2009年4月15日 (水) 掲載

◎高度な腹腔鏡手術可能…市立函館病院・婦人科医2人着任

 市立函館病院(函館市港町1)の産婦人科に4月、高度な腹腔(ふくくう)鏡下手術の技術を持つ医師が着任した。これまでよりも高度で先進的な婦人科医療の提供が可能になる。吉川修身院長は「札幌などに行かざるを得なかった患者さんにとっては、函館で質の高い手術を受けることが可能になる」と話し、産科再開に向け光が見えてきたことを喜んでいる。

 今回着任したのは、産婦人科科長の山下剛医師(47)と同科医長の西岡嘉宏医師(37)。3月末に常勤の医師1人が退職し、この2人が常勤医となった。

 腹腔鏡下の婦人科手術は、開腹術の切開が10—15センチにもなるのに対し、鏡下手術は1センチ程度の切開を3—5カ所に行うだけのため傷が小さい利点がある。出血や術後の痛みも少なく、入院期間は開腹術が10日から2週間程度かかるのに対し、4日から1週間程度で済む。半面、手術時間が長くなったり、器具が使い捨てのため病院にとってコスト高となる欠点もあり、医師にも高い技術が要求される。

 山下医師は、日本産婦人科学会の専門医で、日本婦人科腫瘍学会の腫瘍専門医。道内の腫瘍専門医は札幌と旭川にほぼ集中しており、道南では山下医師のみ。道内に十数名しかいない婦人科内視鏡技術認定医でもある。3月まで旭川医大の産婦人科准教授として指導医を務め、腹腔鏡下での婦人科手術経験は500例を超えるという。吉川院長の強い働きかけで来函を決意した。

 同院婦人科ではこれまでも、一般的な感染症や痛み、腫瘍、更年期症状、不妊診療、セカンドオピニオン(主治医以外の医師の意見)などに対応してきた。しかし山下医師により、子宮筋腫や子宮内膜症などの腹腔鏡下手術、患者にとっては治療方法の選択肢に厚みが増すことになる。

 山下医師は「すべての事例に対して腹腔鏡下でできるわけではないが、標準的治療と先進的医療の両方を患者さんに示し、納得したうえで治療したい」と、患者の気持ちに寄り添った医療提供を目指す。さらに「関東や関西の大病院に劣らないレベルの治療ができるし、若い医師の教育にも力を入れたい」と意気込む。(小泉まや)



◎父の足跡 心に刻み…作家・故木下順一さんの娘がHP開設、更新中

 函館で43年間タウン誌「街」を発行し、多くの小説や随筆を発表した作家、故木下順一さん(1929—2005年)の足跡を知ってもらおうと、一人娘の渡辺絵里子さん(50)=札幌在住=がホームページ(HP)を立ち上げ、定期的に更新を続けている。掲載内容は少しずつ増え、現在は亡き妻への思いをつづった「天使の微笑み」(河出書房新社)など随筆や評論のほか、パステル画や家族写真も公開。「文の奥深さ、読書量の多さに感心する」。作品に触れることで、渡辺さんは作家としての父とあらためて向き合い、愛惜の念を募らせている。

 渡辺さんがHPを開設したのは、父の3回忌を迎えた2007年10月。元来読書が苦手で父の文章を熱心に読むことはあまりなかったが、父の死後、高校や大学入試の過去問集に作品掲載が相次ぎ、作家としての業績を実感。夫雅司さん(54)の勧めもあり、供養も兼ねて取り組んだ。

 掲載する文章は、渡辺さんが自宅に保管している新聞記事の切り抜きや雑誌など両親の遺品の中から選び、パソコンで打ち込んでいる。「初めて読んだ時、母への愛情の深さを感じて胸が一杯になった」という「天使の微笑み」や「北方文芸」に掲載された社会時評「四千字の世界」、函館山、朝市に関する随筆などがあり、木下さんの精力的な活動ぶりがうかがえる。

 木下さんが愛した風景や家族を優しい色合いで描いたパステル画18点も紹介。幼児期から晩年までの家族写真なども見ることができる。

 渡辺さんは18歳で親元を離れ、札幌で就職、結婚した。大学生時代から毎月、函館の父から手紙と「街」が送られていたが、忙しさに追われてしっかり読もうとはしなかったという。更新作業の中で父の作品に目を通し、「父が苦労して『街』を発行し続けた痛みが当時は分からなかった」と振り返る。パステル画をじっくり眺めるうちに「晩年の父は充実していた」とも感じるという。

 HPには両親について渡辺さんが回顧したコラム「娘のつぶやき」も掲載。「娘の私しか知らない父の姿を書き残したい」と話している。「天使の微笑み」など木下さんの各著作本も販売中。HPのアドレスはhttp://hohoemi.yu-yake.com(新目七恵)

 木下順一
 1929(昭和4)年、函館生まれ。52年に国学院大を中退、54年に池田富美子と結婚。62年から月刊タウン誌「函館百点」(その後「月刊はこだて」を経て「街」に改名)の創刊に携わり、「文鳥」(文学界)「湯灌師」(河出書房新社)など作品を次々と発表。函館文学学校講師などを務め、地元の人材育成にも力を注いだ。前立腺がんを患い、2005年10月27日に死去。享年76。同年2月「街」は休刊したが、翌年6月に季刊誌として復刊した。



◎支庁存続運動継続を決定…江差町連絡会議

 【江差】町内27の組織や団体で構成する「桧山支庁存続と権限・機能強化を求める江差町連絡会議」(会長・飯田隆一江差商工会長)の総会が14日、町役場で開かれた。3月31日に現行14支庁を対等とする支庁再編条例改正案が成立したが、桧山振興局(現・桧山支庁)の組織体制や機能といった具体像が不透明な現状から、当面は従来通り活動を継続しながら、道側の出方を見極める方針で一致した。

 道議会では3月31日、道町村会(会長・寺島光一郎乙部町長)など地方4団体の要請を受け入れ、桧山など5支庁を地方自治法上の「支庁出張所」に格下げする支庁再編条例を未施行のまま全面改正。これら5支庁の位置付けを支庁に戻した。だが、道南全体にかかわる広域的な業務については今後、渡島総合振興局(現在の渡島支庁)への集約を進める方針。移行対象となる業務は今後、江差町など関係市町村との協議を通じて合意を得ながら検討する方針だ。

 総会では「条例改正で支庁存続運動は一定の決着がついた」と評価。一方で振興局の具体像をめぐる議論も始まっていない現状から「今後もさまざまな局面で住民運動組織としての役割を果たすことが必要」として活動継続を全会一致で承認。役員も全員留任するほか、町内に設置した看板類もそのまま残すことを決めた。

 総会で飯田会長は「住民組織としても今後の議論を監視していくべき」と強調。濱谷一治町長は「地域振興に必要な体制整備など前向きな議論が必要」とした。参加者からは「道の言うことを簡単に信用してはいけないと感じた」「具体像の提示を待つだけなく、積極的に振興局の機能などを提言すべき」などの発言があった。

 町によると、同じ振興局地域の日高管内浦河町と根室市でも当面、支庁存続運動は現体制のまま継続するという。高橋はるみ知事は、支庁庁制度改革をめぐる混乱を陳謝するため14日に根室市を訪問。18日には留萌市を訪れる予定だが、江差町と日高管内浦河町の訪問日程は決まっていない。(松浦 純)



◎おくりびと18日から再上映…シネマアイリス

 日本映画史上初めて第81回アカデミー賞外国語映画部門を受賞した「おくりびと」(2008年、滝田洋二郎監督)が18日から、函館市本町22の市民映画館「シネマアイリス」で再上映されることが決まった。市民からの問い合わせや要望も多く、同館の菅原和博代表は「ぜひ映画館で作品の良さを堪能(たんのう)して」と話している。

 「おくりびと」は、ふとしたきっかけで納棺師の見習いになった男性がさまざまな死と向き合うストーリー。本木雅弘さんが主演し、国内外で60以上の賞を獲得。興行収入は60億円を突破し、配給会社松竹の歴代記録を塗り替えるほどの大ヒットとなった。

 アイリスでは通算1000本目の作品として昨年12月6日から上映を開始。当初から口コミで観客は増加傾向にあったが、アカデミー賞ノミネートで人気が爆発。配給会社の事情により11週間で上映を打ち切ったものの、アカデミー賞受賞直後は「次はいつ上映するのか」など問い合わせが1日100件も寄せられ、その後も市内外から相次いでいるという。

 菅原さんは「アイリスにとっても記録的な作品になった。やっと上映が再開できてうれしい」と喜ぶ。

 最低3週間は上映する予定。18—24日の上映時間は①午前9時20分②午後2時10分③同6時25分。①のみ1300円、一般当日は1800円。130分。

 問い合わせは同館TEL0138・31・6761。(新目七恵)



◎「函館がごめ連合」発足…アンテナショップ開設へ

 函館市内でガゴメ(トロロコンブの仲間)関連の商品を開発、販売する企業や団体でつくる「函館がごめ連合」が14日、市臨海研究所(大町)で設立総会を開き、発足した。代表に富士海洋土木の須田新輔社長を選任。ガゴメ商品を専門に売るアンテナショップを開設し、ガゴメを函館の地域ブランドとして確立を目指す。

 同連合は、文部科学省の都市エリア産学官連携促進事業に参画し、ガゴメ関連の成果品を開発した企業などでつくる「都市エリア成果品販売促進連合」(須田会長)が前身。同事業が前年度で終了したため組織は解散。参画した約90団体のうち、28団体が組織継続に賛同し、新たにスタートすることとなった。

 総会にはそれぞれの代表ら約20人が出席。役員には須田代表のほか、副代表に梶原昆布店の梶原健司社長とノース技研の布村重樹社長が選ばれた。

 アンテナショップの開設は、雇用創出を狙った国の「ふるさと雇用再生特別交付金事業」の交付金を活用することで市と申し合わせており、認可され次第、店舗の場所や店員の採用などを詰めていく。開店は6月ごろになる見通し。タラコやこんにゃくなどとの加工食品や化粧品などを販売する。

 このほか、ガゴメ料理を味わいながら料理教室や講義などを繰り広げる「函館マリンカフェ」や、ガゴメ関連の商品を販売する「はこだてがごめランド」など旧促進連合で行っていた事業も継続して行う。

 須田代表は「ガゴメのブランド化にはまだまだ発信が必要。ガゴメを函館の名産品にしたい」と意気込みを語った。(鈴木 潤)