。裁判では1審、2審ともに有罪判決を受け最高裁に上告中だ▼秋霜烈日は検察官が身につけるバッジの呼称だ。秋の霜と夏の日差しを象徴し、厳正に職務を追求する検察官の理想像を表す。犯罪を起訴する権限を与えられている検察官が、心に期しているのは、秋霜烈日の精神だろう▼ところが、国策捜査の言葉が流行語のように使われるようになって、検察捜査の在り方に疑問が出始めた。そうしたタイミングに「国策捜査」(青木理著・金曜日)と題した本が出版された。著者の青木氏は元共同通信の警視庁担当記者だ▼取り上げたのは鈴木氏、佐藤氏をはじめ、検察の調査活動費を「裏ガネ」と告発した三井環元大阪高検公安部長、沖縄返還を巡る日米の密約をスクープした西山太吉元毎日新聞記者ら13氏のケースだ▼本は「日本の司法を考える会」のワークショップの議論の記録だという。「検察・警察のターゲットとされた側」の怒りの言い分とも言えようが、中身は重い。(S)


6月20日(金)

●集魚灯のライトが夜空を照らす。海の中を泳ぐイカは透明だが、釣り上げられると怒ってオレンジ色に変色し、甲板の上で立って歩くほど元気で、落ち着くと再び透明になるという。函館の代名詞になっているイカが燃料高で2日間、一斉に休漁した▼イカは奈良時代から食卓に登場。江戸時代には“古(いにしえ)より賀祝の御膳に用ゆ。今もまたしかり”と、アワビなどと共に祝いの席でもてはやされた。今は漁法などが進んで水揚げが増えて、世界の水揚げの4分の1が日本の食卓に並んでいる▼全国で3000隻を超えるイカ漁船が休漁に追い込まれたのは集魚灯などに使う燃料が高騰したから。函館渡島いか釣り漁業協に属する約900隻も休漁。「漁に1回出れば船1隻だけで燃料費が10万円以上もかかる異常事態。これ以上操業できない」という▼休漁初日のスルメイカ(マイカ)の競り値は、いけすイカが高値で1`当り1750円と解禁以来の高水準。今シーズンの平均卸値より1000円以上も高騰したという(市水産物地方卸売市場)。朝市などでも100円ほど値上げに踏み切った▼肴(さかな)はあぶったイカでいい〜 今夜も居酒屋から聞こえてくる。安くて、かむほどに“人生の味”が出て。電力消費量が30分の1とも言われる青色発光ダイオードの集魚灯の出番だ。早く“ぼんやり灯(とも)りゃいい〜”の省エネ漁に切り替えよう。(M)


6月19日(木)

●消しゴム版画家のナンシー関さんが、テレビに登場する芸能人や有名人を取り上げた週刊誌コラムは、鋭い批評眼で人気が高かった。39歳で急逝して6年。その全仕事を陳列する展覧会が今月東京・渋谷で開かれた▼会場には学生のころから亡くなるまでに彫った約5000個の消しゴムが展示されたという。じっくり見たいな、と思ったが機会がなかった。その代わり、函館市中央図書館で週刊誌の連載をまとめた著作をひもといた▼消しゴムに彫った似顔絵に辛口のコラムを添えている。これがすこぶるおもしろい。テレビを熟視し、そこから得られた素材を縦横無尽に料理する腕のさえがあふれていて、時間を忘れて読みふけった▼ナンシー関さんは、お隣り青森の出身だ。名門青森高校の受験に失敗してカトリック系の私立高校に入った。大学受験でも志望校に振られ夜間部に進んだ。受験失敗や太り気味の体型で悩んだこともあったのでは、と思う▼秋葉原殺傷事件で逮捕された容疑者は、青森高校卒業だという。え帯サイトの掲示板への書き込みから孤立感や不満などが透けて見える。凶悪な犯行に走った背景について、学者や評論家などがあふれるほどコメントした▼だが惨劇から10日が過ぎ、事件がテレビで報じられることもあまりなくなった。存命なら、ナンシー関さんは事件や報道をどんな切り口でとらえたろう。聞いてみたい気がする。(S)


6月18日(水)

●これからの暑いシーズンに短命で「はかなさ」を感じさせる生きものはホタルとセミ。ホタルは1週間から2週間の寿命。セミも1、2週間で命尽きる。先日、熱帯植物園でヘイケイボタルの鑑賞会があり、小さなお尻の明滅を堪能▼ほたるの光 窓の雪〜。この歌は中国の晋の高官が若く貧しかったころ、ホタルの光を薄絹の袋に入れて勉学に励んだという「蛍雪の功」の故事から。孫が「ホタルの光で文字が読めるの」と聞いてきたが、なんと省エネ技術の未来を照らす光とも期待されている▼ホタルの光はコミュニケーションの手段。オスは飛びながら「オレを選んでくれ」と明滅させて合図。メスは葉の上で光って互いを見分ける。光る第一の目的は“熱い求愛”行動。でも、ほとんど熱を出さない「冷熱」と呼ばれている▼発光の熱を出すようでは、小さな体が焼けてしまう。ホタル体内の発光物質に作用する酵素「ルシフェラーゼ」の立体構造で、お尻の中で複雑な化学反応を起こして、「最小のエネルギーで最大の光を発光する」という(京都大と理化学研の研究)▼ホタルはきれいで流れが緩やかな川・水辺に生息。熱帯植物園では温室に造成した“せせらぎ”に幼虫を放し繁殖させた。光のはかなさは『命の大切さ』を教えてくれる。岩手・宮城のホタル群生地は地震の土砂で流失したのだろうか。ホタルが飛び交う環境を増やさなければ。今月は環境月間。(M)


6月17日(火)

●国土交通省北海道局は東京・霞が関の中央合同庁舎2号館にある。通りを隔ててすぐ前は東京地裁と高裁が入る裁判所合同庁舎だ。この辺り一帯は、日本を動かす官僚機構の堅固な要塞の趣を示している▼その一角に司直の手が伸びた。逮捕された北海道局長は、石狩川開発建設部長だった05年、河川工事で談合を主導した疑いが持たれている。逮捕に伴い2号館13階の局長室が家宅捜索された▼北海道局は、01年の中央省庁再編で旧北海道開発庁を改組して発足した。局長はそのトップである。約6000億円の開発予算や開発計画を決める組織のトップの逮捕は、今後の開発行政の在り方にも波紋を広げる▼北海道局は、公共事業実施官庁の開発局とともに不要論がたびたび浮上していた。政府の経済財政諮問会議や行革推進会議でもやり玉にあがった。今回の談合摘発で縮小・廃止論が政治家からも公然と湧き上がっている▼北海道開発を巡る談合疑惑は6年前、東京地裁で行われた鈴木宗男衆院議員の裁判でも明らかになった。当時の北海道局長は事実を認め、談合一掃を誓った。だが、体質は変わっていなかった▼なぜ、談合が続いたか。開発OBが建設会社に天下り、癒着の構造が断ち切れなかったことが理由のひとつであることは間違いない。談合は税金の無駄遣いにつながる犯罪だ。トップの逮捕は約5700人の職員に重くのしかかっている。(S)


6月16日(月)

●向田邦子さんの随筆には、「ご不浄」の言葉がよく登場する。若い世代は、ご不浄と聞いてもピンとこないかもしれない。年配の方でもこの言い方を使うのはまれだろう▼いまは、トイレというのが普通だ。ちょっと上品にお手洗いということはあるだろうが、便所も耳にすることが少なくなった。厠(かわや)もご不浄と同様、話すときに使うことはまずない▼ところが函館市内の和食の店で「厠所」の表示を見つけた。いまどき珍しいな、と思って入ったが、中はもちろん水洗だ。昔ながらの汲み取り式なんて都市部でお目にかかることはもはやない▼宇宙空間で生理的欲求を満たすには、どうするのか、かねがね不思議に思っていた。無重力状態では、排せつ物だって、うまく処理しないと空間を漂うことになりかねない。ちっぽけな疑問だが、知りたい欲求が募っていた▼それが、最近になって氷解した。きっかけは、国際宇宙ステーション(ISS)のトイレ故障だ。ロシア製の小用便器が5月下旬から使用不能になり、ISS滞在中の宇宙飛行士が不便をしのんでいた▼星出彰彦さんが乗り込んだ「ディスカバリー」の任務のひとつは、トイレの部品を運ぶことだった。米航空宇宙局(NASA)の記者会見で質問が集中して宇宙のトイレ事情が身近になった。宇宙のご不浄は吸引式だそうだ。向田さんがご存命なら使ってみたいとおっしゃったかな。(S)


6月15日(日)

●知り合いの機長は、国立大を出て国内大手の航空会社に入った。そこで小型機から始めて数年がかりでジャンボ機の操縦資格を取得した。かかった費用は会社持ち。いわゆる自社養成パイロットである▼民間航空機のパイロットになるには、試験に通って航空会社の自社養成に進むほか、宮崎に本校がある航空大学校で学ぶコースがある。自衛隊のパイロットから民間に転じるケースも知られている▼「星の王子さま」の作者サン・テグジュペリのように大空への憧れは男女問わず多くの人々が抱いている。その憧れを職業に結び付けたパイロットが、世界的に不足している。アジアの新興国が路線拡張を進めていることが背景にある▼日本も例外ではない。団塊世代の大量退職や、お雇い外国人パイロットの引き抜きが激しいからだという。そうしたしわ寄せをもろにかぶり、安売りで知られる新規航空会社「スカイマーク」が大幅運休を発表した▼スカイマークは2年前の羽田・新千歳に続き、4月には羽田・旭川路線を開設した。その道内発着2路線が6、7月の2カ月間に計132便運休する。パイロットがいなくて飛ばせないというのだから、事態は深刻だ▼旭川空港を管理する同市に問い合わせると、毎日3往復のうち1往復が2日から運休している。夏の繁忙期にかけ多くの観光客を呼び込みたいのに、と不安が隠せない。電話の声が困惑気味だった。(S)


6月14日(土)

●黒人と白人の両親を持ち人種の壁にも翻ろうされながら、米大統領選の民主党候補指名が確定したバクラ・オバマ議員は「声の出し方、立ち居振る舞いなど何もかも父親そっくり」(ケニアの義理の祖母)という。親にとって子どもはいくつになっても子ども▼「息子が重大な事件を起こし、亡くなられた方、けがをした方、本当に申し訳ありませんでした。息子が(取り調べに)正直に述べてくれればと思います」。東京・秋葉原で17人を殺傷した加藤智大容疑者の父親は頭を下げて謝罪。25歳にもなって究極の親不孝者だ▼15日は「父の日」。南北戦争から復員の軍曹が妻を亡くした後、独身で働き続け、6人の子どもを育てた。その苦労に末娘が「父の日もつくって下さい」と牧師協会に嘆願したのが始まりとか。「父親を尊敬し、称え祝う日」となって、世界に広まった▼釣りを楽しんでいるお父さん、びしっとネクタイのお父さん、バンザイをしているお父さん、子どもを肩車しているお父さん、聴診器をつけているお父さん、ビールを飲んでいるお父さん…。本紙が募集した微笑ましい「お父さんの似顔絵」▼理想の父親像のトップは「家族から尊敬される父」だが、心が荒廃した現在は「何でも相談してもらえる存在」が大事だ。ネクタイやワインを贈って感謝するのもいいけど、親子で大切な時を共有すれば『誰でもよかった』と暴走することもなかった。(M)


6月13日(金)

●伝家の宝刀と力んでみても、おずおずと遅れて出せば刃こぼれしたなまくら刀と変わりはない。返す刀も何やら投げやりで、迫力に乏しい。問責決議と信任決議の交刃は、下手な殺陣を見せられたようで白けた気分が残る▼抜くぞ、抜くぞと刀の柄に手をかけていた民主党が、国会会期末近くになって参院に福田首相の問責決議を出したのは、締めくくりのセレモニーの色合いが濃い。可決しても法的拘束力がないのだから効果は知れている▼まあ、戦後初めて問責決議を受けた首相との汚名を着せることは出来ただろう。だが最大の狙いの衆院解散・総選挙には追い込めそうもないのだから、戦術としては拙いとのそしりを免れない▼切りつけられたからには応戦を、と衆院で信任決議を可決した与党にも切迫感は薄い。形骸化した宝刀は、解散を引き出す力を備えていないのが見え見えだからだ。かくして終盤国会は空転状態のまま会期末を迎える▼後期高齢者医療制度や消えた年金、原油高がもたらす物価高騰など課題は山積しているのに国会ではまともな論戦が途絶える。早い夏休み入りだな、と皮肉の一つも投げかけたくなる▼さて、次は秋の臨時国会だ。福田さんは洞爺湖サミットで支持率浮揚のきっかけをつかみ、年金、医療などの懸案処理を終わらせたいのだろう。刃を交えた後は、ぜひ内容の濃い論戦を。そして民意を早めに問うこともお忘れなく。(S)


6月12日(木)

●解禁になったばかりのマイカの刺身をなじみの居酒屋で食べた。薄いあめ色に輝く身をしょうがじょう油にちょっと付けて口に放り込む。イカの身から出る甘みが口中いっぱいに広がり、函館に住む幸せを感じる至福の時だ▼居酒屋のおやじは、例年のいま時期よりも身が小さい、と両手の人差し指でサイズを示す。小ぶりなだけに身は軟らかい。器に盛り付けられた2ハイ分がたちまち胃袋に収まり、うまいなぁ、と満足感に包まれる▼その函館の味に今年はピンチが訪れそうな気配だ。イカ釣り漁船が18、19の両日、一斉休漁するというのだ。漁模様が思わしくないからではない。燃料費が高騰して、出漁しても損になるからという▼函館市漁協に尋ねると、漁船に使う燃料の重油が昨年のg「69円から今年は102円にはね上がった。「一回出漁すると燃料費は8万から10万もかかる。漁は、まあまあだがイカが小さめで値が安い」と佐藤博光専務理事は嘆く▼休漁は、燃料高騰で困っている実情を訴えたいと全国一斉に行われる。原油は天井知らずの暴騰を続ける。指標のニューヨーク市場では今年初めに1バレル100j超えが驚きだったのに現在は140j台をうかがう▼休漁の2日間は夜の海に浮かぶいさり火も消え、函館・道南の初夏の彩りが漆黒の闇に閉ざされる。口福と眼福の両方が味わえないなんて、と原油高をつい恨みたくなる。(S)


6月11日(水)

●穀物の高騰に歯止めがかからない。諸説あるが、この1年間でトウモロコシや小麦は1・5―2倍以上に跳ね上がった。日本でもパンや乳製品、肉、カップめん、しょうゆに至るまで一斉値上げとなり、ガソリンや石油の高騰もあり、市民生活は非常に苦しい。世界では暴動や飢餓が広がっている▼振興国での肉需要増加のほか、為替や株式などへ流れていた投機マネーがエネルギーや食糧を買い占めていることが要因にある。加えて、トウモロコシなどから作るバイオ燃料も価格をつり上げている▼バイオ燃料生産国のアメリカやブラジルは「食糧上昇分の2―3%分の影響しかない」と主張し、さらに増産する構え。ローマでのサミットでも、食糧危機の克服に向けては、「国際的な対話を促進する」という表現にとどめられた▼科学技術の進歩は人間生活に利便性や快適性を与え、一方で、環境破壊など負の遺産も生んだ。そこでバイオ燃料は、環境に優しいことがPR材料となっている。しかし、エコが食糧難の引き金になるなんて、どこか歪んでいると思わざるをえない。生命や生活にかかわる物資が、投機の対象となることにも複雑な思いがする▼大型サイクロンの直撃で甚大な被害を出したミャンマーでは、コメの生産が激減する危機にあるという。ひとりアジアの農業国の危機ではない。世界はどこか、恐ろしい道に進んでいるような気がする。(P)


6月10日(火)

●アキハバラは、外国人にもよく知られた地名だ。駅を出ると買い物目当ての多くの外国人に出会う。だからだろう、日曜日の歩行者天国を地獄に突き落とした殺傷事件は、海外のテレビや新聞でも速報で伝えられた▼理不尽な悪意に襲われて7人が亡くなり、10人が負傷した。就職が内定したばかりの大学生、友人同士で買い物に来ていた若者、孫もいたであろう高齢者。狂気は見境なく降り注いだ▼逮捕された男は「人を殺すために秋葉原に来た」と供述したという。ネットの掲示板に犯行予告を書き込み、さながら実況中継をしながら犯行現場に向かったことも分かった。悪魔に魅入られての犯行だとしても結果はあまりに重大だ▼この日は、大阪教育大学付属池田小学校に男が押し入り、児童と教師を殺傷した事件から7年目だ。同小では命の尊さを訴える追悼式典が開かれていた。そのさなかに都内屈指の賑わいを見せる秋葉原で惨劇が起きた▼「誰でもいいから殺したい」。いわれなき殺人事件は3月に茨城県土浦市の荒川沖駅でも起きている。安全とされてきた日本の社会に恐怖の深淵がぽっかりと口を開け、不安が募る。悪意がいつ、どこで襲ってくるか警戒しなければならなくなった▼夜中でも安心して歩ける。そんな日本の安全神話はどこに行ったのだろう。格差が広がり、ぎすぎすした社会が安心を脅かす。狂気の背後に何があるのか、心がうすら寒くなる。(S)


6月8日(日)

●アメリカ映画では、後部座席にバーを備えた豪華なリムジンが登場する。グラスを手にふんぞり返っているのは、マフィアの親分が最もお似合いだろう。役人にはイメージしがたい姿だ▼だが、霞が関の中央省庁では、似つかわしくない光景が連夜繰り広げられていた。舞台がリムジンの中ではなく、狭いクシーの車内というのが役人らしいと言えばいいか▼居酒屋タクシーなんてだれが考案したのか。乗れば冷えたビールとつまみが出される。現金や金券を供与されたケースもあるというのだから立派な供応だ。しかも範囲は財務省だけでなくほとんどの省庁に及んでいる▼霞が関では深夜、最終電車の時間近くになると多数のタクシーが省庁の建物を取り囲む。残業を終えた役人を自宅まで送るタクシーだ。役人はもちろん自腹を切ってタクシー料金を払うわけではない▼役所から支給されるタクシー券を使って帰る。タクシー側も気を使って「お役目ご苦労さまです。まあ、骨休めの乾杯」とサービス提供におよんだのだろう。もちろん、次回も私を使ってくださいとの魂胆もあるに違いない▼規制緩和の行き過ぎでタクシー業界は過当競争の苦境にあえいでいる。居酒屋タクシーや現金、金券供与も顧客を確保したいと踏み切った出血サービスだろう。それを知ってタダ酒を飲み、金品を受け取っていた役人の倫理感の欠如は世も末の嘆かわしさだ。(S)


6月7日(土)

●蟹を網からむしり取る…我慢しようぜ カムチャッカ月夜〜 漁師の息子の知人は「蟹工船を涙して歌えるようにならないと一人前の北の漁師じゃない」とカラオケを熱唱。突然のブームといわれる小林多喜二の「蟹工船」を読み返してみた▼戦前の蟹工船は地獄船ともいわれ、鉱山などが“陸のタコ部屋”に対して“海のタコ部屋”と呼ばれていた。極度な労働環境、消耗品扱いで非人道的な労働、不法と暴力と脅しに耐え忍ぶタコ部屋。小説は「おい、地獄さ行(え)ぐんで」から始まる▼蟹工船(カニ缶工場)は北洋サケマス母船のようにカニ漁の母船だった。大半は出稼ぎ労働者。人間的な待遇を求めてストライキに踏み切るが、頼りにしていた国の弾圧を受けて…。突然の蟹工船ブームは、その内容が平成不況の中で社会に出た世代に受けたようだ▼周囲のブラシで動かされる「カーリング型」の今年の新入社員は五月病を克服したが、80年前の蟹工船の過酷な労働状況は現在のワーキングプアやフリーター労働と重複しているという。“タコ部屋”に押し込んで賃金を搾り取る悪質な業者も酷似している▼小林多喜二は蟹工船の発表4年後に警察の拷問で絶命。読まれる昭和初期のプロレタリア文学。大学生などをターゲットにした「マンガ蟹工船」も出た。過酷な労働を痛感し「胸にしぶきのXナが立つ〜」の心で時代を超えた連帯を実感しているのでは。(M)


6月6日(金)

●米百俵の故事は、よく知られているように教育の大切さを説く。窮乏した長岡藩に贈られた米を藩士に分け与えず、子弟の教育のために学校設立の費用に充てた小林虎三郎の英断を讃えている▼米は食えばなくなる。だが、教育に充てれば「あすの1万、百万俵となる」と虎三郎は、藩士を説得したとされる。小泉純一郎元首相が所信表明演説で引用したことから2001年の流行語にもなった▼虎三郎が生きていたら首をかしげる事態が道内の小中学校で起きている。何と自治体に配分される図書購入費を他の事業に流用しているというのだ。その結果、図書整備の基準達成率が全国一低い▼公立小中学校は、学級数から算出する標準冊数をそろえることを基本としている。ところが冊数を満たしている学校の割合は、文部科学省のまとめで小学校17・3%、中学校12・4%で、ともに全国最低だった▼国は公立学校の図書整備費を市町村に地方交付税で措置している。この交付税の使途は市町村の裁量にゆだねられる。そこで財政難の市町村は、図書購入費を削り、他の事業に振り向ける構図が出来上がっているのだ▼いじましいなあ、と批判するのはたやすいが、交付税を年々カットされている市町村にとっては、背に腹はかえられないのが実情だろう。それにしても図書整備は、そんなに軽く扱っていいのだろうかと疑問がわく。虎三郎に尋ねてみたい。(S)


6月5日(木)

●「胸いっぱいに風を吸い込み 市電に揺られて訪れるのは 藤が見ごろの五稜郭〜」 スズランやライラックに続いてフジの花。五稜郭公園の二の橋を渡るとフジ棚が今年も満開。観光客らを「恋に酔う」「至福の時」など花言葉の香りで包む▼「藤波の花は盛りになりにけり なら(平城)のみやこ(京)を思ほすや君」(大伴四綱) 万葉集ではフジの花が風に揺れる様子を藤波と詠み、「藤娘」は藤の小枝を肩に黒塗りの笠をかぶって踊る藤の妖精。ほのかな香に惹かれて、乙女の切ない胸の内を舞う▼フジのツルは長い年月をかけて成長することから、延命・商売繁盛などをもたらし、「藤」は不二や無事にも通じ、災厄を防ぐとして崇(あが)められる。「甘く流れて身を包む」その香りは、ピュアでみずみずしい「癒やしの香水」▼五稜郭公園、函館公園のフジは都市公園に指定された52年前、公園で食堂を開いていた経営者が2本植えたのが始まり。2本が11本になり、10メートル以上の幹、30メートル以上のフジ棚に成長。このフジ棚の周辺に復元中の箱館奉行所の表門があったと推測されている▼榎本武揚や土方歳三らは、表門の跡地に「見事なフジ棚」が咲き競うなんて、夢にも思わなかっただろう。復元に伴い移設が検討されているが、フジ棚と共存するような表門復元も不可能ではない。8日に「五稜郭の藤の花」を歌って「命を刻む花」を見守りたい。(M)


6月4日(水)

●知内出身の歌手北島三郎さんが朝日新聞にコメントしている。「39年間お世話になり、一言では言い尽くせない思い出があります」。新宿コマ劇場の年内閉鎖を知らされての感慨である▼コマ劇場は「演歌の殿堂」と呼ばれてきた。ここで座長公演を張るのは、演歌歌手にとっての勲章である。北島さんをはじめ、五木ひろしさん、小林幸子さん、松平健さんなどそうそうたるスターが舞台に立ってきた▼昭和を代表する歌手美空ひばりさんが、初の座長公演をしたのもコマ劇場である。開館から8年目、1964年のことだった。それ以後、ひばりさんのコマ公演は名古屋御園座、大阪梅田コマ劇場とともに恒例となっていく▼新宿コマは、歌舞伎町にある。飲食店や風俗店、ゲームセンターなどが集中する日本一の歓楽街だ。コマの周辺もラフな服装の若い男の子や女の子が昼夜を問わずたむろしている▼スーツ姿のサラリーマンや主婦なら、身構える一角だ。それでもサブちゃんやマツケンなどスターの公演時は、若者よりも中年過ぎのファンが劇場を取り囲む。そんな歴史が半世紀余を刻んで幕を引かれる▼サブちゃんは9月にコマでファイナル公演を行う。「一生懸命務めさせてもらいます」というコメントが、寂しさを押し殺しているように響く。閉鎖後は取り壊され、再開発されるというが、新施設に劇場が出来るかどうかは未定だそうだ。(S)


6月3日(火)

●地雷、劣化ウラン弾、クラスター弾…現在、世界各地の戦争で多く使われている恐ろしい兵器。不発の地雷やクラスター弾を拾った子どもたちが死亡し、劣化ウランの化学毒性を吸い込んでがんなどの健康障害を起こし、奇形児の出生にもつながる▼特にクラスター弾は非人道的で最も許されない兵器。投下すると親爆弾の中に詰まった数百個の子爆弾が地上近くで爆発、一部は不発弾として残り子どもなど民間人を殺傷する。保有国は74カ国。使った国は14カ国。被害はアフガン、イラクなど29カ国・地域▼日本でも生産されており、防衛省は数千発を保有しているといわれる。そのクラスター弾の禁止条約案が100カ国以上が参加したダブリン国際会議で採択された。子爆弾の数が10個未満で電子的な自己破壊機能を持つ新型の弾は禁止の対象から外された▼こんな重要な国際会議に米国、中国、ロシア、韓国、北朝鮮などが参加していない。米国では「兵器は戦場に送り出す息子、娘たちを守る道具」というが、他国の罪のない子どもたちを殺傷し、親たちを悲しませる行為とは矛盾しないか▼イラク戦争の際、人質になっても「劣化ウラン弾の怖さと戦争の悲惨さをイラク市民に伝えたい」と言い切った今井紀明さんの一言がよぎる。条約は半年後に発効する。カンボジアなどで地雷除去に取り組んできた日本が条約に背を向けている保有国を説得しなければ。(M)


6月2日(月)

●メタボ体型の引き締めに役立つかな、いやきつ過ぎて着けていられないかな。そんな想像を起こさせる。国内メーカー3社が発表した北京五輪の競泳用水着のことだ▼3社が、おおわらわで水着を改良したのは、英スピード社製のレーザー・レーサー(LR)を着用した選手が、好記録を連発したからだ。日本の選手は契約の関係で原則として国内メーカーの水着しか使えない▼このままでは、外国選手に遅れをとると日本水泳連盟が3社に水着の改良を求めた。出来上がった水着は、いずれも体の締め付けが特徴だ。水の抵抗を小さくするには、素材とともに強く締め付ける水着が不可欠らしい▼従来の水着に比べると2倍から4倍程度も締め付け力が強いとメーカー側は説明する。そんなに強く締め付けたら血液の巡りに影響しないだろうか、と考えるのは素人の取り越し苦労のたぐいだろう▼代表選手たちは、3社の改良水着とLRの優劣を試すそうだ。五輪本番でどの水着にするかは、選手それぞれが10日までに結論を出す。日本水連は、選手がLRを選んでも容認する方針らしい▼だが、3社にとっては五輪の晴れ舞台で自社の水着が使われないのは屈辱だろう。技術開発でスピード社に及ばなかったことをさらすようなものだからだ。まあ敗れても締め付けの技術は、メタボやふっくら体型の補正下着には応用できそうだ。ただし、締め付けは緩めてね。(S)


6月1日(日)

●明治の文豪、徳富蘆花の言葉に「子を知ること親にしかず、子を知らざることもまた、親にしかず」とある。わが子のことは知っているつもりでも、意外と知らないことが多いということだろう▼函館市内をはじめ道南各地で小学校の運動会が開かれている。元気に走り回るわが子の姿を見て、親は感慨に浸る。少し前までは親にまとわりつき、親がいなければ何もできなかった子が、集団生活の中に溶け込み、たくましく成長しているのだから、うれしいに決まっている▼ただ、校舎やグラウンド周辺に自家用車がずらりと並ぶ様子には違和感がわく。足が不自由だとか、老いた祖父母が一緒だとか、各家庭にはいろいろ事情もあるだろうが、豪華な昼食や飲み物で荷物が重いからと車で来る親も少なくないようだ▼自宅から小学校まで、ほとんどの児童は歩いて通っている。雨の日もあれば、吹雪の日もある。子どもが毎日歩いている程度の距離、多少荷物が重くても同じように歩いてみてはどうだろう▼ここを横断するのは危険だな、この曲がり角は注意して欲しいな…。こういう景色を見ているのか、けっこう遠くて疲れるなぁ。歩いてみて気づくことは多い。そして感じたことを率直に子どもに話してみればいい▼運動会が終わったら、一緒に歩いて帰宅する。いつもはどこを歩いて帰るの? 子どもは生き生きと自分の“道”を説明するはずだ。(H)


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