2007年9月12日(水)掲載

◎七飯の強盗/銃撃戦 容疑の組員死亡
 【七飯、函館】七飯町西大沼のリゾートホテル前で10日夜、拳銃を持った男が出入り業者の女性の車を奪って逃走した強盗事件は、警戒中の警察官が11日午前零時35分ごろ、函館市昭和町60の川沿いで、男の乗った逃走車両を発見。男が突然、車外に出て拳銃を発砲したことから銃撃戦となり、男性巡査部長が応射した1発が男の胸から背中を貫通した。函館中央署などは男を殺人未遂の現行犯で逮捕したが、近くの病院で間もなく死亡。パトカーの運転席に乗っていた男性警部補が右腕に被弾して重傷を負った。

 男は長野県佐久市、職業不詳、住吉会系暴力団員高成仁(コウ・セイジン)容疑者(52)=韓国籍=。高容疑者を発見した警察官は、いずれも道警函館方面本部地域課自動車警ら隊の村井光祥警部補(55)と野島茂美巡査部長(53)。応射した野島巡査部長にけがはなかった。

 同署などによると、高容疑者は10日午前9時15分ごろ、七飯町西大沼148の函館大沼プリンスホテルに1泊の予定でチェックイン。同日午後10時ごろ、同ホテル玄関前の路上で出入り業者の女性に「函館まで遠いの」「車借りるぞ」と拳銃を突き付け、車を奪って函館方面に逃げた。車内には売上金など現金約10万円が入っていた。

 警戒中の同本部交通課交通機動隊の警察官が11日午前零時ごろ、同市西桔梗町の農道で、高容疑者の車が猛スピードで走るのを見つけ、追跡したが途中で見失った。その約30分後、ホテルから約20キロ離れた同市昭和町の川沿いの路上で、ライトを付けた不審車両を再び発見。現場は行き止まりになっていて、Uターンしてきた高容疑者の車と警察官の車が正面から向き合い、銃撃戦に発展した。

 高容疑者は降車後、いきなりパトカーの警官に向けて2、3発を発砲。運転席に乗っていた村井警部補の右ひじ付近に1発が貫通した。助手席にいた野島巡査部長が直後に車外に出て自動式拳銃3発を撃って応戦したが、高容疑者が約2メートルの至近距離で銃口を向けてきたため、再び2発を応射。このうち1発が高容疑者の胸に命中した。

 同本部の高木彰総括参事官は「現時点において警察官の拳銃の使用は適正であると判断している。被疑者が死亡したことについては残念である」とコメントした。


◎市内で銃撃戦/組員から覚せい剤反応
 函館市昭和町で11日未明、暴力団員が死亡、警察官1人が重傷を負った発砲事件。高成仁容疑者(52)は拳銃を懐に携え、強奪した車で約2時間にわたり猛スピードで逃走を続け、揚げ句に閑静な郊外の河川敷で引き金を引いた―。函館中央署のその後の調べで、同容疑者の尿から覚せい剤反応が出ている。事件前日の10日午前8時20分ごろには、JR函館駅のホームで、高容疑者に人相が似た男が複数の男性に拳銃をちらつかせたり、突き付けたりと、異常行動を取る姿が目撃されていて、同署で関連を調べている。

 治安が揺らぐ函館で、新たに起きた凶悪事件に、捜査幹部の一人は「拳銃はただ下げる時代から、使用する時代に変わった」と唇をかみ締める。

 現場から南へ約500メートルの昭和公園では8月26日夜、高校生が集団暴行されて死亡する事件があったばかりだ。

 道警函館方面本部は10日夜、七飯町のリゾートホテル前での強盗事件の発生を受け、管内に緊急配備を敷いた。同本部や管内9署から捜査員200人以上が防弾チョッキに身を包み、警戒に当たった。赤色灯を回したパトカーなど車両計60台も出動した。

 11日午前零時半過ぎ。行き止まりの道を引き返してきた高容疑者と対峙(たいじ)した同本部地域課のパトカー。数メートルの至近距離に近づいた瞬間、高容疑者は車を降り、パトカーのボンネット近くまで駆け寄ってきた。ハンドルを握る警部補はとっさに車をバックさせたが、いきなり運転席に向け拳銃2、3発を発砲。銃弾は同警部補の右腕を撃ち抜いた。

 助手席に乗っていた巡査部長は直ちに車外に出て3発の応射。現場は真っ暗闇で、同巡査部長は高容疑者を一瞬見失った。気付いたときには自分の目の前で銃口を向ける高容疑者。即座に2発を発砲した。この間、わずか1分ほど。続々と駆け付ける捜査車両や救急車。普段は人けの少ない現場が、一時騒然となった。発砲から約2時間後、被弾したパトカーと高容疑者に強奪されたワゴン車が、それぞれブルーシートに覆われて運ばれた。

 10日朝のJR函館駅での異常行動後、高容疑者は同駅前でタクシーに乗り込み、「(函館)大沼プリンスホテルに行ってくれ」と女性運転手に指示。「高速(函館新道)で走ってくれ」と頼んだという。女性運転手は「観光ですか」と問いかけたが、返事はなかった。同9時15分ごろ、ホテルに到着し、運賃8590円を1万札で支払い、無言でタクシーを後にした。

 強盗の現場となったホテルでは「警察官一人が撃たれたことに驚いているが、ただ宿泊客にけが人が出なかったのが不幸中の幸いだった。こんな悲しい事件は二度と起きてほしくない」と話した。


◎北海道コンシェルジュ/「移住ビジネス研」発足へ
 北海道への移住を総合的にサポートする北海道コンシェルジュ(函館市、寺西隆経社長)は13日、移住ビジネス研究会を発足させる。さまざまな業種で移住のビジネス化を検討していく組織で、不動産や医療、観光、運輸、飲食などの事業者で構成する。同日午後1時半から渡島支庁401会議室で初会合を開催。同社は「20社程度での発足を目指している。移住ビジネスへの事業展開を考えている企業や事業者にぜひ参加してもらいたい」と呼び掛けている。

 同社は函館市の定住・移住促進事業を委託されている企業。移住希望者を対象にした1週間から月単位の「ちょっと暮らし」を仲介しているほか、本年度は体験プログラムとして移住希望者の細かな相談に応じるアドバイザー制度や不動産巡りツアー、格安なタクシー利用プランなどを新たに創設、提供している。

 コンシェルジュとは「総合案内人」の意味で、同社は文字通り、移住の総合案内役を務めている。移住者や希望者を対象にした受け入れや医療、レジャー、飲食などで事業化ができるかを探る母体で、さまざまな業界での移住ビジネス誕生を後押しする。

 道が本年度、総務省の移住モニターツアーの実証実験地に選ばれたことから、同社と官民連携組織「住んでみたい北海道推進会議」(井上久志会長)が合同で同研究会を立ち上げる。実証実験では本年度、函館に最低でも40組、目標100組に移住体験をしてもらい、体験期間のサービス提供や生活の満足度などを調査し、移住ビジネス構築の可能性を探る。

 初会合では総務省の実証実験や北海道コンシェルジュの取り組み、道と函館市の移住パートナーエリア(連携地域)指定などについて担当者が説明し、参加企業の連携・連帯を強める。

 同社は「移住ビジネスの創出はさまざまな企業の賛同、協力を受けているが、まだ試行錯誤の状態。ただ、大きなビジネスチャンスであることは間違いなく、取り組みの多層化や移住者を受け入れる住民のもてなしなども重要になってくる」と話している。

 同研究会についての問い合わせは同社TEL0138・23・0001。(高柳 謙)


◎ニチロ100周年記念展開幕
 ニチロ(田中龍彦社長、東京)の創業100周年を迎えた記念企画展「街と歩んだ北洋漁業〜ニチロ創業100年〜」(函館市立博物館主催)が11日、市北洋資料館(五稜郭町37)で始まった。同博物館所蔵資料や、函館ニチロ会(加藤清郎会長)が出品協力した年表や写真で、同社と函館の歴史を振り返ることができる。24日まで。

 ニチロは1907年、函館出身の平塚常次郎と新潟県三条市出身の堤清六の2人が「宝寿丸」(163トン)で新潟を出港した年を創業年とし、ことしで100年になる。

 会場には同社の沿革史、函館との関わりを紹介する年表、出港風景の写真、半纏(はんてん)などの作業服、缶詰のラベルなど、深く見入ってしまうものや見て楽しめる資料が多数並ぶ。同博物館の佐藤智雄さん(48)は「ニチロは函館を拠点に新しいことを手掛けた。函館発、日本初を感じて函館の風土を見直す機会になる内容」と紹介する。

 初日は田中社長(66)のほか、函館在往で平塚常次郎の長女千鶴子さん(93)らが訪れた。田中社長は「私が知らない資料もたくさんあり驚いた。創業者の功績から、若い人は情熱と夢を持って前に進めば、色んなことができることを感じてもらえれば」と来場を呼びかけていた。(山崎純一)


◎ホテルひろめ荘支配人逮捕/道南温泉社長ら市に謝罪
 函館市所管の温泉宿泊施設「ホテルひろめ荘」(同市大船町)支配人の坂井清志容疑者(41)が脅迫容疑で逮捕された事件を受け、同ホテルの指定管理者「道南温泉」(同市大町)の遠藤浩司社長ら3人が11日、市役所を訪れ、工藤寿樹副市長に謝罪した。同社は8月に指定管理者となり、ホテルも営業を開始したばかり。再スタートを切った矢先の出来事に、関係者らは困惑気味だ。

 謝罪に訪れたのは、遠藤社長と斉藤敬一代表取締役、西村晴美総支配人の3人。工藤副市長、小柏忠久総務部長らと面会し謝罪、経過を説明した。

 同社は3月末で解散した市の第三セクター「南かやべ健康村」に代わり、同ホテルと隣接する温泉施設「南かやべ保養センター」の指定管理者となった。ホテルは4月から4カ月間休業し、8月3日に営業を再開したばかりだった。

 同容疑者は三セク時代に10年以上、同ホテルで勤務した経験があり、支配人として同社に就職。西村総支配人は「地元の人望もあり、彼がいなければ(ホテルの再開)はできなかった。残念の一言」と困惑の表情を浮かべた。また、「運営上で迷惑はかけられない。(指定期間満了の2012年3月末まで)全うさせてもらえるのであれば、責任を持ってやらせていただきたい」と話していた。

 指定管理者の継続について市は、同社に経過報告を求めるとともに「会社としての責任や、法的な部分など整理した上で対応を決める」としている。(今井正一)


◎厚沢部小児童がアユの生態学ぶ
 【厚沢部】町内特産のアユの生態を学ぼうと、厚沢部小学校(澤田卓校長)で11日、4年生23人が稚魚の放流に向けた人工授精を体験した。

 同小では総合学習の一環として、道南有数の清流・厚沢部川に住むアユの生態を学んでいる。同日は町内でアユの増殖に取り組む「厚沢部町河川資源保護振興会」(高橋満繁会長)のメンバー6人を講師に招いて、初めての人工授精に挑戦した。

 児童はアユの腹から、恐る恐る卵と精子を絞り出し、授精させた。授精後の卵は鳥の羽根を使い、静かに水槽の中に放して、底に沈めた小石の表面に付着させた。

 高橋会長は「卵の表面にある粘着膜で石の表面にしっかり付着します。20度の水温なら10日ほどでふ化します」と説明。子供たちは石に付着した卵を興味深そうに見入っていた。

 同小はふ化した稚魚を川に放流する予定。日本海で成長したアユは、来年夏ごろには川をさかのぼり、産卵期を迎えるという。(松浦 純)